この100年でサクラマスの生息環境は激変した
サクラマスの生活史や生態というか性格は何万年と変わっていない。しかしこの100年は人々の関り方が次々といろいろな形で強まりサクラマスとぶつかっている。
海での漁獲の拡大と強化、川での親魚の漁獲と釣獲、河川のダムなどの工作物の建設、河川の汚染と環境改変、人工ふ化放流事業等々。本書ではこれらの項目一つ一つについて深く追求しようとするものではなく、サクラマスにとってそれがどのようなものとして影響しているかを見てみる。
筆者とサクラマスとの関わりは、岩手県安家川の河口のウライ(魚止め)をどうにかできないか、から始まった。そしてそれは桜鱒の棲む川はどうなっているのかを調べる旅となっていった。これまで何のためらいもなく建設されつづけてきたダムを、どうにかならないのかという人々の思い、もっとサクラマスが釣れたらよいという釣り人の願い。その流れの中で、サクラマスの増殖をもう一度考え直してみようという国や県の研究者の働きに、つき動かされての調べものとなった。結果として、それまで関心の薄かった北海道におけるサクラマスがだんだんと見えてくるようにもなった。
川が川でなくなった時サクラマスは途絶える
太平洋のサケ属のルーツにあたるサクラマスの仲間が、いまレッドデータブックで取り上げられ、生存するギリギリの状態にある。本書ではその様子を日本各地の川、一本一本で見てゆく。(つづく)
(『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』水口憲哉著
本文第1章「美しき頑固もの、サクラマス」より抜粋)