新宿FACEで開催された「IWAジャパンプロレスリング15周年興行第二弾」を観戦してきた。

プロレス観戦は6月8日のノア八王子大会に行って以来で、三沢がリングで死んだのはそれから5日後だ。もうスパルタンXで三沢コールができない。

昨夜のIジャで一見客たちにもっとも受けた試合は、「市来貴代子・さくらえみvsデスワーム(♀)・真琴」の、女子プロレスタッグマッチだった。デスワームとは、Iジャ正規軍に敵対する謎の美女マネージャー、ハル・ミヤコ女史がモンゴルのゴビ砂漠で捕獲して日本へ連れ帰り、江ノ島が見える神奈川県内のビーチで育てていたという、伝説の殺人ミミズ。毒を吐いて何百人もの人間を殺しているということだが、海辺で遊んでいたちびっ子に発見されて「でっかい伊勢エビだ〜」とバカにされた(東スポ/2009.3.20)。

その微妙なデスワームが元ひきこもりの美少女戦士・真琴と組んで、たけしの元気が出るテレビ出身の性格の悪い市来と、市来の後輩で市来とはとても仲の悪いさくらえみの初タッグと闘うという、まさに異次元な女子プロレス対決である。ん、デスワームって女子か? 会場に配布された対戦カードには「デスワーム(♀)」と明記してあるので、女子なのだろう。

照明が暗転していよいよデスワーム(♀)が入場。すると会場の端っこから間延びした「ですー」という声援(?)がおきた。すかさずほかの誰かが「わーむー」。チャンスと思った私がさらにつづけて「かっこめすー」。このコール・アンド・レスポンスは、会場のお客様に見事バカ受けした。一面識もない他の誰かとこんな風に連携して楽しめるのは、混沌を絵に描いたようなIジャのプロレス会場ならではの醍醐味である。

さて試合開始。デスワーム(♀)の頭が巨大すぎてロープに引っかかりリングに入れませんという最初のマクラからずっと、デスワーム(♀)は笑いをとりまくっていた。性格の悪い市来に攻撃された際に逃げようとしてその場にしゃがんでリングをひっかき始め、「そこは砂じゃないよ!」と会場のお客さん(私)に突っ込まれてハッと気づいた表情(わからないけど)をデスワーム(♀)がかいま見せたときも、会場の善良なおじさん、おばさんたちは大爆笑だった。

試合の結果はどうでもいいっちゃあどうでもよくて、正直覚えてません。ゲラゲラとお腹が苦しくなるまで笑いに笑ったあとで、プロレスという文化の奥深さというか受けの幅広さを再認識した。差別と偽善がはびこり年々暮らしづらくなっていくのは明らかな日本の社会において、リアルとファンタジーのあわいを行ったり来たりするプロレスは一筋のわずかな光明だ。三沢の不幸な死を利用してプロレスにライセンス制や統一機構を導入しようと、落ち目の自民党の馳浩がもっともらしい弁舌を振りかざしているが、今度の選挙だとかで消えてくれればいいのにと思う。いったい誰が国営プロレスなんか観たがるというんだい?

デスワーム(♀)ってこんなの。ガチャピンみたいだけどデスワーム(♀)。性格の悪い市来をつかまえてヘア投げをかまそうとしているところ。足下に転がっているのはさくらえみ(元川恵美)。奥にいるのが元ヒッキーの美少女戦士・真琴。レフェリーはパンチョ軽部ですね。締め切り前の忙しい時期だというのになんでこういうどうでもいいことを全世界的にむだに発信したくなるのか。
IMGP0151