昨日、河口湖へ行った。

今年のワカサギの型はいいよ、と聞いたので河口湖へ行った。河口湖でのワカサギ釣りは30数年ぶりだ。ほんの4、5歳のころ親類のおじいさんに連れられて、河口湖大橋の下で和船に乗ってワカサギ釣りをしたのだ。

7本バリにぜんぶワカサギがついてきた。私の身長が足らないものだから、船の上で背伸びをしても下側のハリはまだ湖の中に入ったままだ。ハリがかりしたワカサギはハリから逃れようとして、水中でからだを鋭角的にうねらせた。背中は細くて黒く、ヒラを打つと銀白色の腹が光った。河口湖大橋の橋げたが近くに見えていた。背中には雪をかぶった富士山がそびえていた。

「坊はうまいなぁ。」
おじいさんがにこにこしながらワカサギを外してくれた。私はおじいさんの真似をして、手バネのワカサギ竿を、すーっ、すーっと上げたり下げたりした。するとまたすぐにアタリがあって、道糸をたぐるとワカサギがついていた。おじいさんはそのたびにこにこしながら魚を外してくれた。

船をあげて家に戻ってくるとおじいさんは、私の両親へ自分のことのように私の釣りを自慢した。それをうなずきながら聞いている私の親は、にこにこしていたと思う。湖畔の家に住んでいたお祖母ちゃんもあのころは生きていて、ふとったからだで同じように、にこにこしていたと思う。湖上の釣りと帰ってからの大人たちの様子を、夢の中の景色のように覚えている。私の親はまだ30代のはじめだったはずだ。

昨日の河口湖は、北風が吹き荒れていて強烈に寒く、10分で子の鼻水が垂れてきた。仕方なしにいったん撤収。妻と子を湖畔へ放置したあと、私一人でふたたび湖へでた。すると夕まずめの30分で、今夜の夕ご飯のおかずにじゅうぶんな数のワカサギが釣れた。大きいもので15センチちかくあった。あのワカサギ独特のぷるぷるというアタリにはもうたまらなく興奮した。食いはしぶく、前アタリでしっかりアワセないとうまく乗らなかった。そこがまた達成感があってよかった。

子どもといっしょに釣りをすると、大人はたいていうれしくてしかたない。でも子がいなくてもやはり釣りは楽しい。