昨日まで南国へ行っていた。

夜明けから夕暮れまで魚影を追って、灼熱の堤防を駆け巡ってきた。完全に逞しい海の男になって東京へもどってきた。南国での珍しいエキサイティングなフライフィッシングの詳細は、『フライの雑誌』次号に書きます。

そのむかし新宿昭和館で健さん映画を観たあとは、言葉の端はしが妙に健さんっぽくなった。現在の私は、あれと似たような精神状態にある。今日は生粋の漁師みたいに頭にねじり鉢巻を巻いて、保育園へお迎えに行こうかと思う。

そういえば昭和館から帰ると、私の健さん口調への変化にめざとく気づいた某女は、かならず意地悪く指摘してきた。あんたなに考え違いしてんの、ははん、みたいに。そのたびごとに弱気な俠客は正気にかえらされ酔いが一気に醒めた。甘くもない記憶だ。

あのころは私も幼かった。大人になった今ならあんな女の苛めごときは平気の平左である。変移抜刀霞斬りで三倍返ししてやる。すかさず強烈な飯綱落しで三百倍返しをくらうだろう。ごめんなさい&ごめんなさい。あらゆる意味で私はあなたにはかないませんでした。

ところで「平気の平左」って使う人、最近あまりいない。