〈『フライの雑誌』第110号より転載〉
初版(1997年)から20年、
『水生昆虫アルバム』(島崎憲司郎著)を語る
本を開いた途端に、自分が川にいる。
虫と魚と人間との関係性、それらを
全部含んだ自然を、臨場感をもって体感できる。
出版から20年たって、この本の価値をもう一度
皆さんに知ってもらいたいですね。
中村善一さん(群馬県桐生市 画家 87歳)
中学教師時に幼児の美術教育の研究へ打ち込む。自身の画業と並行して美術の私塾を長く開き、今も多くの生徒に慕われる名伯楽でもある。
島崎憲司郎さんの友人、青木修さんの著書に表紙絵を寄せたのがきっかけで『水生昆虫アルバム』に出会った。9月、桐生市内のアトリエへお邪魔して、同書への感想を伺った。(編集部まとめ)
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素晴らしい本に行き会いました。本が実体を持って迫ってくる経験は初めてです。本を開くと自分が川にいる。その臨場感が新鮮です。フライフィッシングを知らなくても独自の世界に引きずり込まれます。
文章も写真もいいですが絵もいい。実にすき間がない。魚の絵が魚という文字みたい。ヤマメを釣る人はヤマメに見るしイワナを釣る人はイワナに見る。絵の包容力です。尻尾なんか簡単に描いているようですごいリアリティです。よほど自然が体の中に入っているんです。
幼児の絵は描きたいものがまずあって、方法論ではなく勝手に描きだします。島崎さんも自分の見たいものがそこにあるという理由だけで徹底的に観察し、自然との関係性を結んでいる。「知りたいことは全部川の中にある。」と書いていますよね。両者に共通する感銘を受けました。
文章と写真と絵と著者の生活がぴったり一致しています。学術的な知識だけではないし、経験だけでもない。単に釣りの本と思われると困ります。
どうすれば魚がたくさん釣れるかという本とは逆です。実用書みたいに人間の都合で書いていません。では魚が釣れても釣れなくてもどうでもいいかというと、魚は完全に釣るんです(笑) 態度がはっきりしています。
釣りをやらない方でもこの本を開くと驚くでしょう。人間にとって一番身近な自然を普通じゃない視線でとらえて、すっと当たり前に提出している。だから驚くんです。
著者と出版社が妥協せず、真剣勝負で斬り結んで、最後までやり抜いちゃった。希有な本ですよ。出版から20年たったそうですが、この本は何年たっても古くなりません。
学校の図書館にぜひ置いて子供たちに見てもらいたいな。(談)
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島崎憲司郎 著・写真・イラスト「新装版 水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW」
以下のお店で、『新装版 水生昆虫アルバム』の見本をご覧いただくことができます。ぜひお店でじっくりとごらんください。
○上州屋八王子店(東京都八王子市)
○ちゅうまんの夢屋(鹿児島県鹿児島市)
○パーマーク(新潟県長岡市)
○ワイルドワン仙台太白店(宮城県仙台市)
○フライフィッシングショップなごみ(神奈川県横浜市)
○ループ・トゥ・ループ(東京都小金井市)
○ビギナーズマム(大阪府大阪市)
○フライフィッシングショップ ペスカドール(和歌山県田辺市)
>『フライの雑誌』取扱い釣具店様へご案内
『新装版 水生昆虫アルバム』の店頭用見本をお送りします。ご注文の際にお申し付けください。部数限定です。