うちの池の水が自然に減るようになって約二週間。
当初、だいたい一日で3センチ減っていたのが、最近では10センチもガクッと水位が落ちるようになってきた。さすがこのところの猛暑で水分が蒸発するのが早い、と納得しかけたが、もちろん一日に10センチも蒸発するわけはない。わかってるって。
はやい話、池の底のどこかに空いた穴が、だんだん大きくなっているのだろう。
毎朝起きて庭を見ると、ガクッと水が抜けてむきだしになった池の側面が、否が応でも目に入ってくる。〝ああ、やっぱり〟と、心底がっかりする。水道からホースで水をじょぼじょぼと足している時の寂しさといったら、ちょっとほかにない。
わたしが子どもだったころ、わたしのお父さんが病気になって仕事ができなくなった。入院したり家で療養したりを何年か繰り返した。お父さんが家にいるとき、家族でいっしょに夕食をとって寝る前に、明日の朝に目が覚めたらお父さんの病気が治っていたらいいのに、とよく思った。
夜にぐっすり眠れば、寝ている間に状況がかわって、朝にはなにかいいことが待っていてくれるんじゃないか、と願っていた。
いま、毎晩ふとんを敷く前に、わたしはまっ暗な庭を懐中電灯で照らして、池の水位を確認する。そして、「明日の朝、池の水が抜けていなければいいなあ。」と祈る。でもきっと明日の朝、池の水はガクッと抜けている。
わたしは水の抜ける池といっしょに暮らしている。
でっかい持病を抱えてしまったみたいな気分だ。