10月からオオタナゴに特定外来生物法の規制がかかる。オオタナゴはすでに各地で定着してたくさんいる。
来月からは、野外ですくってきたオオタナゴを家で勝手に飼うと、法律違反になる。1年以下の懲役や100万円以下の罰金、法人なら5000万円以下の罰金が課される。特定外来生物法違反は重罪だ。
ところが、とくに幼魚期のタナゴ類の視認識別は、専門家でも困難だと言われている。
環境省は特定外来生物の「同定マニュアル」を制作している。特定外来生物にオオタナゴを指定した以上、オオタナゴと他のタナゴ類との見分け方を、子供でも分かるように解説するのが、環境省の喫緊の仕事だ。現段階で発表されていないこと自体がおかしい。
特定外来生物の見分け方を分かりやすく説明できないのに、規制だけ先走るようなことがあってはならない。
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環境省の「要注意外来生物に係る情報及び注意事項」(2015年3月)にはこうある。
オオタナゴに関する情報 被害の実態は不明 繁殖生態や食性などの基礎的な知見がほとんどなく、在来タナゴ類との競合等に関する研究も行われていない
つまり〝よく分かっていないんだ〟と自分で言っている。
2016年1月の環境省第6回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)の議事録には、こんなことが書いてある。
【細谷座長】 ありがとうございます。そのほかございませんか。よろしいか。そうしましたら確認させていただきますが、ブラウンブルヘッド、フラットヘッドキャットフィッシュ、ホワイトパーチ、ラッフ、ラウンドゴビー、ヨーロッパナマズ、パイク科、ガンブシア・ホルブローキ、ナイルパーチ、オオタナゴ、コウライギギ及びガー科、この12種を資料2の評価の理由に基づいて生態系に係る被害を及ぼすおそれのある生物として特定外来生物に指定するべきというグループ会合の結論を出したいと思いますが、よろしいか。( 異議なし )
出席者 (座長) 細谷和海 (委員) 中井克樹、升間主計、松田征也
オオタナゴの特定外来生物指定への結論が出されたこの会議で、オオタナゴの被害実績および同定が、なんら議論されていない。「よろしいか」→(異議なし)という〝魚の専門家〟たちの声が空しくひびいているばかりである。いや、ひびいてすらいない。
以下は今回の環境省「特定外来生物等の新規指定について」から。
<魚類> 計12種類(1科、10種、1交雑種)
ブラウンブルヘッド (Ameiurus nebulosus)
フラットヘッドキャットフィッシュ (Pylodictis olivaris)
ホワイトパーチ (Morone americana)
ラッフ (Gymnocephalus cernua)
ラウンドゴビー (Neogobius melanostomus)
ヨーロッパナマズ (Silurus glanis)
かわかます科 (Esocidae)全種
かわかます科に属する種間の交雑により生じた生物
ガンブスィア・ホルブロオキ (Gambusia holbrooki)
ナイルパーチ (Lates niloticus)
オオタナゴ (Acheilognathus macropterus)
コウライギギ (Tachysurus fulvidraco)
ふつうの人はこんな名前見せられても、どんな魚か分からないし、識別できない。生物多様性へ興味ももちづらい。
ひたすらマニアックになっていく特定外来生物法は、いったい誰のための、何のための法律なのか。説明不十分のまま進んでいくと、善意の一般人を犯罪の落とし穴へ誘い込みかねない。そうなれば間違いなく環境省の責任が追及されるだろう。
2005年の施行から11年たった現在、特定外来生物法の主旨を再確認する必要があるのではないか。
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