環境省外来種パブコメ(1/11締め切り)|〈産業管理外来種〉〈国内由来外来種〉は釣りや漁業とどう関わるのか? 水産庁釣人専門官に聞いてみた。

2014年12月12日、本欄で「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント/1/11(日)締め切り)について、ご案内した。

今回、〈産業管理外来種〉というカテゴリが新しく登場した。魚類では、レイクトラウト、ブラウントラウト、ニジマスが、〈産業管理外来種〉の候補になっている。

パブコメ資料では〈産業管理外来種〉を以下のように説明している。

適切な管理が必要な産業上重要な外来種。産業並びに生業の維持又は公益性において重要で、代替性がなく、その利用にあたっては留意事項に沿って適切な管理を行うことが必要な外来種

この言い方では、釣りや漁業と関連して、〈産業管理外来種〉が具体的にどのような扱いを受けることが予想されるのか、分かりづらい。

また、同じく新登場した〈国内由来外来種〉のカテゴリには、コイ、ゲンゴロウブナ、ゼニタナゴ、オイカワ、ホンモロコ、ナマズ、ワカサギ、アユ、イワナ、サクラマス(ヤマメ)、サツキマス(アマゴ)というように、現状も釣りや漁業で大いに利用され、人々に広く親しまれている魚種が多く挙げられている。

水産庁には、釣り人向けの窓口である釣人専門官というポストがある。釣人専門官の役割と仕事に関しては、『フライの雑誌』誌面でたびたびとりあげてきた。(最新第103号でも記事にしている。興味のある方は確認していただきたい)。

今回のように、釣りに関する国の施策が大きく動こうとしているとき、釣り人の分からないこと、困ったこと、不安なことに対応するのも、釣人専門官の仕事だ

2014年12月17日、『フライの雑誌』編集部では、〈産業管理外来種〉、〈国内由来外来種〉とは何かについて、もう少し分かりやすい解説を、釣人専門官へ求めていた。本日2015年1月7日、水産庁資源管理部漁業調整課沿岸・遊漁室 釣人専門官 山田源太氏から回答を得られた。

パブコメを書く際の参考になると思われる。少し長いけれども、ぜひ以下をご覧いただきたい。

・・・・・・

Q1
 今回、「産業管理外来種」という初めてのカテゴリが提示されましたが、これはどういうものなのでしょうか?

A1
 「産業管理外来種」というカテゴリができた経緯は、外来種問題の基本認識として、外来種の中でも、例えば牧草やセイヨウオオマルハナバチ、魚ではニジマスなど、従来より産業利用されている種もあることから、そのような産業又は公益的役割において重要な外来種の位置付けを明確にするとの観点があったと承知しています。

 魚類で言えば、各地の内水面で放流され、釣りの対象としても利用されているニジマス等が他の外来生物と同じ扱いになると、漁業権に基づく公的な枠組みの中で適切に管理されている行為であっても否定されかねないこととなり、大きな影響がありますので、こういったことを考慮した結果、産業管理外来種に分類されたものです。

 なお、そのような現状では代替性がない種であっても侵略性を有するものがあり、利用において適切な管理に重点を置いた対策が必要となるため、本カテゴリに位置付けることで、リストの種ごとに示す利用上の留意事項に沿って適切に管理することを利用者に呼びかける意味を持ちます。

 これは、ニジマス等も例外ではなく、あくまで適切な管理が行われることを前提として今後も継続して利用できるとされています。特に、産業管理外来種は、とるべき対策の方向性として特に産業利用している方々に適切に管理を実施していただきたいものとして位置付けられています。

 産業管理外来種に指定されることにより、ニジマスなどを利用している内水面漁業協同組合などが、外来種としての影響を認識し、以後、「これ以上の分布拡大をしないよう注意が必要」といった利用上の留意事項について、十分認識した上で放流などを行うようになり、適切な管理が徹底されることが期待されています。

 また、釣り人への外来種問題への意識啓発にもなり、釣り人による安易な移殖の防止にもつながることも期待されています。

・・・・・

Q2
 今回のパブコメ資料には載っていませんが、議論をしたものの今回のリストに掲載するには至らなかった魚種もあるようです。特に国内由来外来種というカテゴリで多く、例えばコイ、ゲンゴロウブナ、カネヒラ、ゼニタナゴ、オイカワ、ホンモロコ、ナマズ、ワカサギ、アユ、イワナ、サクラマス(ヤマメ)、サツキマス(アマゴ)、ベニザケ(ヒメマス)、オヤニラミ、ヌマチチブ 等、中には積極的な放流が行われている釣りの重要魚種が多数含まれています。これらが再度議論のテーブルに載ることがあるのでしょうか?

A2

 「本リストは、継続的・定期的に掲載種の見直し・追加及び関連情報の更新を行う。」と記載(参考資料2のP.3)されていることから、知見の蓄積によっては将来的に国内由来外来種が見直し・追加されることも考えられます。

 そのような際には、その影響について、釣り人や業界からも積極的に意見を出していただき、そういった意見も踏まえつつ、慎重に議論がなされる必要があると考えています。

(釣人専門官からの回答は以上)

釣人専門官:
水産庁資源管理部漁業調整課沿岸・遊漁室 釣人専門官
TEL 代表03-3502-8111(内線6701)
直通 03-3502-8476

・・・・・・

【以下、パブコメ資料より抜粋】

定着を予防する外来種(定着予防外来種)
・侵入予防外来種 ブラウンブルヘッド、フラットヘッドキャットフィッシュ、ホワイトパーチ、ラッフ、ラウンドゴビー

・その他の定着予防外来種 ガー科、レッドホースミノー、オリノコセイルフィンキャットフィッシュ、ヨーロッパナマズ、ノーザンパイク、マスキーパイク、パイク科、ガンブシア・ホルブローキ、ナイルパーチ、ストライプトバス、ホワイトバス、ケツギョ、コウライケツギョ、ヨーロピアンパーチ、パイクパーチ、スポッテッドティラピア

総合的に対策が必要な外来種(総合対策外来種)
・緊急対策外来種 チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)、ブル-ギル、コクチバス、オオクチバス

・重点対策外来種 タイリクバラタナゴ、カダヤシ

・その他の総合対策外来種 オオタナゴ、ソウギョ、アオウオ、コクレン、ハクレン、ペヘレイ、カワスズメ、ナイルティラピア、ジルティラピア、ソ-ドテ-ル、カラドジョウ、パ-ルダニオ、ゼブラダニオ、アカヒレ、マダラロリカリア、スノープレコ、アマゾンセイルフィンキャットフィッシュ、ウォーキングキャットフィッシュ、ヒレナマズ、カワマス(編注:ブルックトラウト)、グッピ-、インディアングラスフィッシュ、コンウ゛ィクトシクリッド、ブルーティラピア

適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)
レイクトラウト、ニジマス、ブラウントラウト

【国内由来の外来種、国内に自然分布域を持つ国外由来の外来種】
総合的に対策が必要な外来種(総合対策外来種)
・その他の総合対策外来種
 琵琶湖・淀川以外のハス、東北地方などのモツゴ

・・・・・

「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)、及び、「外来種被害防止行動計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)の締め切りは、2015年1月11日(日)

「外来種被害防止行動計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について 関連資料
「外来種被害防止行動計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について 関連資料
「外来種被害防止行動計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について 関連資料
「外来種被害防止行動計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について 関連資料