福島第1原発:アユ出荷停止を福島県に指示(6.27)
政府は27日、暫定規制値を超える放射性物質が検出された福島県の阿武隈川(信夫(しのぶ)ダムの下流域に限る)と真野川、新田川で取れるアユ(養殖を除く)について出荷停止を同県に指示した。アユの出荷停止は初めて。いずれの川も漁の解禁日は7月1日。阿武隈川のうち信夫ダムの下流域についてはウグイの出荷停止もあわせて指示した。
●福島県によるアユ釣りの規制状況は図の通り。セシウムが高い数値を出している阿武隈川で、福島市内の信夫ダムより下流域のみが、制限地域となっていることが気になる。
●信夫ダムには魚道がないという。魚道がなければ、海から遡上してきた天然もののアユはダムで止まる。信夫ダムより上流のアユは放流ものなので放射能汚染が少ないということか。それにしても検体が少なすぎる。すでに実害が出ている以上、いまの甘すぎる国と行政の対応はみずから風評被害を拡大させている。
●これまでダムは水生生物の往来を妨げることで問題視されてきた。ところが魚道のないダムは、放射能汚染された魚の移動を阻み、汚染の拡大を止める。つまらないパラダイムシフトである。週明けに県へ直接取材してみることにする。
●と思っていたら、こんなニュースが。
福島第1原発事故による放射能漏れで、阿武隈川、真野川、新田川・太田川の3漁協は29日までに、アユから食品衛生法の基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたことを受け、7月1日に予定していたアユ釣り解禁の見送りを決めた。解禁できないのは、初めてとみられる。3河川の水系はウグイの採捕も自粛している。
福島市の阿武隈川漁業協同組合の事務所には連日、組合員や釣り愛好者から「今シーズンの釣りはできるのか」との問い合わせが相次いでいる。遊漁券は来年度まで有効にするほか、払い戻しにも応じている。東京電力に対する損害賠償請求も行う予定という。…
県内は6月初旬から、基準を下回った河川でのアユ漁が解禁され、久慈川や鮫川、夏井川などで釣りができるようになっている。(6.30 福島民友釣りニュース)
●6月17日、阿武隈川漁協へ電話した。その時すでに、電話の向こうの組合員さんは「福島市内のアユからも高い数値の放射能が出た。いまは禁漁期だが、解禁できるかどうかわからない」と、じつに無念そうに語っておられた。事態はわるいほうへ展開している。
●アユは秋に川で生まれて海へくだり、海で幼魚期をすごし、初夏に生まれた川をのぼる。川の石についたコケをたべて育ち、秋に産卵したのちにたった一年のいのちを終える。万葉のむかしから日本の風物詩になっている、はかなくも力づよく美しい魚だ。
●そのアユを放射能で汚染した。人間の罪は重い。