竿を振らない渓流の旅へ

よんどころない事情により、蒸気機関車へ乗りに静岡・大井川鐵道へ(ついでに全国唯一のアプト式鉄道にも)。東京から東名を3時間で焼津へ着。発車時刻までには時間があったので、とりあえず港へ向かった(ここらへんが釣り師)。岸壁で釣っていた地元の釣り人から、となりの小川港にある玄人向け食堂(素人も可)がとても素晴らしいという情報を教えてもらい、さっそく行く。ここはすばらしかった。魚河岸で働く武者になった気分。
大井川鐵道新金谷駅に車を停めて、いよいよ蒸気機関車C11に乗り込む。ポッポー、と勇ましく動き出したが、走り出してしまえば予想通りいつもの京王線とおんなじである。新緑萌える大井川の渓谷沿いを汽車はゆっくりと遡っていく。昔はお姉さんだったはずの車掌さんが吹くハモニカに合わせて、中高年ばかりのSLの乗客ほぼ全員が「二人は若い」を合唱し、客車がほのぼのムードに包まれるひとときも。年金問題の行く末が気にかかる。
千頭駅からバスに乗り換え、寸又峡温泉に到着。地元の方から、かつて40年前ここがあの金嬉老事件の舞台になった温泉地であると教えられた。寸又峡って聞いたことがあると思ったらそういえばそうじゃん、と自分の記憶力の薄弱さを改めて認識した。ちなみに金嬉老が当時たてこもった旅館は今も営業中。今夜の宿は温泉街の中でもっとも川に近かった求夢荘。再訪したいと思えるお宿に巡り会えた。
翌朝、バスの時間を勘違いしていてあわてて支度した関係で、せっかく買ったSL車内販売限定の「連結でG0! 連結するとダッシュで走行」を、宿に忘れてきてしまったのは残念。一緒に買ったやはり限定の「SL汽笛ぶえ」はずっと首からさげていたので忘れずにすんだ。ポッポー。
今回の旅行中、背負ったザックのふたからパックロッドは常に頭を突き出させていたが、結局一度も竿を振る機会がなかった。こんな旅行は何年ぶりか、たまにはいいか。