英国紳士は大ジョッキを紙コップのように空ける

大酒飲みとまったく下戸と、フライマンには、なぜかその両極端が多い。

フライショップを経営されているA氏は、釣りの腕は超一流、知識豊富で信頼度高く、ひとあたりもいい。とうぜん、お客さんからは老若男女とわず人気がある。しかし、「酒が入るとただのエロオヤジだよ」と親しい人から噂をきいていた。

そんなことないだろうと思って、あるとき酒席をおなじくしてみたら、A氏は大ジョッキを紙コップのようにカパカパ空けていった。そして1時間後、いやらしく目つきが変わって、ほんとにただのエロオヤジになった。以来、A氏がいかにダンディーな英国風の物腰で接してくれても、どうしてもあのエロっぷりが頭をよぎる。

北関東のB氏は、見るからに明朗闊達、眉目秀麗、学生時代にはラグビーで勇名を馳せたという。ぜったい高校の時とかモテモテだっただろうなあと、関係ないのに嫉妬したくなるほど、格好いい。釣りの方は、基礎体力をいかして山中深くわけいるウイルダネス系である。仲間からの信頼あつく、野生動物やキノコにくわしく、世の中がサバイバルになったらすがりつきたいタイプだ。

さぞかしお酒も大量に飲むのかと思ったら、雫ほどなめただけで、丸太のようにぶっ倒れるのだという。たしかにいつぞやの飲み会では、B氏は豪快に笑いながら、ひたすらウーロン茶をあおっていた。だけど他の誰よりもテンション高く、ガンガン場を盛り上げていたのは素敵である。

さて、今週わたしはめずらしく都内へ、飲みにでかけた。気の張らない友人である。夕方に待ち合わせして、おいしい漁師料理の店に連れて行ってもらい、釣りや仕事に話の花をさかせた。気分よくお開きとなり、最終電車でご帰宅した。

翌朝の会話。
「いやあ、昨夜は飲んだ飲んだ。」
「たくさん飲んだの。」
「ウーロンハイ一杯。5時間かかった。」