近所の川へハヤ釣り。竿とリールとフライとハリスと
最低限の道具だけでふらふらと歩いて1分。
後でひとさまへご報告する釣りではないのでカメラも持たない。
去年暮れから今春までのふざけた土木工事のせいで、
この川の今年のいちばんいいハヤ釣りシーズンは壊滅状態だった。
毎年のこととはいえ、今年の工事はさらに念入りだった。
なんの落ち度もない川をズルズルギタギタに重機が走りまくった。
まったく人間というやつは仕方ない生き物だ。
ふだんなら5月、6月の夕方にはハヤのライズで埋まる浅瀬が、
しーんと静まり返ったままだった。産卵ができたかどうかも怪しい。
すぐそこを流れているのに魚のいなくなった川を見るのがいやで、
正直、夏はそこの河原を一度も歩かなかった。そういう反応をする自分も
ずいぶんつまらないやつだ。つまらないやつだという自覚はもちろんあるために
余計に気分がくさくさする。そんな夏だった。
もともとこの川にハヤ釣りの釣り人は、ほぼまったくいないと言っていい。
フライロッドを持った釣り人はこの数年で5人しか見たことがない。
そのうち3人は、私の友人と私が連れて歩いた近所の小学生2人である。
今日の夕方土手に立って、薄暗くなりかけた川面へ目をやると、ライズである。
しかもたくさん。ああ、とこころが一気に浮き立った。
フライフィッシャーはライズがあれば人生バラ色だ。
今日はめずらしく、ミッジドライを自然に流すというハヤ釣りの本線の釣り方をした。
いやもうこれがばかあたりで、大きいのから小さいのまで、1時間ちょっとで
数で言えば30匹くらい釣ったんじゃなかろうか。
いちばん大きかったのは、この川で釣ったこれまでの最大サイズくらいあって、
ヤマベなのに手のひらに乗せると頭とシッポが余裕でだらんと垂れ下がった。
ああもうなんでこういうときに限ってカメラを持って来ていないんだ。
あれは誰かに見せて自慢したいサイズだったのに。
新仔もたくさん泳いでいた。今年もしっかり産卵していたようだ。
楊枝くらいのサイズなのに#20のフライへ果敢にアタックしてがっぷりくわえてくるのもいた。
それをフッキングさせたのは私の腕である。
あれだけギタギタにやられたのに、川はやっぱり強い。魚はえらい。
つまんないのはやっぱり人間だけである。