2003年3月撮影。『フライの雑誌』第61号掲載「フレッシュ・マルタを狙え!」記事(堀内正徳)より。この頃はマルタの遡上を追いかけて、毎日朝な夕なに多摩川へ通っていた。なにしろ自宅の目の前に多摩川が流れていた。歩いて行けるポイントに70センチ級のマルタウグイがごんごんと遡ってきていた。
川にはだれもいなかった。ときどき友だちをマルタ釣りに誘った。マルタウグイのパワーと大きさにびっくりして、みんな子どもみたいによろこんでいた。「マルタウグイすごいでしょう」とわたしもうれしかった。こんなのがのぼってくるんだから、川ってえらいよね。
ポイントと釣り方を自分で開拓するのがたのしくて、わたしはマルタウグイに夢中だった。愛していた。もちろん一方通行の愛だ。
マルタウグイたちは、産卵するために多摩川へ帰ってくる。彼らにとっては、フライロッドを背負ってママチャリで追いかけ回してくるわたしの存在なんか、まったくもって、こころから、本当にいい迷惑だったろう。
2003年から2005年にかけての3年間、多摩川でマルタウグイを一番釣っていたのは、まちがいなくわたしだ。
今年ももうそろそろ遡ってくるはずだ。