遊漁規則を守るために、遊漁規則を都道府県庁のホームページにアップしてもらいましょう

●フライの雑誌社刊『イワナをもっと増やしたい! 「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法』(2008)は、イワナを始めとする渓流魚を増やす方法を、釣り人に身近な視点から分かりやすく説いた楽しい一冊だ。漁協組合員や学校教育の場でもテキストとして使われ、版を重ねている。

●著者の中村智幸氏(現在は中央水研・内水面研究センター勤務)は、長年、内水面(川と湖)の魚族増殖と保護の研究に関わってきている。各地の漁協からの講演依頼も多い。

●中村氏は個人でメールマガジンを発行して数年になる。メールマガジンでは、中村氏が業務や個人的経験で知り得た内水面増殖に関する有意義な情報を、読者登録した関係者へ配信している。読者は主に、各地の水産行政担当者、水産研究者、水産教育関係者、漁協、釣り人など、多数にのぼる。

●中村氏からの問題提起や質問への返信も活発に行なわれている。中村氏に届いたレスポンスを中村氏が編集してまた配信し、さらに議論が深まることもある。

●今回は、2017年7月5日に発行された中村智幸氏のメールマガジンから、釣り人にたいへん関係の深い〈都道府県のホームページへの遊漁規則のアップ〉のテーマを紹介したい。メルマガの内容は以下の通りだ。

中村が存じ上げている内水面関係のみなさま

件名:都道府県のホームページへの遊漁規則のアップ

 都道府県が自身の都道府県の漁協の遊漁規則を都道府県のホームページにアップすることができます。

 都道府県の職員さんに、「遊漁規則を都道府県のホームページにアップしてはいかがですか」と申し上げると、結構多くの職員さんが、「規則の認可は知事が行うが、規則は漁協のものなので、漁協の了承無しに都道府県のホームページにアップすることはできない」と言います。

 これは正しくありません。

 漁業法第129条第7項に、「都道府県知事は農林水産省令で定める事項を公示しなければならない」と規定されています。この「定める事項」は漁業法施行規則第14条に定められており、遊漁規則に規定された事項は公示しなければならないとされています。公示されたものをホームページに掲載することになるので、漁協の了承を得る必要はありません。

 このことは水産庁さんに確認しました。

 遊漁者に「遊漁について何か要望はありますか? 不満はありますか?」とアンケートを取ったところ、「釣りに行こうとする川や湖の漁協の遊漁規則を読もうと思っても、たいていどこにも掲示されていないので、読むことができない。組合長さんの自宅のこたつの上が漁協の事務所みたいな漁協が多く、そのような漁協にホームページを開設してくれ、そのホームページに遊漁規則をアップしてくれと言っても無理だろうから、せめて県庁のホームページにアップして欲しい」という要望が多いです。

 遊漁者の利便性のため、遊漁者に遊漁規則を守ってもらうために、遊漁規則を都道府県庁のホームページにアップすることは大切だと思います。

 都道府県の内水面漁連のホームページにアップするという方法もありますが、漁連に加盟していない漁協もあるので、アップする先はやはり都道府県庁のホームページが良いと思います。

 中央水研・内水面研究センター 中村

●これはつまりどういうことかというと、釣り人は川や湖で釣りをする際には、都道府県ごとに定められた内水面漁業調整規則と、漁業組合が定めた遊漁規則を守らなければならない。しかし、これまで長い間、規則の内容を知ること自体が困難だった。

●釣り人たちが根気づよく働きかけた結果、現在は水産庁のウェブサイト「遊漁の部屋」に各都道府県の水産窓口ウェブサイトへのリンクが掲載されている。リンクをたどれば内水面漁業調整規則を知ることはできる。

●しかし、各漁協が定めて知事の認可を得る遊漁規則については、いまだ多くの内水面漁協が独自のウェブサイトを開設しておらず、電話もつながりづらいといった状況にある。一般の釣り人が釣りをする前に各漁協の遊漁規則を知るという当たり前のことがたいへん難しい。中村氏のメルマガで指摘している通りだ。知らせる努力もしていないのに、規則を守れというほうが無理である。

●では、釣り人としてはどうすればいいだろう。

各都道府県の水産窓口へ、〝漁業権を認可している内水面漁協の遊漁規則を公示してください。根拠は漁業法第129条第7項と施行規則第14条です。掲載場所は都道府県庁のホームページを希望します。〟と電話やメールなどで要望することができますよ、というのが、今回の中村氏メルマガから読み取れることである。

●水産担当の行政マンには釣り好き率が高い。自分でやってみると分かるが、釣り人が紳士的に要望すれば、できることにはおおむね好意的に対応してくれるものである。行政への電話一本で釣り場がよりよく変わることもある。

(文責 『フライの雑誌』編集部 堀内)

・・・・・・単行本「イワナをもっと増やしたい!」について・・・・・・

『イワナをもっと増やしたい! 「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法』(フライの雑誌社新書)は、開発や温暖化、乱獲に追われている渓流の王・イワナの不思議な生態を紹介し、これからの時代にどうすれば守り増やしていけるかのたくさんの具体案をご案内する楽しいサイエンス・エッセイだ。2007年12月の初版発行以来、おかげさまで各方面から高い評価をいただいてきた。

最近になって、渓流魚の人工産卵場造成が各メディアでとりあげられる機会も多くなっている。人工産卵場造成の技術を日本ではじめて確立したのは『イワナをもっと増やしたい!』著者の中村智幸博士だ。現在出回っている情報は『イワナをもっと増やしたい!』を原典としている。天然野生のイワナを守り育てる人工産卵場造成の技術が世の中へ広まってゆくことに、版元として大きな喜びを感じる。

重版では初版時の文言に一部手を入れた。また、カバーを新しくして〝イワナ本の新定番〟と銘打った。いわゆる〝イワナ本〟としては、岩波新書の名著『イワナの謎を追う』(石城謙吉著/1984)がとても有名だ。初版時に、『イワナをもっと増やしたい!』は次代の『イワナの謎を追う』を目指しましょうと、中村氏と夢を語り合った。今回の重版で、その夢へ一歩近づいたことになるかもしれないと思うのは僭越だろうか。

『フライの雑誌』第88号では、中村智幸氏ご本人に登場していただき、『イワナをもっと増やしたい!』発行以降の日本の渓流魚をとりまく状況の大きな変化について、分かりやすく解説していただくインタビュー記事を掲載している。これまでまったく表に出ていない新事実も紹介する。

『イワナをもっと増やしたい!』第2刷完成
第111号(2017)よく釣れる隣人のシマザキフライズ とにかく釣れる。楽しく釣れる。Shimazaki Flies すぐ役に立つシマザキフライの実例たっぷり保存版! Amazonさんに在庫があります。マシュマロ、バックファイヤーダン、クロスオーストリッチ、アイカザイムなどシマザキフライ関連掲載記事のバックナンバーは111号にまとめました。ずっと品切れだったのに今ごろ大量追加。それが密林のやり方か。保存版です。まだの方ぜひお手にどうぞ。