超めんどくさいけど、水産庁「産業管理外来種の管理指針(案)」パブコメ書いて出しました。
ひと通りまとめおわって、フォームから(えいっ)と送信しようとしたら、なんと文字数制限2000字(!)ということで、弾かれました。
知らなんだー。下書き保存しておいてよかった。
仕方ないのでいっしょうけんめい削って削って、字数内に編集しました。せっかく書いた熱の入った文章を、わけのわからない編集者にチョッキンされる寄稿者さんの気持ちがわかりました。
文字数制限の関係で説明を省いた点があります。『フライの雑誌』次号112号には、この間の産業管理外来種関連のトピックの経緯といっしょに、分かりやすい解説を掲載して、後世へ10万年くらい保存します。ご期待ください。
追伸: 結局日本の釣りは漁業の大枠の中にあるから、書けるのはこれくらいです。といってこの先、趣味の釣りへ国から手を突っ込まれるのは、断じて拒否します。
・・・提出意見はここから・・・
意見1)
2.主な主体の役割と具体的な取組 遊漁関係者 について記述「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」は、水産基本計画の主旨に反している。内水面漁業振興法の理念にも反している。
水産基本計画には、「内水面漁業の有する多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるよう、内水面漁業者と地域住民等が連携して行う内水面に係る生態系の維持・保全のための活動等の取組を支援する。」とある(P.25)。
内水面漁業は、漁業者はもとより地域住民、遊漁者の連携があって成り立つと水産庁は明言している。ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトは内水面漁業経済の要となっている重要水産魚種である。
とりわけニジマスは過去130年以上も国策で増養殖がすすめられてきた最重要魚種のひとつである。現在、全国各地で漁業、地域おこし、イベントなどでニジマスの放流が行なわれており、人気が高い。他魚種への代替性はない。
水産基本計画の理念にのっとれば、三魚種の内、少なくともニジマスを生産者、漁業者、遊漁者、地域住民をつなぐ代替性のない重要な水産資源として、今まで以上に利用していくべきことは、水産行政が選択するべき方向性として自明である。
しかるに、指針で「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」と示すことは、「原則として」という断り書きを入れるにせよ、漁業者と地域住民等が連携して行うはずの、あるいは現に行なっている、内水面多面的機能の発揮のための取り組みの妨げとなる。内水面漁業の維持と振興を阻害する。
「遊漁関係者は、原則として、公有水面における産業管理外来種の放流は自粛する。」の削除を求める。
意見2)
2.主な主体の役割と具体的な取組 遊漁関係者 管理釣り場の管理者及び経営者 について「管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努める」とある。しかし、日本国内の管理釣り場のほとんどは、上記の対策をとり得る環境にない。実効性の伴わない指針は無意味である。当該箇所の削除を求める。
意見3)
4.新たな利用の取扱い について記述「第5種共同漁業の新たな免許(既存の漁業権漁場において第5種共同漁業の対象魚種として産業管理外来種を追加する場合を含む。)は、行わないことが望ましい。」は、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトへの漁業権の認可を阻害する。
現存する漁業権の切り替え時にもマイナス要因となり、漁業権者数、漁業者数、遊漁者数を減少させる。ただでさえ衰退傾向にある内水面漁業の崩壊に直結するもので、認めることはできない。
4.新たな利用の取扱い は、水産基本計画および内水面漁業振興法へ明らかに反している。水産業の維持・振興・発展を大義とする水産庁の背信行為である。
漁業権にもとづく増殖で、遊漁・観光目的で、ニジマスの成魚放流が各地で行なわれている。これらの放流成魚は放流直後にほとんど釣りきられている。河川に放流されたニジマス成魚が生き残って自然繁殖する可能性は、ほとんどないことを示す水産研究論文が、複数発表されている(加藤憲司など)。ニジマス放流をこれまで通り継続しても、在来種の生息に影響を与える可能性は低い。
「4.新たな利用の取扱い」の削除を求める。
意見4)
1.基本的な考え方 について4.26「意見交換会」で、「産業管理外来種は内水面水産業の振興に資するか」という質問に、「水産庁は漁業振興をやっているし、産業管理外来種も漁業権の中でしっかりやっていく。」という主旨の回答があった。施策が機能しているのであれば、内水面漁業は現在の凋落傾向にない。猛省を求める。
水産庁漁政部企画課「内水面漁業の振興と漁業をとりまく環境の変化に関する研究」(水産経済研究No.54)は、内水面漁業の衰退を指摘して「遊漁者離れを防ぐ(中略)取り組み方が求められる。」とある。今回の指針はこれに大きく反している。
意見1)、意見3)に示した通り、指針は水産業の維持・振興・発展を阻害する。水産庁が水産業の敵に回っている。漁業協同組合、養殖業者、遊漁関係者、管理釣り場の管理者及び経営者から支持をえられない。
種苗放流主体の増殖を軸とした内水面漁業の有り様が生物多様性の観点からは問題視されるだろうと、1980年代から継続して指摘されている(『フライの雑誌』誌、『魔魚狩り』水口憲哉2005)。生物多様性と水産との関係性を整理しないままに放置してきた結果が現在だ。対応に苦慮するのは当然だ。
今からでも遅くない。もう一度水産の本分に立ち戻り、世論を形成し、法令にもとづく新しい概念である産業管理外来種を水産的に適切に扱う指針を提示してほしい。
・・・提出意見ここまで・・・
水産庁産業管理外来種のパブコメ提出期限は、7.14です。
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以下、「産業管理外来種の管理指針(案)」の内容を転記します。
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(案)
平成29年 月 日
水産庁
水産分野における産業管理外来種の管理指針
1.基本的な考え方
「外来種被害防止行動計画」(平成27年3月26日環境省・農林水産省・国土交通省策定。以下、「行動計画」という。)では、産業において利用される外来種について、すぐに利用を控えることが困難な場合には、外来種の利用量を抑制する方法の採用や、生態系への影響がより小さく産業において同等程度の社会経済的効果が得られるというような代替性がないか検討し、利用量の抑制が困難である場合や代替性がない場合は、適切な管理を行う必要があるとしている。
こうした基本認識の下、ニジマス、ブラウントラウト及びレイクトラウト(以下「ニジマス等」という。)については、水産業のみならず地域経済の活性化に広く貢献しているが、元々は我が国の在来種ではなく、不適切な管理の結果、管理地外に逸出した場合は生態系等に被害を及ぼすおそれもあることから、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」(平成27年3月26日環境省・農林水産省策定。以下「外来種リスト」という。)において、「適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)」に位置付け、利用する際の適切な管理を求めているところである。
このため、ニジマス等については、利用量を抑制する方法の採用や、生態系への影響がより小さく産業において同等程度の社会経済的効果が得られるというような代替性がないか、引き続き検討を続けていきつつ、その利用に当たっては、外来種リストの利用上の留意事項の「これ以上の分布拡大をしない」に沿った管理とする必要がある。
2.主な主体の役割と具体的な取組
水産分野における産業管理外来種に特に関わりの深い主な主体においては、水産庁の協力の下、以下に示す取組のほか、相互に連携して、産業管理外来種の利用や管理に関する適切な理解と必要な情報の共有に努める。
(1)漁業関係者
① 漁業協同組合
第5種共同漁業の免許を受けた漁業協同組合には、対象魚種の増殖義務が課せられている。当該漁業協同組合が増殖行為の1つとして産業管理外来種の放流を- 2 -実施するに当たっては、在来種の繁殖保護にも留意する。
また、ニジマスやブラウントラウトは降海して他の河川に生息域を拡大したり在来種と交雑する能力を潜在的に有している実態を踏まえ、関係する都道府県(水産試験場を含む。)及び内水面漁場管理委員会と協力して、対象魚種の分布や再生産の状況、当該漁業権漁場からの移動(地域によっては降海魚の存在を含む。)及び交雑種の有無等に関する情報の収集に努める。
② 養殖業者
産業管理外来種を扱う養殖業者は、当該養殖施設から産業管理外来種が逸出しないよう努めるとともに、生体販売を行う際には、私的放流に利用されることがないよう購入者に対してその用途等を確認する。
(2)遊漁関係者
① 遊漁関係者
遊漁関係者は、原則として、公有水面における産業管理外来種の放流は自粛する。現時点において、公有水面で何らかの放流活動を実施している場合には、当該公有水面を管轄する都道府県や関係する共同漁業権者に相談するとともに、水産試験場等研究機関の助言を得た上で、対応を検討する。
② 管理釣り場の管理者及び経営者
産業管理外来種を扱う管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努めるとともに、私的放流の端緒となる蓋然性の高い生体が持ち出されることがないよう適切な措置を講ずる。
(3)都道府県・内水面漁場管理委員会
① (1)①及び②の者並びに(2)②の者に対し、産業管理外来種の管理に関する取組が円滑に行われるよう適切な指導・監督に努める。
② (2)①により、遊漁関係者から放流活動に関する相談等を受けた場合には、必要に応じて水産試験場等研究機関と連携して、他の水産資源等に与える影響等地域の実情に応じて指導・監督を行う。
③ 調査や研究に関係する部局は、産業管理外来種の分布や生態等に関する知見の更なる把握に努める。
(4)試験研究機関
産業管理外来種の分布や生態等に関する知見の更なる把握に努める。また、産業管理外来種を育種実験等に利用する場合には、当該研究施設から産業管理外来種が逸出しないよう努める。
3.公的規制による対応
以下に該当する場合には、地域の実情を踏まえ、必要に応じて内水面漁業調整規則- 3 –
や内水面漁場管理委員会指示等により産業管理外来種の移植を禁止する等の措置を講ずることとする。
(1)生物多様性の保全上重要な水域がある場合や、北方の高地や湖沼においてレイクトラウトの分布拡大を防ぐ必要がある場合
(2)ブラウントラウトについて、生息水域が拡大し、在来種との交雑種が確認されるなど、水産資源の保護培養上の懸念がある場合
4.新たな利用の取扱い
産業管理外来種の分布域の拡大を招く可能性のある利用に繋がるような第5種共同漁業の新たな免許(既存の漁業権漁場において第5種共同漁業の対象魚種として産業管理外来種を追加する場合を含む。)は、行わないことが望ましい。ただし、個別の状況等に照らし、その是非を慎重に検討する必要があるため、各都道府県におかれては産業管理外来種の新たな利用に関する問合せがある場合には、事前に関係研究機関等と十分に相談するとともに、水産庁資源管理部漁業調整課に連絡することとする。
5.その他
水産庁は、関係機関や上記に示した各主体と連携して、引き続き、産業管理外来種を巡る状況の把握に努め、適時、必要な対応を検討していくこととする。
・・・・・転載終わり・・・・・