帽子を忘れたという厨坊に、トランクに入っていたわたしのキャップを貸した。
すると、「うわ、なにこれ、超かっこいいじゃん。欲しい、ちょうだい!」とはげしく食いついて来た。
この子にしては珍しい好反応だ。
もちろん「だめ。」と即答した。
このキャップは今から20数年前にイエローストーンへ釣りに行ったとき、クレイグ・マシューズさんの店で買ったやつだ。
次の年はボブ・ジャクリンさんの店のキャップも買った。レジでお金を払うと、「で、おれのサインどこに書く?」とボブさんがにっこにこだった。
いらないとは言えない。目立たないツバの裏にお願いしたら、手慣れてる感じでササッとマジックを走らせた。
「はいどうぞ。釣れるといいね。」
20代の頃に行っておいてよかった。
スリーマイルは爆発済み、湾岸戦争の後、9・11が起きる前のアメリカだった。


○天国の羽舟さんに|島崎憲司郎
○〈SHIMAZAKI FLIES〉シマザキフライズ・プロジェクトの現在
○連載陣も絶好調
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『フライの雑誌』第113号
本体1,700円+税〈2017年11月30日発行〉
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