第113号の編集後記に、「フライの雑誌社は今後単行本の出版活動へ力を傾けます。『フライの雑誌』は不定期刊にします」というようなことを書いたところ、思ったよりも大勢の方々に心配してもらったり、応援の声をいただいています。
実は今までも季刊といいつつ年に3冊くらいの発行ペースでした。「不定期刊の今後も、年に3冊くらいの発行を目指します。」と付け加えるべきでした。
編集後記は、ながいながい編集作業の闘いのさいごに、ヘロヘロの状態で書いています。いきおい、今回のように不注意な表現だったり、妙にけんかごしだったり、必要以上にハイテンションだったりと、不安定なのが特徴です。
ご心配をおかけしてすみません。
これからは編集後記は編集作業の最初に書きます。
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神戸の世界一のクリスマスツリー → アスナロ → あすなろ白書 → アスナロの別名はヒバ → ヒバ白書 → ヒバと言えば青森のヒバの森に棲んでいると言われているヒバゴン → ヒバゴンって今どうなってるのかな → ググってみた → ヒバゴンって広島県の比婆(ひば)郡出身だったのか! ずっと青森出身だと思ってたよ! ← いまここ
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「現代思想 12月号 特集*人新世――地質年代が示す人類と地球の未来」をまじめに読んでいる。小春日和のひざしが入る縁側に寝っころがって一ページ、一ページを鉛筆片手にめくっていく。巻頭の中村桂子さん、〝「人新世」を見届ける人はいるのか〟に始まって、各分野のゴツい人々がてんでに語っている。いやあ面白い。
なかで、水口憲哉さんが〝人新世の相互扶助論〟と題して、日本各地での反原発のたたかいのつながりを書ききっている。地質学と関係ないように見えて、人新世の議論のど真ん中で水口節が炸裂している。この文章を書ける人は水口さんのほかにいない。「フライの雑誌」の記事も紹介されている。
人新世をきっかけに、個人が自由に生きるための相互扶助、利他主義をかんがえた。相互扶助とか利他主義の極北に位置しつづけたのが葛西善蔵だったよなあとも思う。
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トランプ大統領がユタ州の国定記念物保護地域を大幅縮小とのニュース。環境系釣り人団体トラウト・アンリミテッドがこれに異議を唱えたら、「そりゃ違うよ」の声多数で珍しく炎上している。
魚は国民の共有財産で州の管理下にある米国と、無主物扱いの日本の違いもあるのかニュアンスが今ひとつ分からない。釣りが政治と無関係ではいられないのは彼我とも同じ。
日本では釣りの所管は水産庁。水産庁はダムや大規模開発による水辺の破壊について、あるいは原発事故の被害について、釣り人のために何かやっているか? 何もやってないし、期待もされてない。
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竹宮惠子さん『風と木の詩』が、電子ブックで今だけなんと全16巻無料で読み放題だ。すごいことだ。
風木(と呼んでいた)は、中学一年生のときに、同級生女子のコナツさんが突然、「ホリウチくんこれ読んでみて。」と全巻貸してくれて読んだ。衝撃的だった。
今ならコナツさん腐女子か。
コナツさん、なんでおれに風木読ませたんだろう。
13歳だった。
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高校のとき、ある晴れた日の朝の教室で、同級生T君が近づいてきて、うれしそうに話しかけてきた。
「なあお前、〈翼の折れたエンジェル〉で〝Seventeen 初めての朝〟は初体験だろ。じゃあ〝少しずつ ため息おぼえたEighteen〟は分かるか? (声をひそめて) あれはな、堕ろしたんだ。」
そうだったのかとわたしは納得した。
男子校だった。
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このたび、その筋の専門家の先生からADHDの診断を受けた。同席のライター氏は、「あなたはASDですね」と言われていた。ADHDの編集者とASDのライターがタッグを組んで作った、何号か前の「フライの雑誌」はとても評判がよかった。
「編集後記のおわび」から「世界一のクリスマスツリー」、「ヒバゴン」、「現代思想」、「葛西善蔵」、「トラウト・アンリミテッド」、「風と木の詩」、「翼の折れたエンジェル」に行って、戻ってこないとりとめのなさも、脳の多動性の発露と思えば愛おしい。