北海道からくまが来ました

先週末の二日間、北海道からくまが来た。「釣道楽」という世にも珍しい、とても美しい雑誌をつくっている。ちょっと発行を休んでいたが今年の夏に最新号を出す。不屈のくまだ。くまだけあって特技は「利き鮭」だ。

このくまは人間の姿をしている時にダブルハンドロッドのディスタンス競技で日本チャンピオンになったこともある。「フライの雑誌」第106号から第109号まで連載してくれた「本流の[パワー・ドライ] Power Dry Flyfishing ビッグドライ、ビッグフィッシュ」はくまらしく豪快だった。多くの反響もあった。

くまの人間名を坂田潤一という。

初日、国分寺を歩くくま
浮間舟渡のHIRANO大明神詣で。昔日のバス釣り書籍を教えてもらう。このあと大明神とくまとわたしの三人(人なのか?)でご会食。お寿司と中華をハシゴ。楽しかったな。
二日目、蕨市をくまとあるいた。
銀座を歩く巨大生物。異様。10数年前に東京へ来たときは、ただでさえ目立つのに、歌舞伎町のこわい兄さんたちに端からガンを飛ばすので気が気ではなかった。本人によると「ガンなんて飛ばしてないよう。マーキングはしてるけど」。どっちもやめてください。
くま秘蔵、1982年発行の「別冊フィッシング」。ここに載っていた島崎憲司郎さんの「水中思考」を日高の山中で読んで、まだ10代前半だった早熟のくまは衝撃を受けた。そして今につづく。たぶんくまがその時にこれを読んでなければ、10数年後に『フライの雑誌』に書くこともなかったし、わたしと会うこともなかった。
くまと別れたあと、わたしはつり人社さん発行の単行本新刊「日本のフライフィッシング史」出版記念パーティへ参加。闘病中のため残念ながら今日は出席がかなわなかった同書編集者の若杉隆さんからのビデオメッセージにつづいて、来賓として島崎憲司郎さんがスピーチ。これ以上ない心強いエールを若杉さんへ贈った。こういう時に口にする言葉に、人間の心の温性がにじみでるものだ。憲司郎さんの後を受けた康友さんが涙ぐんでおられた。逆にこの日、高い壇上から下々の者を睥睨するような態度でマイクを握った某氏の挨拶は縁起でもなく、ひどかった。関係ないわたしが義憤にかられたほどだ。びっくりした。会場にいた知り合い数名に意見を求めたところ、皆さん苦笑いするか、呆れているか、わたしと同じように怒っているかだった。写真は壇上左から、同書編集委員の鈴木康友さん、大木孝威さん、山城良介さん、霜田俊憲さん、柴野邦彦さん。
編集委員の大木さんがわざわざ話しかけてくださって、「『フライの雑誌』は読んでます。『フライの雑誌』の〈日本フライフィッシングの軌跡〉はもちろん意識しましたが、剽窃は一切していません。」とにこやかに仰ってくださったのが、とても爽やかだった。フライフィッシング界隈で著名な大木さんは、相当だめなレベルのプロレスマニアでもあると身バレ。今度プロレスの話を教えていただこうと思う。雑誌「フライフィッシャー」黄金期を創りあげた若杉隆さんのことだから、じきに現場へ復活されて剛腕をブンブンと振り回すに違いない。僭越だがまた仕事上でけんかさせていただきたい。体育会ノリのつり人社さんのいいところが溢れているパーティだった。
パーティからのひとりの帰り道、ササノさんで買ったちっさいフライリールをがまんしきれなくて電車のなかで取り出し、「おお、最近のリールはよく回るのう」と愛でているところ。約2時間後、「いま札幌着いたよー。いろいろあんがとねー。」というくまからのメールが届いた。あんがと、だとう? きみはわたしと同い年だと思っていたが、本当は3歳くらいだろう。
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