ポール卿といえば、自分が高校生のころはニュートンかコペルニクスみたいな歴史上の偉人のイメージだった。いま来日してるよドーム来てね76歳ですとテレビで言っているのを聞いて、(ポール、おれとトシあんま変わんなかったんだな)と思っちゃった。だからこそ偉人なのだ。
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「オイカワの体長がもし1mあるとするとスチールヘッドよりすごい。水面を走るフライを狂ったように追いかけてくる追星ガツガツのオイカワ。いやお前はすでに虎だ。近所の川の水面に今日も嵐が吹き荒れる。わたしは虎ハンターだ。小林邦昭だ」
(オイカワは水面の虎である 第115号)
第115号に書いたこの一節が自分でけっこう気に入ってる。小林邦昭は無理筋だったかもしれないが、〈虎ハンター〉のひとことを入れたいがためにあの記事を書いた。
今日で四日連続、オイカワ釣り。夏の釣りとは全然違って、水面がらみの繊細な釣り。同じ川の上流で小さいオイカワを狙っているしみずさんの真似をして、今シーズンの目標は一寸オイカワにした。しみずさんの記録は24ミリのオイカワだそうだ。
しみずさんは一人で地道な研究を重ねてきた結果、ちいさいのを狙って釣るのには色々とそれなりのコツがあることを知ったのだといばっている。まったくばかとしか言いようがない。ぼくらの仲間で「彼はばかとしか言いようがない」というのはもちろん最上級の誉め言葉だ。互いに「君はばかだな」「いやいや君のほうがもっとばか」と言い合って喜んでいるのだからどうしようもない。
自分もだんだんわかってきたが、小さいオイカワを釣るためにはフライサイズをただ小さくすればいいというものではない。しみずさんはそのあたりわたしのずっと前を走っている風である。
フライサイズを小さくすればいいわけではないと言っても、やはりこの季節の小さいオイカワのドライフライフィッシングではフックサイズ20番以下がマストになる。ウエットの釣りならもう少し大きいのも使えるが、ここは水面の釣りのちいさいハリのちいさいサカナにこだわりたい。
いいトシして世間様へのなんのお役にもたたないこんな生産性の低い狭くてちいさい釣りのことばかり日々考えて実践しているなんて、まったくわたしはばかとしか言いようがない。眼が頭が心が痛い。
フライフィッシャーは基本マゾ。

いちいちバーブを潰すのが困難を極める。前から主張しているがフックメーカーは20番以下のバーブレスフックの種類をもっとたくさん出してほしい。ミッジサイズはぜんぶバーブレスのほうがいいんじゃないですか。

昨日巻いて釣りしていまいちだったフライたち。フライフィッシングの世界ではこれくらいではちいさいとは言わない。

昨日の結果を受けて今日新たにフライを巻く。毎日釣りすると毎日進化する。

オッケー、昨日よりは反応がいい。景色が変わりばえしないので竿を変えてみた。

ライズしているのはこのサイズがほとんど。フライには出るがなかなかフッキングしない。

でかすぎ。もっとちいさいのを釣りたい。

でかすぎ。大きいお友だちは遠慮してくださいねと言っているでしょうに。

115号の読者カードにうれしいご感想をいただいた。単行本の注文ももらった。二重にうれしいのでよく釣れる毛を少しだけ、勝手に本と一緒に送った。本と一緒に毛が送られてくるとふつうの人はびっくりするだろうけれど、うちの読者なら喜んでくれるに違いない。「フライの雑誌」の編集部として正しい行為だと確信している。




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