過日、九頭竜川のサクラマス釣りで不幸な事故がありました。釣りの事故による釣り人の訃報には、胸が詰まります。どこの釣り場でも、いつでも、いくら注意しても事故は起きます。それゆえに、できる限り装備を整え、危険回避のための知識をもちましょう。
『フライの雑誌』の第42号(1998)では〈特集◎ウエーディングの安全性を考える〉を組みました。21年前の記事です。昔も今も安全なウエーディングのために注意するべき基本事項は同じです。
もう二度と悲しい事故が起きないことを願って、特集の一部を公開します。
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ちなみに本特集の企画を提案したのは、当時アルバイトで編集を手伝っていた堀内です。まだ二十代でした。編集長の中沢さんがめずらしく素直に企画を通してくれて、うれしかったです。とくに、ウエーダーを履いたままの水没実験をいたくお気に入りのようでした。さっそく実験しよう、なんでも試してみないとね、ということになりました。
中沢さんとKさんとHさんの三人で、近郊の渓流へ出かけました。春まだ浅き、寒々とした、しかし滔々と水の流れる岸辺で、中沢さんが言いました。
「じゃあホリウチ君、流されてみて。」
え、おれ? と思ったのを今も覚えています。たしかに、水没実験である以上、誰かが流されなければなりません。企画者で、いちばん年下のわたしがその任務にあたるのは道理です。ですが、その時になるまで、わたしはまさか自分が流れるのだとは、全然思っていなかったのでした。ばかなことに。「中沢さんが流れてくださいよ」とは言えないし。そりゃそうだよな。
「大丈夫、ちゃんと受け止めてあげるよ。」
二つの落ち込みと長くて深い瀬をこえた、そんなに遠くなくてもいいのにと思うだいぶ下流で、スタンバイしたKさんとHさんが、ニコニコ笑いながら両手をひろげています。中沢さんを見ると、すでに冷たい観察者の視線です。もう逃げられません。わたしは観念して、ズブズブと冷たい流れへ膝を折って入水するしかありませんでした。
水がウエーダーの中へ一気に入ってきました。…
18頁からの[実際にウエーダーを履いて転んでみました]は、そんな命がけの実験の成果です。
21頁に、「安全なウエーディングのためのポイント」というまとめがあります。いまここへプラスするなら、●膝より上にはウエーディングしない。●浮力体を身につけるか、防水リュックなどを背負う。●もし濡れてしまったら焚き火などでできるだけ体を温める。そしてなにより、記事中にもありますが、●無理なウエーディングはしない。につきると思います。
釣れても釣れなくても、無事に家へ帰ってくるまでが釣りです。
安全第一で楽しい釣りを。
✳記事中のメーカー情報、広告情報は当時のものです。現在とは異なっている可能性があります。ご注意ください。
フライの雑誌-第42号 特集◎ウエーディングの安全性を考える(1998)
「フライの雑誌」第42号(1998)
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