池を作ろうと思う。59 さようならヒレナガゴイ

2013年の3月、初めて池を作ろうと思った。それからすったもんだ色々あった。べつに頼んでないのに近所の子供が体長10センチくらいのヒレナガゴイの子供を連れてきたのが2013年の6月。ヒレナガゴイはすぐさま池のボスに居座った。

川からとってきてせっかく入れたエビをぜんぶ食べるとか、かわいいメダカを追いかけ回して全部吸うとか、底の泥を常に引っかき回すとか、わりと悪逆非道のかぎりを尽くしてくれた。放置して勝手にエコサイクルが回ってくれる平和なアクアテラリウムを作りたかったこちらの目論見は、たかがヒレナガゴイ一尾のために台無しとなった。

昨今ごく一部の魚類オタクが旗を振って、〈コイは外来魚です! 日本の生物多様性を破壊します!〉と騒いでいる。だからなんだよ、まじばかみたい、くっだらなーいと思う。生物多様性大事を言うなら他にもっとやるべきことあるでしょうに。言ってることがオタッキーで極端すぎるために、世間から相手にされていないのもおかしい。ただまあうちの池の現状を考えてみれば、ほんのちょっと分からんでもない。ええ、うちの池の生物多様性はコイで無理です。

とはいえいいかげん、ここ最近はこっちももうあきらめていた。ヒレナガゴイがうちの池に来たのも前世からのご縁かもしれない。まあせいぜい大きくなって、我が世の春を謳歌してくれ。金魚を食べなければがまんしよう。

うちの池に来て6年弱、昨日、そのヒレナガゴイの姿が消えた。

たぶん、時々うちの池のほとりにやってきて、いかにも食べたそうにしていたトリに、食べられたんだと思う。餌やりをひかえめにしていたけれど、ヒレナガゴイは6年間で倍以上の体長に成長していた。トリにはちょうどいい食べ頃に育っていたのだろう。トリ、住宅街の真ん中にあるこんな小さなうちの池に来るなよ。川がすぐそばにあるじゃないか。

ああこんなことなら、ヒレナガゴイが食べたがる分だけ、餌を食べさせてあげればよかった。あいつはいつだって食べたがっていた。かわいそうに。なんで餌を存分にやらなかったんだろう。わたしはひどいやつだ。まさか突然、お前がうちの池からいなくなるなんて思っていなかったんだ。

今思えば君は美しかった。ヒレが長くて。人間が勝手に品種改良した結果の自分の身体を、君はどんな風に感じていたんだろう。

君はペットショップの水槽から、近所の子供に連れられて、うちの池に来たのだった。養魚場とペットショップの水槽とうちの小さな池しか知らずに君の生涯は終わった。

フライの雑誌-第116号 小さいフライとその釣り 隣人の〈小さいフライ〉ボックス|主要〈小さいフック〉原寸大・カタログ 全88種類|本音で語る〈小さいフライフック〉座談会|各種〈小さいフライフック〉の大検証|〈小さいフライ〉の釣り場と釣り方の実際|〈小さいフライ〉エッセイ 全60ページ超!
70年ぶりの漁業法改変に突っ込む|もっと釣れる海フライ|新刊〈ムーン・ベアも月を見ている〉プレビュー掲載
第116号からの【直送便】はこちらからお申し込みください 2019年2月14日発行

[フライの雑誌-直送便] 『フライの雑誌』の新しい号が出るごとにお手元へ直送します。差し込みの読者ハガキ(料金受け取り人払い)、お電話(042-843-0667)、ファクス(042-843-0668)、インターネットで受け付けます。第116号は2月14日発行

「ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線」

ムーン・ベアも月を見ている クマポスター
ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線 山﨑晃司著

ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマに学ぶ 現代クマ学最前線 山﨑晃司著

フライの雑誌 第115号 水面(トップ)を狙え! 水生昆虫アルバム〈BFコード〉再考 | ゼロからわかる 漁協ってなんだろう 表紙写真 岩谷一
フライの雑誌-第114号特集1◎ブラックバス&ブルーギルのフライフィッシング 特集2◎[Shimazaki Flies]シマザキフライズへの道1 島崎憲司郎の大仕事 籠城五年
フライの雑誌 113(2017-18冬春号): ワイド特集◎釣り人エッセイ〈次の一手〉|天国の羽舟さんに|島崎憲司郎
○〈SHIMAZAKI FLIES〉シマザキフライズ・プロジェクトの現在AMAZON
フライの雑誌-第112号 オイカワ/カワムツのフライフィッシング(2)
フライの雑誌-第111号 よく釣れる隣人のシマザキフライズ Shimazaki Flies
フライの雑誌社の単行本新刊「海フライの本3 海のフライフィッシング教書」
島崎憲司郎 著・写真・イラスト「新装版 水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW」
〈フライフィッシングの会〉さんはフライフィッシングをこれから始める新しいメンバーに『水生昆虫アルバム』を紹介しているという。上州屋八王子店さんが主催している初心者向け月一開催の高橋章さんフライタイイング教室でも「水生昆虫アルバム」を常時かたわらにおいて、タイイングを進めているとのこと。初版から21年たってもこうして読み継がれている。版元冥利に尽きるとはこのこと。 島崎憲司郎 著・写真・イラスト 水生昆虫と魚とフライフィッシングの本質的な関係を独特の筆致とまったく新しい視点で展開する衝撃の一冊。釣りと魚と自然にまつわる新しい古典。「新装版 水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW」
『葛西善蔵と釣りがしたい』(堀内正徳)
『葛西善蔵と釣りがしたい』