五日前、羽田空港へ向かうわたしは、どうひいき目に見ても、釣り竿っぽい長いものを抱えて、でかいカバン(長靴入ってる)を重そうに引きずり、鈍行のモノレールの窓からどよんとした運河を眺めている、ただのくたびれた冴えない釣りのおじさんだった。だけど心中は最高潮にウキウキワクワクテカテカしていた。大物釣るぜと。
毎日地元でオイカワ釣って、小菅だの会津だの日帰りしてイワナやヤマメ釣って、北海道行って朝から晩まで川を歩いてマス釣って、帰ってきたその日からオイカワ釣って、釣りにはまったくきりがない。今日も明日も死んでもずっと釣りしたい、ああ、どうしよう。
というようなどうでもいい懊悩が『葛西善蔵と釣りがしたい』には書いてあります。
「ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線」