北海道からクマがきた。

北海道からクマがきました。

東京はわからない、東京はこわいところだとクマが言うので、クマ穴にした大塚へ、わざわざ迎えに行ってあげました。

そこからクマを連れて、アメ横練って、浅草でどぜう食べて、阿佐谷で金魚釣って、銀座でお茶をしました。

クマは喜んで北の森へ帰っていきました。

「楽しかった! あんがと! 空港で〝ひよこ〟たくさん買ったよ!」

あとでかわいい絵文字付きのLINEを送ってきました。

クマのくせに。

またおいで。

クマとどぜう。二鍋目。

どぜう唐揚げ。唐揚げもうまいな、とクマが言った。

大川からスカイツリーをながめる。「東京にも釣り人いるんだねえ」。あたりまえでしょうにこのクマが。おじさんに話しかけたら落ちハゼ狙いだって。

クマと上野駅。「東京はこわい」とクマがつぶやいた。なにがこわいんだい。「人が多い」。そうかそうか。うっかり町に出てきて駆除されるなよ。

仲見世通りでクマは一匹二千以上もする招き猫を色違いで二つも買っていた。「シーサーみたいなもんだから。守り神。色にも意味があるんだよ」だそうだ。ふうん、よくわかんないの。自分もつい買った。どうすんだこれ。本棚に置いた。

金魚の釣り堀。以前、オホーツクの男は「北海道には金魚を釣る文化はないです!」と断言していた。

「金魚釣りって、なんだかイケないことをしているみたいだ」とクマは言った。ふだんさんざんサケ・マス獲ってるくせに。

銀座で幸せなコーヒー。クマができるだけ邪魔にならないようカウンターの端に座らせたが、巨大すぎるため、それでも通行を妨げていた。

クマは〝ひよこ〟が大好き。糖尿大丈夫か。

クマがつくっているこだわり雑誌『釣道楽』の次号は来年3月発売予定です。

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