「フライの雑誌」第108号特集2◉日本の[スチールヘッド](2016年4月5日発行)から、〈遊漁用ニジマス「ハコスチ」って何だろう。本当によく引くのか、ハコスチを釣ってみた〉を公開します。
特集2◎日本の[スチールヘッド]
〈夢の魚〉を追いかける仲間たちの熱くてまっすぐなストーリー
日本のスチールヘッドを追いかけて 奥田巌啓
海でライズする「ニジマス」/狙うはウインターラン/魚に負けた/
同じ目標を追いかける仲間たち/何かが足りない、それは/
仲間と同じ志を持つ喜び/勝手に涙があふれてくる
スチールヘッドの定義とは何か?
ニジマスよ、海を目指せ
「ハコスチ」って何だろう
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report
遊漁用ニジマス「ハコスチ」って何だろう。
本当によく引くのか、ハコスチを釣ってみた
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本誌第95号特集◎〈オトナの管理釣り場〉の読者アンケートでは、楽しいフライフィッシングを楽しめる釣り場の条件として、「きれいな魚」「美しい魚」「よく引く魚」がいることが挙げられた。
よりレベルの高い釣りを求めるフライフィッシャーは、魚の数よりも質を求める傾向が強い。管理釣り場ではもちろん、一般の渓流・湖の釣り場ではなおのことだ。
群馬県はマス類の管理釣り場の数が全国一だそうだ。海なし県の常として、群馬では川と湖の釣りが盛んだ。マス類の内水面養殖業は群馬県の重要産業になっている。
群馬県水産試験場ではコイ、フナ、タナゴ、アユ、マス類などの淡水魚を多く飼育している。美味しくてヘルシーな食用のブランドニジマス「ギンヒカリ」は、群馬水試が作出した地元特産品として人気だ。
群馬水試川場養魚センターは、ギンヒカリに続くブランド魚を作る目的で、姿形の美しさと、引きの強さを同時に満たす、遊漁用に特化したニジマスを開発した。2016年1月に〈ハコスチ〉という名で商標登録している。
〈ハコスチ〉は、群馬水試旧箱島養鱒センターで継代飼育したヒレのきれいな形質を持つニジマス(箱島系)のメスと、引きの強いスチールヘッド系ニジマスのオスをかけ合わせた魚だ。
※この「スチールヘッド」の出所を編集部がたどったところ、群馬水試は1987年に水産庁日光支所から導入していた。日光支所は北海道立さけますふ化場から導入し、道立ふ化場はカリフォルニアの養魚施設から導入した、ところまでは分かった。その先は記録がなかった。
川場養魚センターさんに伺ったところ、〈ハコスチ〉のオス親となるスチールヘッド系のニジマスは、外見的には銀色で、少し細長い傾向がある。ウロコは剥がれやすい。
〈ハコスチ〉の特徴として、「引きの強さ」、「姿形の良さ」、「飼育しやすさ」、「釣りやすさ」が挙がる。引きの強さは水試が独自の興味深いシステム(下図)で実証している。
「釣りやすさ」については、エサへの食いつきはいいが擬餌バリでは釣りにくい、ということらしい。
たいへん面白い。
現在、〈ハコスチ〉は群馬漁協管内の利根川、上野村漁協管内の神流川へ試験的に放流されている。釣り人からの評価は高い。普通のニジマスの3倍引いたという声もある。シャア専用ザクを連想させる。
〈ハコスチ〉と通常のニジマスとの外見での区別は難しいのことだ。釣ってみなければ分からない。ならば釣ってみようということで、編集部が実際に釣ってみた。チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ。
(編集部/堀内)