中禅寺湖レイクトラウト資源尾数が明らかになりました!
レイクトラウトの資源状態を明らかにするため、2016年に標識再捕調査を実施しました。遊漁者の皆様には標識作業や釣果・再捕報告にご協力いただきました。ご理解・ご協力くださいました遊漁者や関係者の皆様にお礼申し上げます。
【結果概要】
・2016年の東側通常解禁区におけるレイクトラウトの資源尾数は
7,134尾(3,053尾~11,215尾)と推定された
・西側禁漁区を含めた湖全体の資源尾数は推定できず
・原産地カナダの湖沼と同程度の資源水準に達した見込み
レイクトラウト
Lake trout : Salvelinus namaycush
・北米大陸に広く分布するイワナ属
・1966年にカナダオペオンゴ湖から中禅寺湖へ移植 ※水産庁. (1987). 外国産新魚種の導入経過.
・国内では中禅寺湖にのみに生息釣獲状況
・1990年代以前は釣獲率が低く、なかなか釣れない魚種
・一方で近年ではサケ科魚類の中で最も釣獲率の高い魚種
⇒資源尾数が増加傾向にあるものと推察される資源の利用と管理
・平成26(2014)年:中禅寺湖漁業協同組合「漁業権魚種」として利用
・平成27(2015)年:環境省・農水省「産業管理外来種」に指定
・平成29(2017)年:水産庁「産業管理外来種の管理指針」を策定資源の利用や管理を行うためには資源状態の把握が重要(既往の知見なし)
⇒そこで、資源尾数の推定を試みた
生息密度
・1,026尾/km2 ・1,241kg/km2※
※平均魚体重1,210g/尾
※本調査における資源尾数とは、“生息尾数”ではなく、“釣獲資源尾数”という解釈が妥当
(調査手法の特性からルアー・フライによる釣獲対象サイズ・個体に限定されるため)
本調査によって初めてレイクトラウトの資源状態が明らかになりました
■ レイクトラウトは重要な遊漁対象資源ですが、産業管理外来種に指定されており、資源の利用と管理について考えていく必要があります
■ 研究機関・漁業協同組合・遊漁者の協働によって調査が実施されたことは大変意義深いものであると感じております
■ 関係者の方々につきましては、調査へのご理解ご協力を賜りましたこと、この場をお借りして深く感謝申し上げます
調査にご協力いただいた皆様
北海道大学大学院水産科学院 芳山拓博士
国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所 坪井潤一博士
国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所 山本祥一郎博士
中禅寺湖漁業協同組合の組合員並びに職員の皆様
中禅寺湖調査サポーターの皆様
釣果報告にご協力いただいた遊漁者の皆様
調査協力ポスターの掲示にご協力いただいた釣具店様
編集部から:
水産試験場、遊漁者、漁協、遊漁関連事業者、水産研究者の協働の上になりたった先駆的な調査と、その素晴らしい成果だ。
中禅寺湖の漁業権魚種であるレイクトラウトは、漁協組合員による販売目的の漁業が行われていない。事実上遊漁者による「釣り」でのみ利用されている水産資源である。中禅寺湖にしかいないレイクトラウトを求めて、日本全国から釣り人が集まってくる。レイクトラウトの釣りが栃木県経済の発展へ寄与していることは明白だ。
上記資料文中にあるように、「資源の利用や管理を行うためには」まさに「資源状態の把握が重要」である。漁場利用のレギュレーションを定める際、本来なら資源量の把握は大前提になる。資源量の少ない河川湖沼ではなおさらだ。
ところが日本の内水面漁業行政は、漁場計画の立案時に資源量の把握を求めていない。その川、湖、沼にどれだけの魚がいるのか分からないままに、増殖計画がたてられ、認可される現実が長年続いている。ゲームフィッシングの先進国である米国では公的機関がリードして資源量を調査し、運用に反映している。
中禅寺湖では福島原発事故の放射能汚染による漁業制限が長く続いている。今回の調査の実現には、関係者の期待と注目度の高い中禅寺湖ならではの背景があると考えられる。
今後は中禅寺湖の特例ではなく、各地のほかの漁場でも、水産資源量を科学的に推定したのちに、レギュレーションを策定するという流れが、当たり前になっていくべきだろう。
水産資源量の調査は各都道府県の水産試験場の専門分野だ。新たな人員と財源の担保も必要になるだろう。よい釣り場の持続のために遊漁者は応援する。
(フライの雑誌編集部・堀内)
以下、画像はすべて栃木県水産試験場の資料から。ぜひリンク先へ飛んでほしい。