『980円の竿で始める魚釣り! 東京近郊釣り場ガイド』(つり人社刊/野口哲雄著)という本が出版された。著者はサンスポの釣り欄デスクを務めた名物釣り記者。「釣り記者生活30数年、その間、ずいぶんと色々な魚に出会ってきた。仕事の一環で仕方なくやったものもあるが、やってみてつまらないと感じたものはなかった。」と語る。
表題が軽ーい感じだし、副題はいかにも情報屋さん的なド直球で、カバーもがちゃがちゃしたデザインなので、とても大人の読書には耐えられないのではと思った方には、そこを曲げて手にとって、本書のページを開いて欲しい。
筆者は子ども時代の釣りの想い出を下敷きに(ALWAYSっぽいのは世代か)、釣り記者ならではの豊富な人間関係と裏情報を織り交ぜ、今東京近郊で手軽に楽しめる釣りのあれこれを自由闊達に紹介する。ところどころに見え隠れする社会時評風の語り口も嫌みがなく、一級のエッセイだと言える。ポイント図も仕掛け図もばっちり載せましたという体裁に、拒否反応を示すロマンチストの読者もいるかもしれないが、この文章ならば一冊で二度美味しいくらいに考えたっていい。
筆者は「おわりに」でこう書いている。
『釣りって、本当に面白いよなあ。』。ある時、親父が満面の笑顔でそう言ったのを今でもハッキリ覚えている。親父は、尋常小学校を出るとすぐに就職。57歳で町工場を定年で辞めるまで、趣味と呼べるものは日曜日にたまに買う馬券くらいのものだった。定年後、小生が釣りに誘った。(中略)今の子供たちに一番必要な遊びは、間違いなく“魚釣り”だと確信している。そして、無趣味を通してきた私と同年代のおじさんたちにも『人生を楽しくしてくれる遊び』だと訴えたい。小生の親父がそうであったように、人生の後半をぜひとも楽しんで欲しいと思う。
73歳で逝った父親の棺桶に、筆者は父親の愛竿と自分の大事にしていたマブナ竿を入れたという。折しも教育テレビで、あのなつかしの服部名人が元巨人の角投手に様々な釣りを教える番組が人気放映中である。親が子を教えてるようなものだが(失礼)、二人とも楽しそうに魚を釣っている。そして回が進むごとに角投手の竿捌きが上手になっていく。父子で楽しむ趣味として、本当に釣りは最高だ。
自分があと何年釣りを楽しめるか、それが分かる人は一人もいない。釣れなくなるときまで釣りしようっと、という気にさせてくれる一冊だ。
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フライの雑誌 125(2022夏秋号)
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Flyfishing with kids.
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子供と大人が一緒にフライフィッシングを楽しむためのコツとお約束を、子供と大人で一緒に考えました。お互いが幸せになれるように、子供が子供でいられる時間は本当に短いから。
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