「フライの雑誌」第86号 (2009年)から、〈竿をつくるしごと 2〉を公開します。
竿をつくるしごと 2
高い竿は作りたくない。イヤなんです。
しずかに、ひっそりと
藤塚利男さん
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藤塚利男さんが「シーズロッド」として立って今年で丸10年。都内にある藤塚さんの工房へ久しぶりにお邪魔した際の会話の中で、そうと気づいた。
開業時から小誌に広告を出してくださっているのに、節目の年を失念しているとは不義理きわまりなく恐縮した。だがご本人はまったく気にする風もない。
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〈そのバンブーロッドは、なんともいえぬ輝きをしていました。しかし、聞くと、友人はそのバンブーロッドで釣りをしたことがないと云うのです。(中略)私が、バンブーロッド・ビルダーになろうと決めたのは、その時です。〉(シーズロッドカタログより)
バンブーロッドは道具である。これがシーズロッドのコンセプトだ。〈1トップで5万円と少し〉が藤塚さんが決めた道具としての価格の基準だ。
「お金のために作っているととてもじゃないですが、ぼくは竿を作れません。」
プロとアマの違いは、セルフ・プロデュースをできるかできないかにある。その点、藤塚さんには自分をプロデュースしようという意志がない。「お金のためじゃ作れない」と言うプロはそもそも矛盾しているのだが。
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「高い竿は恥ずかしい。安くて、このロッドはいいと言われるのがかっこいいと思うんです。」
欲がないというかこの謙虚さ、含羞の根っこは何なのか。藤塚さんがクリスチャンであることが関係しているのかもしれないと、前から思っていた。今回そう伝えるとすこし意外そうな顔をした。
そして新約聖書の一節、〈And that you study to be quiet, and to do your own business, and to work with your own hands, as we commanded you.〉(つとめて落ち着いた生活をし、自分の仕事に身をいれ、手ずから働きなさい。)を教えてくれた。
「自分の好きなことを仕事にできている。竿を使ってくださるお客様が喜んでくれる。そのことに感謝してしずかにひっそりと、落ち着いて仕事をしていきたんです。」
取材日、川沿いの工房は室温30度超。暑くてすみませんねと言いながら、頭にタオルを巻いた藤塚さんは竹を削っていた。
バンブーロッドには作り手と使い手、双方の思い入れが交錯する。ビルダーが汗水を垂らしながら精魂こめて削ってくれた竿なら、使う側の気持ちにも当然影響してくると思う。
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以前、本誌誌上でもすこし紹介したが、毎日新聞の『フライフィッシングに挑戦したい』という企画に協力したことがある。フライロッドなんか見たこともない8歳の女の子の前にセットしたタックルをずらりと並べて、「この中から振りやすいのを選んでみて。」とお願いした。
端から手にとってぷんぷん振っていった彼女が、「これがいい。」と差し出したのは、6・8フィートのシーズロッド#3だった。その竿を使って彼女は15ヤードのラインを出し、大きなマスをいくつも釣った。忘れられない光景だ。 (堀内)
「私は仏頂面なんで、営業しようと思っても無理なんです。」 もっと外部へアピールすることを考えたらいかがですか、と余計なことを言った私に、ビシッと言いきった。それでも設立10周年を機にホームページをリニューアルした。記念モデルも出す。 「感謝をこめて値段を安くします。」 普通は高くなるところだが…。 この写真でも明らかなように、たしかに藤塚さんは迫力のある顔をしている。そんな藤塚さんがほんのたまに笑うと、これがむやみにかわいいことを付け加えておきたい。
シーズロッド
フライの雑誌-第86号 特集◉辺境を釣る(品切れ)
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イワナをもっと増やしたい! 「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法 イワナとヒトが長くつき合っていくために 中村智幸(著)
身近で奥深いオイカワ/カワムツ釣りを一冊にまとめました。『身近で楽しい! オイカワ/カワムツのフライフィッシング ハンドブック 』
書籍版品切れです。増刷の問い合わせをいただきます。私どもの規模では500部の行き先が見えていれば重版なのですが、その500部が剣ヶ峰です。電子版でお楽しみください。
フライの雑誌社では、ここに来て日々の出荷数が増えています。「フライの雑誌」のバックナンバーが号数指名で売れるのはうれしいです。時間が経っても古びる内容じゃないと認めていただいた気がします。そしてもちろん単行本も。
島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW 』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。
FLY: M-REX (Marshmallow Rex) Hook:TMC811S #3/0 tied by Kenshiro Shimazaki photographed by Jiro Yamada #ShimazakiFlies #flyfishing
『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW 』
フライの雑誌 119号 (2020年春号) 特集◎春はガガンボ ガガンボは裏切らない。
フライの雑誌 119号(2020年春号) 特集◎春はガガンボ ガガンボは裏切らない。 頼れる一本の効きどこ、使いどこ シンプルで奥の深いガガンボフライは渓流・湖・管理釣り場を通じた最終兵器になる。オールマイティなフライパターンと秘伝の釣り方を大公開。最新シマザキ・ガガンボのタイイング解説。|一通の手紙から 塩澤美芳さん|水口憲哉|中馬達雄|牧浩之|樋口明雄|荻原魚雷|山田二郎|島崎憲司郎
シマザキデザイン・インセクトラウトスタジオのアシスタント山田二郎さんによる〈シマザキ・ガガンボ〉最新版のタイイング。ストレッチボディとマシュマロファイバー、CDCで構成されている。シンプルでユニーク、使い勝手は最高。119号で紹介。 2019.12. 26.桐生にて
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『フライの雑誌』の新しい号が出るごとにお手元へ直送します。差し込みの読者ハガキ(料金受け取り人払い)、お電話(042-843-0667)、ファクス(042-843-0668)、インターネット で受け付けます。
フライの雑誌-第118号 |フライの雑誌 118(2019秋冬号): 特集◎シマザキ・マシュマロ・スタイル とにかく釣れるシンプルフライ|使いやすく、よく釣れることで人気を集めているフライデザイン〈マシュマロ・スタイル〉。実績ある全国のマシュマロフライが大集合。フライパターンと釣り方、タイイングを徹底解説。新作シマザキフライも初公開。永久保存版。|島崎憲司郎|備前 貢|水口憲哉|中馬達雄|牧 浩之|荻原魚雷|樋口明雄
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フライの雑誌 117(2019夏号) |特集◎リリース釣り場 最新事情と新しい風|全国 自然河川のリリース釣り場 フォトカタログ 全国リリース釣り場の実態と本音 釣った魚の放し方 冬でも釣れる渓流釣り場 | 島崎憲司郎さんのハヤ釣りin桐生川
フライの雑誌-第116号 小さいフライとその釣り|主要〈小さいフック〉原寸大カタログ|本音座談会 2月14日発行
フライの雑誌 第115号 水面を狙え! 水生昆虫アルバム〈BFコード〉再
フライの雑誌-第114号 特集◎ブラックバス&ブルーギルのフライフィッシング シマザキフライズへの道 島崎憲司郎
フライの雑誌第113号特集◎釣り人エッセイ〈次の一手〉|〈SHIMAZAKI FLIES〉の現在AMAZON