単行本新刊
『マンガ万歳―画業50年への軌跡』
矢口高雄 語り(秋田魁新報社刊)
9.28発売|地方・小出版流通センター扱い
秋田の雪深い山里で生まれ育った。貧しかった幼少時の切ないエピソードが心にしみる。12年勤めた銀行を30歳で辞め、マンガ家になるべく上京。デビュー後も順風満帆とはいかない。苦しむ中で作品が読者の支持を得た転換点は、恋しさと疎ましさが相半ばする〝おらが村〟の記憶を自分の強みとすることだった。
地方小出版流通センターさんの情報誌〈アクセス〉に紹介文を載せてもらえました。
「釣りキチ三平」の巨匠、波乱万丈の半生記。
人と自然をテーマにしたマンガ作品で著名な矢口高雄氏。秋田の雪深い山里で生まれ育ち今年画業50年を迎えるまでの、波乱万丈の半生記をまとめた。地元紙秋田魁新報での連載を元にしている。
貧しく苦労が多かった幼少時の切ないエピソードが心にしみる。12年勤めた銀行を30歳で辞めマンガ家を目指し上京。デビュー後も順風満帆とはいかない。苦しむ中で作品が読者の支持を得た転換点は、恋しさと疎ましさが相半ばする〝おらが村〟の記憶を自分の強みとすることだった。「幻の怪蛇バチヘビ」「釣りキチ三平」とヒットが連発する。
中学時代、大好きだったマンガを教育の害虫だと教師から罵られた。後年エッセイが学校教科書へ採択された際、交渉して一緒にマンガも載せてもらい悔しさを晴らした。粘り強さと反骨心は故郷の風土が育んだものだろうか。
聞き書き構成だが文章の達人である矢口氏の瑞々しい文体が香る。「(作中キャラクター)ユリッペは実は女房がモデルなんだ。」といったまっすぐな筆致がマンガ同様とても爽やかだ。
三平シリーズの傑作「少年の夏」を巻末に収録。山と川、少年少女の成長、親子の情愛……。矢口ワールドの魅力満載だ。ご本人も好きな短編で読者へのささやかなプレゼントとのこと。巻頭のカラー口絵、未完「雨沼の鱗剥ぎ」の原画は必見。矢口マンガへの愛があふれるあとがきは、横手市増田まんが美術館館長による。所蔵4万枚以上の原画を見に行きたくなる。
・
> 【公開】〈実写版 釣りキチ三平〉公開直前インタビュー(フライの雑誌-第84号掲載)
・
「釣りキチ三平」まめ知識
(フライの雑誌-編集部まとめ)
●矢口高雄のペンネームは、デビュー当時矢口氏に原作を提供した梶原一騎氏が名付け親。矢口氏は「矢口渡」に住んでいたので、梶原氏が「矢口高雄にしろ」。一騎らしい豪快なエピソードだが、受ける方もかなりのもの。
●三平君は「ズバリ11歳」。
●三平の名は白戸三平から勝手に拝借した。
●魚紳さんは初登場時、「祈願 日本一周釣行脚」と背中に書いたベストを着たアル中の風来坊だった。クールさが女子学生に人気となり、さわやか青年路線へ変更。「鮎川」の姓は横浜在住の美人女子高生姉妹が命名した。
●魚紳さんは鮎川財閥の息子で大金持ち。アメリカのバス釣り大会で優勝。弁護士資格を持っているが職業不詳。緊急時はヘリコプターで移動する。
●愛子姉ちゃんの「ひざまくら」には多くの男子が憧れた。(当社調べ)
●「ニンフの誘惑」篇に登場する魚紳さんの後輩で新婚のフライマン「風来満」(ふうらいみつる)は、首にバンダナを巻いたキザな男だった。風来満にはモデルが実在する。本誌連載陣でFLYイナガキ代表の川本勉さんがその人。
●コミックス第65巻で「三平」は最終章を迎えるが、番外編がさらに2巻ある。古書市場では番外編まで加えた全67巻でないと、全巻揃えにならない。しかし番外2巻は発行部数が少なく入手は非常に困難。(神田・鳥海書房談)
●連載はじめの頃の三平君の顔は、後期と全然違う。「頭をかきむしるほどの未熟さに、あきれかえるしかない」(矢口氏)
●矢口高雄氏は文章家としても評価が高い。なかでも『ボクの学校は山と川』は味わい深い名作エッセイ。中学教科書にも採用された。必読。
出典・参考:「釣りキチ三平の釣れづれの記 平成版」(矢口高雄著/講談社)ほか
///
フライの雑誌社では、ここに来て日々の出荷数が増えています。「フライの雑誌」のバックナンバーが号数指名で売れるのはうれしいです。時間が経っても古びる内容じゃないと認めていただいた気がします。そしてもちろん単行本も。
島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。