【公開記事】
フライの雑誌-第119号 春はガガンボ特集から、p.48【ガガン本(ぼん)紹介】を全文公開します。
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○各種単行本で、ガガンボとガガンボフライは、どのように語られているのでしょうか。ガガンボフライについて掲載している単行本を、編集部の書架から探しました。抜粋して紹介します。
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「アングラーのための水生昆虫学」(宮下力|アテネ書房)1985
双翅目 Diptera 翅が一対しかないか、後翅が著しく退化している水生昆虫。Di- は「2」という意味。カ、ブユ、ユスリカ、ハエ、ガガンボと科の数も種数も非常に多い種で、完全変態をする。
カ、ブユ、ハエなどのように小さなフライのイミテーションの総称をミッジという。ガガンボ科のフライは、Crane-flyとして区別している。湖などのフライフィッシングに卓効がある。 P.33
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「フライパターン・マニュアル」(増沢信二|山と溪谷社)1996
ガガンボ(クレインフライ)のパターンは英国の湖で相当以前から使われていた。レナード・ウェストなる先達が考案した「ダディ・ロング・レッグス」が有名。ボディはラフィア(植物繊維)、ウイング、ハックルつきで、レッグはコックフェザントのテイル・ファイバーを中間点で結んだものを6本。見た目はそっくり。しかし水中から見るとまるで〝クモ〟。水生昆虫のデリカシーさがゼロ。形態模倣の典型。
それに対し島崎憲司郎氏のパターンは状態模倣。しかも形態もそっくり。模倣対象は3月から4月にかけて大量に羽化するウスバヒメガガンボ。サイズ#16前後の小型種で、中下流域の標準種。今日ではコカゲロウと並んで重要視されるようになったが、元はといえば、これも島崎氏によるもの。「フライの雑誌」6号(1988年)で水中羽化の克明な(恐ルベキ)写真とともに、その生態が紹介されてから。
通称〝ビフィーダ〟(bifida)。学名だが、この通称化も氏のおかげ。コカゲロウも、〝ベイティス〟などと呼ばれるが、これも全く同じ。そもそもコカゲロウがこれほどまでに注目されるようになったのもひとえに氏の尽力によるもの。このフライは米国のパターンブックに〝KEN SHIMAZAKI〟名で記載されている。
P.314
○上記の島崎憲司郎さんのガガンボパターンについてシマザキデザインのアシスタントの山田二郎さんを通じて憲司郎さん本人に確認した。
1980年代に米国で販売されていたシマザキガガンボは、「水生昆虫アルバム」P.167に写真が載っている初期の「シマザキ・ガガンボ」(タイプA)とほぼ同じものだとのこと。
2013年秋にデニス・ブラック氏がランドール・カウフマン氏とニュージーランドへ釣行した際、激シブ状況の中で、シマザキ・ガガンボだけが信じられないほどの大当たりをした。「CDCの長いハックルが万歳するような形で軽々と水に乗り、ドリフトしながら蛸踊りよろしくユラユラやらかすのがスレた鱒たちに恐ろしく効きまくった」(フライの雑誌-第108号 P.74)という。印象深いエピソードは「シマザキワールド15」を参照。
ヤバそうな「いろいろここには書けないことなど」(同)は近刊〈SHIMAZAKI FLIES シマザキフライズ〉で憲司郎さんがたっぷりと書きまくってくれることになっている。(編集部)
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「新装版 水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW」(島崎憲司郎|フライの雑誌社)初版1997
1987年から1993年の「フライの雑誌」連載が土台。連載記事の大幅改訂増補版Part 2 と、水生昆虫とフライフィッシングの普遍的な原理を釣り人の視点で整理した書き下ろしPart 1/「Universal View」(ユニバーサル・ビュー)で構成。今号P.10、P.11参照。
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「岩井渓一郎 パーフェクト フライ タイイング」(岩井渓一郎|つり人社)1998
イワイ・ガガンボ ウスバヒメガガンボのアダルトのイミテーション。日本全国、水温の低い時期のマッチング・ザ・ハッチには欠かせないフライの一つ。
視認性も非常に高いので、コカゲロウのハッチの時でも、フライが見にくい場合はよくこのイワイガガンボを使うが、これがまたよく食べてくれる。
因みに、ウスバヒメガガンボという名前は友人の島崎憲司郎さんに教えてもらった(多分みんなそうだと思うが……。)
P.60
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「ライズを釣る」(久野康弘|山と溪谷社)1998
ガガンボ 僕がフライフィッシングを始めた頃、ヤマメと言えば決まって〝渓流の女王〟とかの、今思えば赤面モノのイメージで祭り上げられていた。しかしそんなことは当のヤマメには全く関係のない話。そこにあるものを食うにすぎない。確かにメイフライに比べ、ガガンボは薄汚い気がする(これを偏見という)。
…ガガンボ・イマージャーが極めて目立ち、捕食される機会が多いのは、多くのフライフィッシャーにとって常識となりつつある。ただし、その状態で浮上する水生昆虫が、トラウトにライズをともなって捕食されるとき、それは思いの他激しいフォームになることが多い。
ガガンボなどが羽化する水面は、そこそこ流れが速く、それゆえ素早く捕食対象が流れ去ってしまうため、素早いフォームが必要になることもあろう。しかし同じ流れでガガンボよりも小さなメイフライ・イマージャーを捕食している場合は、ずっと静かなフォームであることが多い。
P.220
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「水生昆虫ファイル Ⅰ」(刈田敏|つり人社)2002
ウスバガガンボ 山地渓流から平地流で日当たりのよい平瀬など、浅場の石表面に生息している小型のガガンボ。幼虫は口から出した絹糸で膜のような巣を作ってその裏側に入っている。それはちょうど布団をかぶって寝ているような感じで、ときどき巣から頭を出して、まわりに生える付着藻類を食べる。
3月下旬から4月頃の重要種。川が安定していた春はスーパーハッチが期待できる。水中を浮上するイマージャーからノックダウンアダルト、また、交尾や産卵に水際に集まってクラスターになったりしてヤマメを刺激する。
P.124
○ガガンボを熱く語っている洋書は見当たりませんでした。
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〈フライの雑誌-直送便〉の読者様には、小さいほうのカレンダーを12月5日発行の次号第121号(北海道特集)に同封します。第120号(大物特集)が直送便でお手元に届いている方は、何もされなくて大丈夫です。そのまま第121号以降も届きます。 すみません、残りわずかです。新規申し込みの方は先着順で差し上げます。
フライの雑誌社では、ここに来て日々の出荷数が増えています。「フライの雑誌」のバックナンバーが号数指名で売れるのはうれしいです。時間が経っても古びる内容じゃないと認めていただいた気がします。そしてもちろん単行本も。
島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。