【公開記事】
単行本『身近で楽しい! オイカワ/カワムツのフライフィッシング ハンドブック』(品切れ)から、「オイカワ/カワムツはどこから来たか」(水口憲哉)を公開します。水口憲哉氏の博士論文(1969年)のタイトルは、「オイカワの繁殖生態と分布域の拡大に伴う二、三の形質変異」。筋金入りのオイカワ好きです。
こちらも合わせてどうぞ。
> 【公開】 「水辺のアルバム(一) オイカワ」(水口憲哉)|フライの雑誌-104号
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オイカワ/カワムツはどこから来たか
水口憲哉
東京海洋大学名誉教授・資源維持研究所主宰
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日本のオイカワはどこから来たか
日本におけるオイカワの遺伝学的単位は、
①鈴鹿・伊吹から利根川までの東日本
②琵琶湖由来
③琵琶湖以外の西日本
④北九州の在来のオイカワ
といった形で大きくは整理できる。これは形態学的にも納得できる。
いっぽう、日本のオイカワの発生の地ともいえる中国大陸では、ヨーロッパの数名の研究者の遺伝学的研究を踏まえて、ツエンほか九名(2016)は、Zacco platypus には10の種内遺伝学的グループがある事を明らかにしている。黄河流域を調査すればその数はもっと増えるかもしれない。
そして、台湾ではマほか3名(2006)によれば次の四つの遺伝学的グループが形態的にも区別できるという。
①台湾が大陸と陸続きであったときに分布していたものが北部に残っている。
②台湾固有の種が10000〜6000年前に海面上昇により南北に分断されたものが二群。
③日本の琵琶湖由来のオイカワと同じものが北部に導入されている。
オイカワとカワムツの属名について
現在日本の魚類の学名を何にするかは、魚類学会で決定する訳ではなく中坊徹次編『日本産魚類検索 全種の同定』の第三版(2013)によるらしい。
そこで細谷和海はオイカワをハス属(Opsariichthys)にし、カワムツをカワムツ属(Candidia)としている。しかし、ネット上の淡水魚フリークたちは、カワムツについては台湾のチェンら(2008)に従い、Nipponocypris(日本のコイの意か)を用いている。
細谷はこれを認めたくないのか使っていない。中坊は基本的に新しい学名はすぐには採用しない主義のようである。西湖のクニマスは確定できずあいまいなままにさっさと断定してしまったが。さかなクン抜きで。
韓国のカワムツを確定したのは細谷らだが、それに日本のということでこの属名をつけることには異議をとなえたい。
オイカワはハス属になったからといって、ハスのように他の魚を食べる魚食魚の仲間入りをするわけでもなく雑食性のままである。
学者がどうしようと、オイカワもカワムツも雑魚であることに変わりはないので、ザコ属(Zacco)のままでよいじゃないか。
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