2012年5月27日記
2012年6月27日追記
2021年7月14日追記
つり人社さんが〈海のフライ本〉を編集中とのこと。「フライパターン&タイイングを中心とした内容の海のFF本」だそうだ。著者は中根淳一さん。楽しみである。
>「海のフライ本、編集中です」(書籍の棚から)
つり人社の『Fly Fisher』誌さんは、2011年の9月号で海のフライフィッシングの特集記事を組んだ。そのメインの記事のなかで、小社から刊行した国内初の海フライ・タイイング&パターンブック『海フライの本2 はじめての海フライタイイング&パターンBOOK』(2007年・品切れ・電子版のみ)に載っている「餌生物の紹介キャプション」を、ほぼそのまま使っていた。
企画まるごと、びっくりするくらいの酷似だった。正直、パクってんじゃん! と思った。比較検証記事をつくろうかと思ったが面倒だし、こっちの誌面が汚れる。それにじつは『Fly Fisher』誌さんに限らずそういう経験はしばしばあるので、今回も放っておこうと思っていた。
しかし、「あれはどういうことですか、盗作っていうんじゃないんですか」と、『海フライの本2』の読者さんから、複数の問い合わせを受けた。そこで小社編集部堀内が『Fly Fisher』編集部へ連絡をとったところ、八木健介編集長が真摯に対応してくれた。
問題の「餌生物の紹介キャプション」の記事には、筆者として中根淳一さんの名がクレジットされていた。が、八木編集長の説明では、『Fly Fisher』誌の編集部員が書きました、とのことだ。
ふうん。へえ。
『Fly Fisher』誌さんの翌10月号巻末に、以下の「お詫びと訂正」が載った。
2011年9月号の特集「ソルトの扉を開け!」内の記事(海のベイト&パターン1〜3)におきまして、以下の書籍を文献として参照させていただきながら、記事中にその旨を記載しておりませんでした。
著者、出版元、そして読者の皆様に深くお詫びし、ここに改めて参考文献として明示させていただきます。
参考文献:『海フライの本2 はじめての海フライ・タイイング&パターンBOOK』(牧浩之著/フライの雑誌社/2007)
本当の問題は「参考文献表示が抜けていた」程度の話ではないのだが、そこはこっちもおとなになって吞み込んだ。と、そんなことがあったのもすっかり忘れていた2012年6月27日、八木さんから電話がかかってきた。
小社サイトの記事に、「中根淳一さんが問題のキャプションを書いたように誤解される一文がある。抗議します。削除してほしい。」と言われた。それで思い出して、だったらその、筆者に断りなく勝手にキャプションを書いた、とんでもない編集部員さんの名前を教えてください。
が、教えてくれなかった。なんで教えられないんですか。編集部員が書いたんならもっと恥ずかしいと思いますよ。
〈先行する他社の書籍の内容を無許可で使い、参考文献表示を入れない〉という行為は、剽窃だ。盗作だ。弁明のしようがない。
天下の『Fly Fisher』誌さんである。ふだんは本当に良い本を作っている。自分も学生のころから憧れていた。釣り雑誌の業界は悪化するばかりだが『Fly Fisher』誌さんには生き残ってほしい。しかし、一回の失敗が積み重ねてきた信頼を帳消しにする場合もある。
私だったら、もともと自分の側に非があれば、平身低頭して、ひたすら時がたつのを待つ。ましてや、ぜったいに『フライの雑誌』へ逆抗議なんかしない。筋が通らないときに、『フライの雑誌』ほど面倒くさい相手はいないからだ。なにしろ融通がきかないし、しつこい。何度でも何年たっても蒸し返す。
『フライの雑誌』が第64号(2004年・売切れ)で「すぐそこの海へ!」特集を組んだとき、「ゲテモノ特集だ」と、英国貴族伝統のフライフィッシングを信奉する方々からたたかれた。
『海フライの本2 はじめての海フライタイイング&パターンBOOK』は、今まで世の中になかった本を作ろう、という共通の熱い想いのもとに、著者と小社編集部が文字通り血のにじむ努力を重ねて、本当に命がけで、社運をかけて、ようやく出版にこぎつけた本だ。おかげさまであっという間に売り切れた。
「文献として参照させていただきながら、記事中にその旨を記載しておりませんでした。」で済ませられるものではないのですよ。
どんな釣りでも、どんなフライフィッシングでも楽しいと思う。日本でだってやってる人はむかしから海フライをやっている。海のフライフィッシングにはまだまだ可能性がある。今度のつり人社さんの〈海のフライ本〉が、どんな独自の新しい世界を見せてくれるのか。楽しみである。
後日談。問題の「つり人社さんの〈海のフライ本〉」を手にとった。絶句。Amazonのレビューに「海フライの本2と酷似していて驚いた。」と、書いている人がいた。(私が書いたんじゃないですよ)
〝真似するより真似されるほうがいい〟が、フライの雑誌社のささやかな社是だ。読者が味方についていてくれるかぎり、業界のお偉方だろうがなんだろうが、なにもこわいものはないです。ちょっと毎度毎度、社運かけすぎてる気もするけど、もっとがんばります。
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2021年7月14日追記
今朝、気持ちよく晴れ上がった空を見ていたら、以上の経緯をふと思いだした。あらためて当該ページの画像を下に追加しました。他意はありません。(どこが) 釣り師の情けでこれくらいにしておきます。
一寸の虫にも五分の魂といいます。黒門町の師匠もおっしゃっています。〝天は見ていますよ〟と。