5.9 IWAジャパン新宿FACE大会 グダグダ観戦記

『フライの雑誌』次号の編集地獄をブッチして、IWAジャパン新宿FACE大会へ。ずっと前から楽しみにしていた興行だ。各種寄稿者の入稿遅れや作業のグダグダによりスケジュールが遅れているからといって、編集者が釣りやプロレスに行ってはいけないという法律があるなら教えてくれ。言ったなお前。よく言った。

今回大会の一押し話題は、「UMA軍団バトルロワイヤル」である。この今世紀最大の闘いは、国内最大手でもっとも信頼のおける社会の公器である東京スポーツに先週大きく報道されたので、「ああ、あの!」と記憶に残っている方も多いだろう。UMAとは未確認動物(Unidentified Mysterious Animal)のこと。試合の事前情報は親切なこちらの情報を。

参加するUMAは、志賀賢太郎、ウルトラセブン、河童小僧、デスワーム(♀)、ゴム人間、ビッグフット、雪男。三沢が作ったガチメジャー団体プロレスリングNOAH出身の志賀賢太郎も、Iジャのリングでは一気にUMA扱いだ。このなかでもっとも分けのわからないデスワーム(♀)についてはこちらの記事と写真を参照のこと。読んでも分からないよという方はこれ以上の説明は面倒くさいので残念です。

ルールは、7つのUMA(7人ではない)が同時にリングに上がり、適当に相手を見つけて闘って勝利したものからリングを降りられる。最後まで負け残ったのが青汁注射による「宇宙人刑」を受けるという、さっぱりわけのわからない闘いである。すでに闘いであるかどうかすら不明。力道山先生が拓いたプロレス文化もついにここまできたかと遠い空を見やるばかりだ。

さてゴングが鳴って試合開始。バトルロイヤル(ロワイヤルは仏語読み。なぜ今回仏語なのかは不明)では通常、参加選手の中でいちばん強そうなのから皆で協力してやっつけていく。ところが今回のメンバーはなにしろ全員UMAなので、ゴングが鳴っても全員しばらくリング上に棒立ち。唯一、もっとも人間に近いと思われる志賀がこれは興行的にまずいと思ったのかどうか、そばにいた雪男かなにかにチョップを打って試合の流れを作ろうとがんばり始めた。さすがNOAHはまじめだ。

右手前で泣いているように見えるのがデスワーム(♀)

注目のデスワーム(♀)はUMAのくせに怖いのかリングのコーナーに顔(多分)を伏せてぷるぷると震えるばかりで、すこしも闘いに参加しようとしない。名前はデスでも女の子だからね。そのうち、M78星雲から飛来してきたウルトラセブン(本名は高杉正彦)がゴム人間と絡み始めた。河童小僧が無意味にヒューヒュー叫びながら飛び回っているところへ、ビッグフットが重爆ドロップキックをかます。リング場は阿鼻叫喚のグダグダである。

こんなものをカネをとって客に見せていいのか。こんなことになるのは分かっていながら、わざわざ日曜日に歌舞伎町まで喜んで見に来ているほうもなにかおかしくないか。しかも大いに面白がってわーわー声援を声援を飛ばしているのだから何をか言わんや。そんなことだからIWAは調子づいてどんどん分けのわからないことになってゆくのである。

けっきょく試合はデスワーム(♀)が途中で失神し、志賀とゴム人間が負け残った状態へ特殊レフェリーの宇宙人アサター(新宿2丁目治療院・幕の内博士の青汁注射によるIWA浅野社長の化身。元ネタはアバター。なんのこっちゃ)と謎の美人UMAマネージャー、ハル・ミヤコが絡んできて、本当に心からグダグダになった。最後はたしかハル・ミヤコが勝ち誇っていたからゴム人間が勝ったはず。どうでもいいけど。

で、ハル・ミヤコ退場後、なんとかこのグダグダな試合をまとめようとしたのか志賀がマイクを持った。やっぱりNOAHはまじめだ。ラッシャー木村のDNAを感じる。その志賀からマイクを渡された宇宙人アサターは、全身みどりのペイント姿のまま観客席に向きなおって姿勢を正し、「はい、みなさん、本日はご来場まことにありがとうございました!」と宇宙人から社長職に戻って見事な挨拶。新宿二丁目で30年以上生き抜いて来たオトコの社会人っぷりを見せつけてくれた。

今日の客席はなぜかふつうの(マニアではない)一見さん風のお客さんが目についた。若い女性や家族連れもいつもより多い。心配になって皆さんの様子をうかがうと、おおむね大笑いしてくれて満足している風で安心した。しかし今日はじめてプロレスを観に来た人に伝えたい。「これもプロレスだけど、これがプロレスだとは思わないでね」。

今夜の大会であと特筆したいのは、「維新力&ミス・モンゴルVS末吉利啓&アップルみゆき」の一戦である。いまの女子プロレス界でいちばん可愛いアップルみゆきに対してこれまでセクハラ攻撃を繰り返してきた維新力から、今夜はアップルが見事な3カウントを奪取した。3つめのカウントが入った瞬間は思わず客席から立ち上がってしまった。やったね。

セミファイナル「ザ・グレート・タケル&小部卓真 vs タイガースマスク&ブラックバファロー」。小部がいつのまにかこんなに成長していたとは。IWAジュニアヘビー級をタケルから獲ったときには「え〜」と思ったものだが、立場が人を変えてゆくのだ。大阪プロレスの2人はやはりうまい。

メインイベント「IWA世界ヘビー級選手権 <王者>松田慶三 vs 高岩竜一<挑戦者>」。今IWAで見せられる至極まっとうなプロレスリングを見せきった闘いであった。高岩は丸め込みで3カウントをとられたものの価値を下げなかった。エース慶三選手にはもっともっと強くなってほしい。UMAや宇宙人が前座を盛り上げて慶三がきっちりメインを締める。それが今のIWAの黄金パターンである。

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さて、言いたいことを言ってすっきりした。私は編集地獄の闘いのリングに戻ります。『フライの雑誌』次号89号の入稿締め切りまで、あとマイナス3日。ん、それって…。