青森行こうかな。「葛西善蔵生誕130年特別展」~9月18日(月・祝):青森県近代文学館

青森県近代文学館「葛西善蔵生誕130年特別展」で、「葛西善蔵に魅せられた人々の著書」の一つとして、小社刊『葛西善蔵と釣りがしたい』が資料展示されています。光栄です。

「葛西善蔵生誕130年特別展」青森県近代文学館
7月8日(土曜日)~9月18日(月・祝)

青森県近代文学館さんからわたしの名前宛の封筒が届いたとき、さいしょに思ったのは「怒られる?」ということだった。奴隷根性身に染みついちゃってるね、と大杉栄なら言うだろう。

青森県近代文学館文学専門主査さんからのとてもていねいな手書きのお手紙が同封されていた。〈葛西善蔵生誕130年特別展を開くにあたり、葛西善蔵を大きく取り上げた図書のコーナーをもうけ、『葛西善蔵と釣りがしたい』を展示させていただきました〉とのお知らせだった。

うわー、まじかー、と思った。

というのは、たしかにわたしは葛西善蔵さんの作品がなぜか好きで、「雪をんな」「湖畔手記」「椎の若葉」「子をつれて」とかを10代の終わりに読んで、ガキのくせにじーんときて、それから折りにふれて講談社文芸文庫やKindleで読み直している。遠い昔の卒業論文は大正期の私小説作家云々でメインが葛西善蔵さんであった気がする。ところがなにしろ麻雀とパチンコとフライフィッシング漬けの日々のなかで、頭脳警察とスターリンを寝起きのタイマーにして書きとばした読書感想文にもならないような代物で、もちろん内容は1ミクロンも覚えていない。

今は毎日のオイカワ釣りが何よりの楽しみのおっさんだ。

2013年の『葛西善蔵と釣りがしたい』にしたって、本文が200ページもあるなかで、葛西善蔵が出てくるのは正直たった2ページだ。タイトルに持ってきたのは正直まずかったと本人も思ってる。荻原魚雷さんも「完全にタイトルで釣られた。」と書いていた。こっちは釣り師なんで正直どうだというところだ。(いや正直そういうことじゃないだろう)

文学専門主査さんが贈ってくださった展示会図録には、出品リスト欄へ本当に『葛西善蔵と釣りがしたい』の書名が書いてあって、こんなことでは100年残ってしまう。まじかー。図録に書き下ろしエッセイを寄せている鎌田慧さんの『椎の若葉に光りあれ』(1994)はものすごい大傑作なんで、岩波現代文庫版で多くの人に読んでもらいたいと熱望しつつ、〈葛西善蔵に魅せられた人々の著書〉くくりでキラ星のような皆さまのご高著と拙著を一緒にしていただくのは、ただひたすらに恥ずかしくて、なにより葛西善蔵さんに申し訳なくて、本当にまじかー、と崖の下でのたうちまわっています。

超うれしいから青森行こうかな。

青森県近代文学館さんからの封筒と図録。この時点でやばい。
〈葛西善蔵に魅せられた人々の著書〉に本当に載ってる。まじやばい。くらくらする。
芥川賞発表。芥川賞を受賞した「影裏」掲載の「文學界」5月号を、たまたま栗原康さん目当てで読んでいたという偶然。川釣りのシーンが話題になってるが、イクラのえさ釣りなんで惜しい!とわたしは思っていた。まああれがルアーやフライフィッシングだったら釣りモチーフが逆に生々しくなっちゃって、純文学の範疇からずれたりするんだろうなきっと、日本だから。6月号は満島ひかりさん目当てで買った。
葛西善蔵と釣りがしたい|たこはたこつぼが好きですが、じゆうに泳げるひろい海にもあこがれます。(本文より) 堀内正徳=著(『フライの雑誌』編集人) ※「湖畔手記」には日光湯ノ湖でマス釣りするシーンが出てくるから、釣りつながりで許してください