大きな魚がドライフライに出たとき、心の中で、one, two, three、と数えてからアワせろと言うけど、あれは間違いなんだ。だって大モノが出たら早口になる。1.2.3!
one hundred one, one hundred two, one hundred three、の方がいい。舌が回らないからゆっくり数えられる。ゆっくり数えて、ストライク!
なあオマエ、人生だってそんなもんだろう。次に魚が出たらやってごらん。
20年近く前、南半球の川辺で地元のフライフィッシングガイドに教えられた。
わたしは20代の独身、彼は50の半ばだった。陽気な釣り好きキウイは離婚歴3回。今のパートナーと暮らして2年。
いっしょに釣りをした翌年、国際電話で彼と話した。
「彼女はどこへ行ったんだい」。「わからない」。「いつ帰ってくるんだい」。「アイ・ドント・ノー」。消え入りそうな小さな声だった。また一人になったらしい。
〈ゆっくり数えて、ストライク!〉を、ときどき思い出す。
あまり使い途のない、フライフィッシングの大事なコツだ。
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※下の動画は『バンブーロッド教書』訳著者永野竜樹さん主宰の〈シェフのフライロッドの世界〉で知りました。永野さんはこんなコメントをつけています。「南半球は真夏の真っ只中、シケイダーが飛び回って魚もやる気まんまん。丸太のようなブラウンが暴れます。しかし、この手の魚をシングルハンドのバンブーロッドで取れるかな?」。
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