TBS報道特集「原発の長期間停止・海の生態系に劇的変化」で水口憲哉氏が解説

2014年4月12日に放送された、TBSテレビ報道特集「原発の長期間停止・海の生態系に劇的変化」の一部を紹介します。番組中で、『淡水魚の放射能』著者の水口憲哉・東京海洋大学名誉教授が、原発の温廃水について解説しています。

原発や再処理工場は、事故を起こさない通常運転でも、自然界へ大きな影響をおよぼします。もっとも被害をこうむるのは〝小さな生きもの〟たちだと水口氏は説きます。(海の生態系に劇的変化(2) 0:48から)

原発やダム建設などにおいて、人間社会が経済を優先して動こうとするとき、その影で犠牲にされるのは、いつも〝小さな生きもの〟たちです。水口氏は見失われがちな〝小さな生きもの〟たちの存在に、常に寄り添い、目を向ける研究をつづけてきました。そんな研究のひとつのまとまりが『淡水魚の放射能』『桜鱒の棲む川』です。

以下、番組より。

政府が昨日(2014年4月11日)閣議決定したエネルギー基本計画では、原発の再稼動の方針が明記されています。その中でも、最も早く再稼動されるのではないかと言われているのが、鹿児島県の川内(せんだい)原発です。こうした中で私たちは、各地の原発周辺の海に潜ってみました。

川内原発の稼働後、水揚げが激減したと漁師は訴えている。…

原発が漁業に与える影響について40年間研究している、東京海洋大学の水口憲哉名誉教授は、原発が海の生きものに大きな影響を与える、と話す。

「海藻はそこに定着して一生を繰り返しているわけです。原発の周辺では常にへんな水が洗っている。ですから、海藻は常に色々な影響を受けています。海藻は魚よりも影響がはっきり見えやすいんです。」

水口憲哉名誉教授は、温排水について、海を温めることよりも、大量の水をとりこんで排出することが、より問題だと考えている。海に豊かさをもたらす小さな生きものたちが吸い込まれ、失われてしまうというのだ。

「〝連行〟といって、冷却水として取り込まれる海水の中に、色々な浮遊生活を送る幼生、貝や海藻、魚の稚魚も含めて、小さな子どもが一緒に吸い込まれる影響が一番大きいですね。」

温排水は複合的な汚染物質を含む、「廃水」と呼ぶべきものだと指摘する。

「原発の冷却系のパイプに、フジツボとかカキが付かないようにする塩素系の薬物を入れたり、冷却系のパイプの金属が溶けた金属イオン、金気(かなけ)も入っている。漁師の人は、悪い水が出てくる、〝悪水〟(あくすい)という言い方をします。」

原発は事故を起こさない通常運転でも、多大な環境破壊を引き起こす。今回のTBS報道特集の内容は、福島第一原発事故以前なら、ぜったいに放映されなかったでしょう。

政府自民党・公明党は、原発が抱えている根本的な問題点をひた隠し、全国各地の原発を再稼動する方針を掲げています。番組の最後はこんな風に締められています。

「再稼動に賛成・反対という前に、原発が周囲の環境にどのような影響を与えるのか、もっとくわしく知る必要があると思います」
「エネルギー基本計画を読むと、政府がそもそも耳を傾けていない姿勢じゃないか。すると福島第一原発の悲劇は一体なんだったのか。とても憤りを感じざるを得ません」

原発の温廃水のおそろしさについては、水口氏の著書『これからどうなる海と大地 海の放射能に立ち向かう』にくわしく記されています。

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『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著/フライの雑誌社刊)
『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著/フライの雑誌社刊)
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