フライの雑誌-第60号

フライの雑誌第60号
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フライの雑誌特集がんばれ、フライショップ

ここ10数年の間に、日本国内でのフライフィッシング用品を扱う市場は爆発的に拡大した。それはフライフィッシングを楽しむ釣り人が増加したのと同義だ。タックル、マテリアル、周辺商品まで含めれば、フライフィッシングに関連する「商品=モノ」は他の釣りに比べるとはるかに多い。かつてはどこの店に行けば道具を揃えられるのかが大問題だったが、いま、私たちは道具の入手方法で困ることはまずない。

税込価格1,250円

ISBN 9784503150042


INDEX

004 がんばれ、フライショップ 編集部
036 日本釣り場論(28) 寒河江川キャッチ・アンド・リリース区間の7年をどう見るか――あるいは、釣り場運営のマンネリズムについて 座談会/高橋安則/寒河江芳美/松田洋一 進行・編集部=堀内正徳
050 スタンダードフライ・タイイング図説(29) A Modern Approach to Classic Bassbugs and Spinning Deerhair Techniques/写真で見るバスバグ変遷記/ディアヘアーをフレアさせまくるゾ編 備前 貢
077 この春の花粉症対策/ 花粉症なんか怖くない!? 編集部/堀内正徳
086 ヒッピーのエンディ 渡辺裕一
098 彼の最後の異郷 浅野眞一郎
116 魚食遍歴 田中啓一
012 読者アンケート・レポート
020 日本初のフライ用品専門店、佐々野釣具店、閉店す ――インタビュー/佐々野釣具店社長・佐々野征夫氏 インタビュー/佐々野釣具店社長・佐々野征夫氏
025 アメリカ人のフライフィッシング文化考(15) 道具としてのフライフィッシング用品 西堂達裕
028 オレゴンの日々(18) 冬の釣り 谷 昌子
032 トラウト・フォーラム通信 トラウト・フォーラム事務局
033 九重町界隈通信(5) 家の前で護岸工事があった 田中典康
042 イワナをもっと増やしたい!(15) ブラウントラウトはヤマメやイワナを駆逐する 中村智幸
046 現代フライ用語の基礎知識2003 橋本辰哉
064 優しき水辺(52) 藤幸夫
066 ネルソン便り(6) ティトーキ・プレイスの隣人たち(二) キョーコ・マーフィー
073 人生にタックル(14) フライとはほとんど関係のない話(一) カブラー斉藤
081 北海道の釣り事情 その真相 村川堅一
096 モンタナ暮らしは、なぜ楽しかったのか(4) モンタナと日本の釣り場管理を考える 上田真久
113 晴天の野反湖 碓井昭司
120 発言!/ 奥多摩調査隊3年間の活動と、奥多摩漁協への提案 吉田 仁
124 読者通信

内容紹介

フライの雑誌第60号-01
フライの雑誌第60号-02
フライの雑誌第60号-03
フライの雑誌第60号-04
フライの雑誌第60号-05
フライの雑誌第60号-06
フライの雑誌第60号-07

特集-がんばれ、フライショップ 編集部
一般的な釣具店、ルアー・フライ専門店、フライフィッシング専門店、通信販売、個人輸入、WEBサイト販売専門の釣具店などフライ用品を扱う店のバリエーションは様々だ。その気になれば、今の私たちはフライフィッシング用品をどこの店からでも買うことができる。しかしながら、釣り人の多くは、せっかく買うならと、自分のお気に入りの「フライショップ」を持ち、買い物そのものをフライフィッシングという趣味の一環で楽しんでいるのではないだろうか。そこで、これからの時代に釣り人が利用したくなる「フライショップ」像はどんなものなのか、私たちはどのような「フライショップ」を相棒として、フライフィッシングという奥深い趣味を探求していくのかにスポットを当てた。

日本釣り場論(28)寒河江川キャッチ・アンド・リリース区間の7年をどう見るか――あるいは、釣り場運営のマンネリズムについて
座談会/高橋安則(山形県県内水面漁連会長/最上川第二漁協組合長)/寒河江芳美(山形県東村山郡・リリカルアングラーズ会長)/松田洋一(山形県村山市・リリカルアングラーズ会員)
◎進行・編集部=堀内正徳

山形県内には魅力的な渓流釣り場が多い。最上川第二漁協は18ある山形県の内水面漁協のなかで最大規模の漁協だ。寒河江川大井沢地区へのキャッチ・アンド・リリース区間設定(1997年)は当時、全国の漁協と釣り人に新鮮な驚きを与えた。大井沢地区のキャッチ・アンド・リリース区間は、本誌前号でも取り上げたように、山形県内の釣り人の集まりであるリリカルアングラーズが発案して、その要望に管轄の最上川第二漁協が応諾したことが発端だった。区間設定から7年を経て、区間の設定当初に関わった方々3人にお集まりいただき、寒河江川大井沢地区の今後の方向性、漁協と釣り人との関係性などについて、それぞれの立場から意見を交わしていただいた。

スタンダードフライ・タイイング図説(29)A Modern Approach to Classic Bassbugs and Spinning Deerhair Techniques/写真で見るバスバグ変遷記/ディアヘアーをフレアさせまくるゾ編Vol.1 備前 貢
プロローグ――シカの毛の魔法

スキンから、ザクッと切ったディアヘアーを、フックシャンクに縛り付ける。で、それをスレッドでギューッと引き絞るとアラ不思議。ディアヘアーはパラパラッと立ち上がり、フレアするではないか。 

マドラーミノー等の人気パターンで、タイイングに精通している方にはもはや当たり前のこのテクニック。現在では、この方法は「スピニング・ディアヘアー・メソッド」という名前で知られています。また、こうして巻かれたボディはスパン・ディアヘアー・ボディなどと呼ばれています。二〇年ほど前、私がタイイングを始めた頃、この方法はドライフライのハックリングと共に、フライタイイングの手品のように思えたものでした。感動的でさえありました。しかも、そうしてディアヘアーをフレアさせたボディを、自由に刈り込んで様々な形を作ることができる! …さらに、そのボディには、充分な浮力がある! 

スパン・ディアヘアー・ボディの絶大な浮力は、ディアヘアーが中空構造で水切れが良く、さらに密集してフレアすることで、内部に空気がたまりやすく水分を含みにくくなる、といったモロモロの相乗効果で得られているというのは、ご存知の通り。 

例えば、マス用フライで言えば、ハンピーやコンパラダン、さらにはエルクヘア・カディス等、ディアヘアーのそんな特性をうまく利用したものが、スタンダード・パターンとしてもたくさん知られています。 

このディアヘアーがまず最初にフライに取り入れられたのは、ブラックバスを釣るために考案されたフライからでした。

バス用のフライと言えば、コルクやバルサ等を使ったポッパー等のパターンも忘れられません。が、ここではバスフライの変遷と足跡を辿りつつも、フライタイイングならではの手法「スピニング・ディアヘアー・メソッド」にスポットを当て、その面白さも紹介したいと思っています。 

この春の花粉症対策/花粉症なんか怖くない!?
春の訪れと共に虫たちもハッチし始めて、フライフィッシングにはうってつけの季節がやってくる。と同時に、恐怖の花粉症のシーズンも到来する。分かる人には分かる辛い辛い花粉症だが、いくら辛くともあえて花粉の舞い散るまっただ中へ自ら進んで身を投じるのが、釣り人の業というものだ。「花粉症の釣り師」の行動は、釣りをしない人から見れば噴飯ものだろうが、それでも釣りはやめられない。花粉症に悩む釣り師は、どのように花粉症とつきあっているのか。また、釣り人的に考えて花粉症への有効な対策はあるのか。今シーズンの花粉症とのたたかいの参考にして欲しい。

ヒッピーのエンディ 渡辺裕一
遠くの方で「ガシャーン」という鉄の扉の閉じる重い音がして、朦朧としたまま目が覚めた。横向きの顔を天井に向けようとすると、塩ビでできたモスグリーンの枕が頬にべったりとくっついてきた。

「ここは、どこだろう」

かすかに、消毒液の匂いがする。目の焦点が定まってくると、間近に鉄格子があった。その向こうにやはり塩ビでできたモスグリーンの蚕棚ベッドが二台あり、右側の下の段に薄汚れたネルの格子柄シャツを来た不精髭の男がひとり、口をあけて寝ていた。灰色がかったリノリウムの床が、蛍光灯の光でにぶく光っている。

「あぁ、きのうの夜中、ここに来たんだ。留置所だ」

毛布をはらいのけながらベッドから降りると、ジーンズのベルトとワーキングシューズの靴紐がないことに気づいた。

昨夜、ここに着いたときの記憶がだんだんとよみがえってきた。

「おまえ、日本から来たのか。めずらしいな。ようこそ、ここモントリオールのブタ箱へ。自殺防止のために、ベルトと靴紐はあずからせてもらう。あすの朝は、トーストとコーヒーがでるからな」

「へー、YMCAみたいだ」

「ハハハッ、でも、コーヒーのおかわりはないぞ」

彼の最後の異郷 浅野眞一郎
「…ただいま現地の天候は曇り、気温は摂氏三度…本日もアルゼンチン航空をご利用いただきましてありがとうございました。みなさまに再びお会いできる日をたのしみにしております」

観光シーズンが過ぎ、空席の目立つウスアイア行きの機内にスペイン語のアナウンスが流れた。ぼくは浅い眠りから抜けきれずに、目を閉じたままそれを聞き流した。着陸のゴトンという軽い振動が体に伝わって、ようやく目を開いた。日本を出てから四八時間後のことだ。

せまいエコノミー席から開放され、機内持ち込みのザックを背負って出口に向う列に加わった。ぼんやりとバッゲジ・クレーンへ降りていくと、到着ロビーのガラス越しに、こちらに向かって手を振るなつかしい四つの顔が目に入った。ぼくはその四人の釣り仲間におおきく手を振り返した。荷物は運よく最初の荷物のグループにまざって出てきた。ぼくは荷物をつかんでロビーに出た。釣り竿もキャンプ道具も持たずにウスアイアへ来たのははじめてだった。

「オーラ、アサーノォ、アミーゴ!」

四人にそれぞれに息が詰まるほどに抱きしめられ、抱きしめ返した。そしてバシッ、バシッと乱暴に肩をたたきあった。ぼくは用意された席にむかえられたような安心感に包まれた。しかも、差し出された席は客用の特別なものではないのだ。まるで昨日までいたようにその自分の場所にすっぽりと収まった。二年ぶりのフエゴ島(南米大陸の南の端、マゼラン海峡を越えた先にある島)のウスアイアという街のアミーゴ(スペイン語で「友だち」を指す)たちとの再会だった。

魚食遍歴 田中啓一
女が言った。

「ふーんそうなんだ。楽しかったんだ。で、釣った魚はどうすんの?」

どうするのとは、獲物を逃がしてやるのか、魚籠に入れるのかの選択のことではなく、その調理法を訊ねているのである。

「逃がすよ」

次の瞬間、あたしの質問の意味が分かってんのかと言いたげな顔をして、女がこっちを見る。

「逃がすって…食べないの?! もったいない。何のために釣るのよ」

女性に釣りの話をすると決まってこんな展開になる。

これは、おふくろであろうと、今年女子大を卒業したばかりの女の子であろうと、たいてい同じである。当然のことながら、私は森の中を流れるスプリングクリークにゆっくりと泳ぎ去る鱒の姿を頭に描きつつ話をしている。かたや相手は、石がゴロゴロしている河原のキャンプ場で、たき火の周りに串刺しにした魚を並べている図を想像してよだれを流しているのである。これでははなから話が噛み合うわけがない。その後は、なぜ釣った魚を放してやるかの説明を始めることになるのだが、もはやすでに相手は話を聞いていない。つまらなそうに枝毛の処理などを始める始末である。

そして、長々と続くぼくの話を遮るように、意外な言葉が相手から発せられることがある。

「キャッチ・アンド・リリースね」

これはごく最近の傾向ではある。あえてその言葉を避けて説明してきたのに、相手の方から言われるとちょっとギョッとする。釣り竿を触ったこともない人間が最近はなぜかこの言葉を知っている。紙のように薄い情報の被膜が今の世の中をあまねく被っているのである。

とにもかくにも、かくして私は清く正しい高貴な釣り人として一人の女性に認知されたというわけだ。しかし釣りの話題はたいていこれでお終いになる。

そんな私も昔はよく釣ってきた魚を食べたものだ。思い返してみると、食べた魚にまつわる釣りのシーンは不思議と鮮明に記憶に残っている。

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