奥只見湖の魚の持ち帰りは5匹まで。

奥只見湖の持ち帰りは5匹まで。

奥只見湖(新潟県魚沼市、福島県檜枝岐村)に生息するイワナとヤマメ、ニジマスについて、魚沼漁業協同組合(同市)などは今シーズンから、合わせて5匹を超える捕獲を禁止する規則の適用を始めた。

かつて作家の開高健(1930~89年)が保護活動を推し進めた湖での新たな取り組みに、関係者は歓迎の声を上げている。…

捕獲数の制限についても、同会が約30年前から漁業権を持つ魚沼漁協に訴えてきた。湖周辺の民宿なども歩調を合わせ、2003年には「奥只見旅館飲食店組合」の自主規制として、捕獲は5匹までとするルールを設けた。同組合は保護活動にも力を入れており、民宿の一つ「奥只見山荘」では、5年ほど前から釣り客と協力してイワナの稚魚を放流したり湖のごみ拾いを行ったりしているという。

同会や地元の長年の活動を受け、魚沼漁協などは今年1月に遊漁規則を改定。奥只見湖でイワナとヤマメ、ニジマスの捕獲数の上限を1人1日で計5匹とし、5匹を超える場合はその場で再放流するよう定めた。違反者は罰金などの処罰が科せられる場合がある。…

The Yomiuri Shimbun 2016年05月03日

読売さんの良記事。

釣りを続けながら魚を保護する方法はたくさんある。

『イワナをもっと増やしたい! 「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法』(中村智幸著)は渓流魚を増やす方法を大きく、「種苗放流」、「漁獲制限」、「生息環境の保全・保護」の三つに分けている。このうち「漁獲制限」は釣り人に密接に関わってくる。

「漁獲制限」の中にはさらに様々な方法がある。それぞれにメリットとデメリットがあるので、その釣り場の特性と利用状況に合わせて選択する必要がある。具体的には、禁漁期の設定、禁漁区の設定、体長制限、釣法・釣り具の制限、漁期の短縮、尾数制限、人数制限、子供専用区、輪番禁漁、ゾーニングなどが挙げられる。

上記のうち、「尾数制限」とは、釣った魚を釣り人が持ち帰ることのできる魚の数を、あらかじめ決めておく規則のことだ。いま日本の内水面(川と湖)には、尾数制限を漁協が遊漁規則に入れている釣り場が何カ所かある。

尾数制限といっても、渓流域でのマスの持ち帰り尾数を、たとえば「100尾まで」に制限しても(20尾だとしても)、実効的にあまり意味がない。逆に、「持ち帰りゼロ」(キャッチ・アンド・リリース)は、禁漁の一歩手前であり、釣り人をもっともきびしく制限する。「100尾まで」と「キャッチ・アンド・リリース」は、どちらも尾数制限の両極端だ。

1990年代以降、日本のマス釣り場にはキャッチ・アンド・リリースの導入が流行した。だが、どこの釣り場でも「キャッチ・アンド・リリースにさえすれば」よい釣り場になるわけではない。そのことをここ20数年の各地での事例の積み重ねによる経験で釣り人は知った。(「A History of Angling, Fisheries Management and Conservation in Japan 日本のマス釣りを知っていますか 」 Horiuchi 2016)

奥只見湖では周知のように、ここまで釣りへの色々な制限を試行してきた。(上記「A History of Angling, ..」でも奥只見湖の経緯に触れている) 今回の「持ち帰りは5匹まで」の宣言が注目されていいのは、まさに「5匹まで」というその数字にある。

奥只見湖の釣りを大切に考える人々は、「20尾」でもなく、「ゼロ尾」でもなく、「5尾」を選んだ。持ち帰りが完全禁止じゃなくて、5尾までならいいよ、ということだ。奥只見湖の魚と人々がどうつきあってきたか、奥只見の自然の豊かさを人々がどのように考えているのかと呼応して、たいへん興味深い。

釣りの楽しさの本質を分かっていた開高さんも、納得しているんじゃないかと個人的に思うわけです。

2016年05月03日|The Yomiuri Shimbun
2016年05月03日|The Yomiuri Shimbun
『イワナをもっと増やしたい!』第2刷完成。ぜひお読みください。