この本ではじめて提唱され一般的になった概念や新語は多数。その影響はフライフィッシングの世界観を変えたとまで言われるほど。釣りと自然と魚にまつわるもっとも新しい古典です。
この新装版には、著者描き下ろしの大判イラスト特別付録「シマザキワールド11」がついてきます。これまでのフライフィッシングの常識が根底から覆される前代未聞の内容です。
著者紹介
島崎 憲司郎(しまざき けんしろう)
『新装版 水生昆虫アルバム』に寄せて
『水生昆虫アルバム』という書名を自分で付けておいてこんなことをボヤくのも何ですが、この本を単なる水生昆虫の写真集ぐらいに見ている方が今だにいるんですよネ。人それぞれですから、もちろんそれでもかまわないんですが、「それじゃもったいないなァ」と思います。せっかく高いお金出して買ってくれたのにねェ…。
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この本の値打ちは「写真+文章+イラストレーション」の三つどもえによって、読み手の方々が自発的に何かを「ひらめく」ように仕組んであることなんです。一人一人全く異なるフライフィッシングの経験や好みや思い入れがいっぱい詰まった読者の方々のそれぞれの脳のファイルに自然にアクセスして、「ア、思い出したぞ、そうそう、これってあのことだな」とか「オッ、こいつがここで言ってることは俺様のあの手に応用できるな、フヒヒ」というように脳が活性化する呼び水になればいいなと思いましてね。それには右脳と左脳の両方を刺激するのが一番いいんです。
世の中のほとんどの本は「写真は写真、文は文、イラストはイラスト」というように何人かで分担しているようですが、この本は全部僕一人でやっています。イラストなどは、本職のイラストレーターに任せた方が絵自体は巧いに決まってますが、上手下手は別にして、著者の手ずらからなることの効用は小さくないはずです。この方が隅々まで神経が通いますからね。ハタとひらめくキッカケは、案外微妙な細部に潜んでいたりするものです。少なくとも絵の巧拙にはあまり関係がない。というふうに開き直り、手間を惜しまずトータルで引き受けた次第です。「写真だけ見てるんじゃもったいないなァ」とさっきボヤいた意味が解ってきたでしょ。何だそういうことだったのかと見直して戴けば、たぶんそれまで見落としていた細かなところにもヒントが散りばめてあることにも気づくはずです。そのひらめきを心にとめて再び写真を眺める、あるいは本文を再読してみる、するとまたピンとくることがあったり、思いもよらぬ釣りやタイイングのアイデアが生まれるかもしれません。
いいですか、あなた自身の感性で「自分でひらめく」んです。「ナントカ川の何々橋の下のプールでコレコレのフライでどうこうすると釣れる」とか何とか言ってるんじゃないんですよ。
本書の初版(1997年)は『フライの雑誌』に87年から93年までの6年間連載した『水生昆虫アルバム』が土台になっています。Part 2の部分が連載記事の大幅改訂増補版ということになりますが、そこから導き出した普遍的な原理部分をフライフィッシャーマンの観点で整理したPart 1/「Uuiversal View」(ユニバーサル・ビュー)という書き下ろしを合体させて単行本化していることが大きな特徴です。もし、この部分を加えていなかったら、「何川の水生昆虫とフライフィッシングの何々」という程度の、日本の一地方に縛られたローカルマニュアルの域を脱していなかったことでしょう。売れても精々三千~四千部止まりだったはずです。良い意味でも悪い意味でも「ローカル」だった『水生昆虫アルバム』は、「Uuiversal View」という普遍性を帯びて変態し、『A FLYFISHER’S VIEW』という統合タイトルの翅を伸ばして羽化したのだと僕は考えています。
Part 2には、それぞれの昆虫ごとに羽化の全体の流れを複眼的な視点でイラストで表した見開き2ページの図版を23図追加しましたが、この見開き図なども Part 1のUuiversal Viewを具体的に展開した実例ですし、本文の方もその線に沿って連載時には欠けていた部分を増補しています。つまりPart 1とPart 2とは分離しているのではなくて、相互にリンクしているわけです。
変な話ですが、僕はギターを弾きながらフライのことに思いを巡らしたり、釣りをしながらギターのフレーズが頭に浮かんだりというふうに、脳の中では異なることを同時にやっていることが多いんです。こういうことは誰でもあると思うんですが、僕の場合は子供のころに木から堕ちて頭を強くぶつけたせいなのか(←笑)、この並行処理の習性が人様より強いんじゃないかという気がします。「お前は何考えてるのか解らないヤツだ」なんて子供のころによく言われたもんです。
でも、この特異体質(?)が時には効を奏する場合もありましてネ、たとえば小さな水生昆虫の羽化行動を観察したり撮影したりする場合でも、自分が実際に見ているクローズアップの視野と並行して頭の中では時間を前後させた全体の流れを漠然とイメージしていたり、必要とあらば水中の魚の視点に切り換えたりという具合。何かを考えたりするにも複数チャンネルを同時進行させているフシがある。こういうマルチ思考のいいところは「それは全体の中でどの部分なのか」という点をいつも押さえておけることです。ここを押さえおくと、よしんば間違ったとしてもその間違いに自分で気づきやすいし、肩の力を抜いて楽しみながらやっていても、ひょんなことから物事の、本質というか本性というかキモの部分がチラリとかいま見えたりもするんです。
全体を見渡さずに「部分」だけを切り取って観察してしまう向きが多いようですが、それではエピソードの断片に過ぎず、労多くして実りは少ないんじゃないでしょうか。さながら、外国語に取り組むのに文法をないがしろにして単語だけで間に合わすようなものです。←僕の経験によると、それでも大体の話は何とか通じるようですけれどネ(笑)。
本書を企画した故中沢孝さん(『フライの雑誌』創始者/初代編集長)は、初版三千部を予定していたのですが、Part 1の原稿や図版を手にして何か感ずるところがあったのか、ただちに二千部加したのでした。三千部売れるだけでも上々といわれるこの種の大型本としては異例の初版五千部は余りにも多過ぎるのではないかと思われましたが、何と最初の四週で八割方さばけてしまい、あれよあれよという間に完売! その後の増刷分も難なく売り切れてたちまち三刷りという具合に幸いにも版を重ね、今度の新装版につながっているわけです。これもフライ関係を始め色々な分野の影響力のある方々が雑誌や書籍などで身に余る書評を次々に書いてくださった賜物と感謝しています。このようなありがたいお力添えがなければ、僕みたいなロクな教育も無い一介の野武士が書いた馬鹿高い値段の本が重版を得ることなど決してなかったことでしょう。
関係者の間では語り草ですが、初版刊行予定が一年も遅れてしまった際は、全国から苦情や批判や中傷や罵倒の嵐がとめどなく続き、まさに地獄の一年間でした。あの時、もし安易に妥協してしまっていたら…と考えるとゾッとします。下手すると、フライの雑誌社の屋台骨まで傾かせてしまったかも知れません。
余談ですが、その当時、僕は地元の漁協の仕事もしておりましたので、シーズンさなかの時期などは朝五時前から昼過ぎに至る野外のきつい作業が時には二日に一日以上という状況の中でクタクタになって帰宅して仮眠し、目をショボつかせながら朝方まで原稿を書いたりイラストを描いたりというハードワークの日々でした。まだ四十代中頃だったから何とかしのげたものの、あちこちにガタがきている五十五歳の今では、とてもじゃないですが無理でしょう。
収録写真のほぼ全てはオリンパスOM1/OM2という一昔前のアナログカメラと、コダクロームやフジクロームなどのフィルムによるものです。写真の巧拙は別として、フィルムで撮った写真には独特の味や空気感がありますので、デジタル写真が当たり前になればなるほど、逆に新鮮な面もあるのではないでしょうか。現在水生昆虫の写真を撮影しておられる方々にも参考になる点もあるかと思います。今は製造すらされていない旧式機材で撮ってもこの程度の写真が撮れるということは、最先端のデジタルシステムを使えば桁違いに大きな可能性もあるはずですので…。
僕の場合、これまで色々と眼を酷使し過ぎたせいか、日に日に視力が衰え、ニコンやキャノンのデジカメなども人様に勧められて一応持ってはいるものの、そのマニュアルを読むのすらシンドイ始末(笑)。今や小さな虫にレンズを向けたとしても、散歩がてらの戯れにしか過ぎません。この本を叩き台にして、あなたの素晴らしい写真を撮ってください。
この本を買おうかどうか迷っている方の中には、御家庭の事情や何かで遠くに出られない立場の方がおられるかも知れません。ひょっとするとその人は、海外でもどこでも自由に行ける人たちから、俺はアメリカの何々川に何十回通ったとか、誰彼でさえ十何回行ってるとか、「それに引き換えキミは、みすぼらしい田舎の川をウロついているだけじゃないか…」というようなことでも口にしたげに見下ろされているフシはないでしょうか。そういう人にこそ、ぜひ本書を捧げたい気持ちです。なぜなら、この僕がまさにそういう立場だったのですから。そんな僕が背水の陣で書いたこの本を読めば、「よーし、オレも一丁やったるかい」と元気がモリモリ出るはずです。
good luck! 島崎憲司郎
本文紹介
Part 1 Universal View A New Fly Fishing Approach to Reading the Hatches
フライフィッシングの立場で水生昆虫の羽化を読み解く新しいアプローチ
A FLY FISHER’S VIEW Part 1
1)イマージング・ガス 羽化する虫のオーラと気
イマージング・ガスとの関係による3+1タイプのイマージャー 体内イマージング・ガスを示唆する実例
2)ハッチ・コード われわれにとって羽化とは何なのか
ハッチ・コードの考え方と特徴。フローティング・ハッチ、水面羽化、ダイレクト・ハッチ、水中羽化、クライミング・ハッチ、離水羽化、フレキシブル・ハッチ、可変羽化
3)BFコード 水面と昆虫の絡み方
昆虫の浮き方のフライフィッシング的解釈と12のBFコード。各BFコード解説。補足(4)光のいたずら。フィッシュ・ウインドウとライト・パターン。水中から見たBFコード。
4)Part2のための補足
改訂版水生昆虫アルバム解題。楽屋話。虫の名前の問題。ハッチの図解について。
Part 2 Individual View 23 Examples From My Home Rivers
23の実例 改訂版水生昆虫アルバム
フローティング・ハッチ-The Floating Hatches
水生昆虫アルバムの舞台裏(1)ユスリカ、コカゲロウ、ヒゲナガカワトビケラ、アカマダラカゲロウ、シマトビケラ、モンカゲロウ、フタスジモンカゲロウ、ヤマトビケラ、キイロカワカゲロウ、 ニンギョウトビケラ
ダイレクト・ハッチ-The Direct Hatches
水生昆虫アルバムの舞台裏(2)ウスバヒメガガンボ、ブユ、オオマダラカゲロウ、フタバコカゲロウ、エルモンヒラタカゲロウ、ウエノヒラタカゲロウ、シロタニガワカゲロウ。エクストラショット(1)ミヤマタニガワカゲロウ属
クライミング・ハッチ-The Climbing Hatches
水生昆虫アルバムの舞台裏(3)ナミフタオカゲロウ、エクストラショット(1)フタオカゲロウの仲間、チラカゲロウ、ミドリカワゲラ、エクストラショット(2)ミステリアス・ストーンフライ、コカクツツトビケラ、エクストラショット(3)ケースド・カディスの仲間、アオヒゲナガトビケラ、アキアカネ、エクストラショット(4)トンボの仲間
『水生昆虫アルバム』には
「BF-Code Extention Board」 が付属します。これは収録された23種の水生昆虫のBFコード(Basic Floatation Code。昆虫の浮き方をフライフィッシング的に解釈しコード化したもの)と対応して作られており、その水生昆虫がフィッシュウインドウの外側および内側で、魚からどのように見えるかそれぞれの水生昆虫の「ハッチ・マンダラ」のページでシュミレーションできます。
抜粋
島崎憲司郎氏の仕事 『フライの雑誌』編集部から
『水生昆虫アルバム/A FLY FISHER’S VIEW』は、釣りの世界に限らずテレビ、雑誌、新聞など各種媒体で精力的な活動を続ける島崎憲司郎氏の、これまで唯一の著作です。初版は1997年。執筆・編集を吟味したあまり、発行予定を一年以上も過ぎても発売されず、当時はたいへんなご心配をおかけしました(このあたりの裏事情は『フライの雑誌』第70号にご本人が書いています)。
いざ発行されると『水生昆虫アルバム』以前と以降とではフライの世界観が変わったとまで言われるほどの反響が湧き起こりました。今ではふつうに多くのフライフィッシャーマンが使っている「イマージング・ガス」はもともと島崎氏が提唱した新概念です。その他独自の発想や視点が本文中に続々と登場していることに、初めて読まれる方は驚かれることでしょう。
そのロングセラー『水生昆虫アルバム』の在庫が品切れになったため、新装版『水生昆虫アルバム』の発行となった次第です。版型、カラー頁、写真のクオリティは変わりありません。
フライフィッシングとは突き詰めれば屹立する一つのライフスタイルです。『水生昆虫アルバム/A FLY FISHER’S VIEW』は、フライフィッシャーマンがフライフィッシャーマンであることの誇りと喜びを、私たちに提示してくれます。
読者からの声
本当のことをいえば、かつてこの雑誌に連載されていた「水生昆虫アルバム」をまとめた本だと思っていた。しかし、このAFVは違っていた。とても面白い。特にパート1。魚から見た虫の状態がフライフィッシング的にまとめられている。オオマダラカゲロウのイマージャーが水中できらめかないことにビックリ。(中略)もちろん、本題のパート2もよかった。そのチラカゲロウの項に某氏の味見実験のことが載っていたが、1989年8月の「アングリング」誌にもそのような記事が載っていたことを思い出し、見てみると、やはり…。この某氏とは島崎さんご本人のことか。それにしても1989年ころすでにこのレベルで水生昆虫を観ていたというのは、すごいの一言。(福島県/26歳)
今夜仕事から帰って読んでます。8時30分に帰っていま11時。風呂も入らずビールだけ飲んで、読む。とりあえず、付録から読むというのは、月刊マンガ誌で育った世代のクセでしょうか。本編の構成を見ると納得。アッケラカンとした散文的なサワヤカサがあります。科学的でもあります。これから風呂に入って、また読みます。(福岡県/44歳)
こんな素晴らしい本ができるのなら、発行が遅れるのは気になりません。のんびりやりましょう。(東京都/38歳)
少し値段が高いかなと思いつつ予約しましたが、内容をみて納得しました。長~く待ったかいがありました。これからもこのような本の出版をお願いします。(愛媛県/38歳)
翌日の朝まで夜通し目を通しました。水生昆虫がハッチするときは魚がライズするときでもあり、釣りをしたいジレンマにかられながらネットでイマージング中の虫を採ってながめる、そんなこんなで今年の春のいい時期を過ごしましたが、来年春も竿をほったらかしにして川岸で背中をまるめて虫をながめる自分を想像すると、こわいです。(岐阜県/32歳)
ウーン。と唸る出来栄え。ところどころの島崎流のユーモアが塩コショウ。私にはとうてい到達できない世界だから、この本は何回読んでもオモシロイ。写真もキレイで詩のようにも思える。(岩手県/43歳)
全ての読者からの声を読む/折りたたむ
おそらく日本だけでなく世界的にみても、これだけの本はあまり見当たらないようなもので、とくに魚の視点からみた水生昆虫の生態は、これを専門にしている研究者もおよばないところがたくさんあります。島崎さんにも別に手紙を差し上げようと思いますが、これだけのものを作られた貴社にも深い敬意を表します。(石川県/67歳)
「ここまでやるか、ケンシロウ」って感じ。とにかくやることが半端じゃない。長くエサ釣りやってきて水生昆虫、いえ、カワムシっていうとクロカワとチョロとオニチョロで片付けてたオレなんか、BFコードなんて鳥肌がたつ思いで読んだネ。(東京都/62歳)
すばらしい作成方針・内容の本が出来たなという気がします。だれもが知りたいがだれもやっていない貴重な本ですね。日本でこのような本が出版されたことがうれしいです。(神奈川県/36歳)
この本が素晴らしいと思うのは、「水生昆虫アルバム」であって「パターンブック」ではない所です。ハウツーやマニュアル本ばかりの昨今、「鍵はあげるから、後は自分で開けな!」て所がいい。近頃、「何故釣れないの?」から「何故釣れたのだろう?」に考え方が変わってきた僕にとてもタイムリーです。この本で心配事があります。これだけの内容を入れる引き出し(おつむ)が無いこと、釣りの最中虫たちを見るルーペが取り出せるかどうか…です。(富山県/33歳)
少年の心を持ちつづけた才能のある照れ屋の大人がつくったんだなーという印象です。島崎氏のことは、ドライシェイクでお世話になるくらいですが、実はすごく照れ屋な性格の人なのではないのかなと思いました。写真は圧巻でした。今まで長年フライフィッシングをやっていて初めて知ったことがたくさんありました。(東京都/39歳)
半年や一年ぐらいの遅れでガタガタしてるようじゃ、フライの雑誌の読者としてはまだまだだね。でも、そんな人たちも今ごろこの本をみてブッとんでじゃってるでしょうね。しかしまあ、よくやってくれました。何といっても圧巻は「ハッチ・マンダラ」。ハッチ・コードにBFコード。なんとまあこれだけの情報量を組み入れ上げたことか。いまさらながら感心するばかり。「マッチ・フック・ガイド」のTMCフックを「我田引水」と言ってますが、何をおっしゃるやら。いまやTMCフックはワールドクラスのスタンダードですゾ。「描きなぐった」なんて言っちゃって、あの絵はとんでもなくイイ。フィットロックの「GUIDE TO AQUATIC TROUT FOODS」なんて吹っ飛びましたネ(俺様は英語が判らんしネ)。あの鱒がくどくなくて実にイイ。瑞々しい。オレは好きだね。それにしても「スゴイ」とか「さすが」とか「オーッ!」なんて言葉しか出てこない自分が情けなくなる。写真はもう、俺様なんてゴメンナサイだけで、ただ頭が下がるだけ。とくにオオマダラのイマージング・シーンは凄すぎて寒気だってしまった。ヒゲナガ・ピューパ(BFO)は夢に出てきてしまった。それに「楽屋話」や「舞台裏」が何ともシャレているし、この本の土台が少し見えたようでウレシイ。この手の本は正座して読むようなのばっかりだけど、「シマザキ節」でやっちゃうと、何とも判りやすく、オモシロク読めてしまう。そしてタメになる! それに「付録」ときたもんだ。これには泣けた。ああ、もう何を書いても同じことばかり書いているようなのでやめます。ほんとうにご苦労様でした。そして貴重な一冊をありがとうございました。(北海道)
目の前にライズを発見! フライフィッシャーマンなら誰もが胸を躍らせる瞬間ですが、そのライズを取れるか取れないかは、いかに「心」を落ち着かせることができるか、いかに自分の持てる「知識」を引き出すことが出来るか、そしてその知識を生かす「技術」を発揮することができるか、この三点によるところが大きいと思います。自分は今まで、このような時あまり知識に頼ることは無く、魚が捕食しているであろう対象に近い色と形のフライを結ぶことで、苦労すること無く、魚を手にすることができています。どんなに考えても、ライズを繰り返している魚をキャッチ出来なかった記憶はありません。もしかしたら、本当にシビアなライズという奴にあったことが無いのかも…。ところが先日、魚野川水系のある堰堤で、イブニング時に、ライズしている岩魚に対して、おそらくカディスだろうと、茶色のフライを流すと、3投目でヒット。さて何を食べているのかとストマック・ポンプで魚の胃内容物を確認すると、夥しい数の今までに見たこともない昆虫の成虫(おそらく)が出てきたのです。いままでもメイフライやカディスを偏食している魚は見てきましたが、その時はいままでに見たこともない昆虫(双羽目の1・5センチほどの水生昆虫)を偏食していて、気持ち悪ささえ覚えました。自分はその時に、水生昆虫についての知識の少なさに気づき、「水生昆虫アルバム」を真剣に、まるで試験に臨む学生のように、読んでいるところです。読むうちに、島崎さんのフライフィッシャーとしての、水生昆虫と魚との関係についての考察の鋭さに、ただただ感心するばかりです。水生昆虫についての入門書といってもよいほどの分かり易さで、こんな私でも理解しやすくありがたく読ませて頂いております。水の中の小宇宙へも、この「水生昆虫アルバム」からなら、飛び出すことができる。そんな風に感じています。(神奈川県/28歳)
周囲にフライをする人がいなかったため、独学でフライフィッシングを身に付けようとしてきた私にとって、最も参考になるのは、本とビデオでした。キャスティングやフライの巻き方の参考文献は沢山ありましたが、水生昆虫についてのわかりやすい本というのは今までありませんでした。結局「○○カゲロウは…で」という説明と図が載っているだけで、生きている昆虫の雰囲気が伝わってこないものが多かったのです(私の買っている本がよくないのかもしれませんが…)。しかし、『水生昆虫アルバム』は、豊富な写真(特にふだん目にできないような水底から水面への浮上の様子など)と、あの絵(特にトビケラの独特の動きは興味深いものでした)で生きている虫の姿が鮮明に目に浮かぶものでした。『水生昆虫アルバム』は今私の車に乗っており、釣り場に早く着いた時や休憩時には目を通す愛読書になっています。 (北海道/32歳)