フライの雑誌-第61号

フライの雑誌第61号
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日本フライフィッシングの軌跡

フライフィッシング夜明けのころの釣具業界ウラ話
「六角竿」から「ゲイシャライン」、「ハーディー来日」まで

座談会:山田福次郎さん|斉藤英雄さん|佐々野征男さん|山城良介さん

税込価格1,250円

ISBN 9784503151759


INDEX

004 特別座談会/日本フライフィッシングの軌跡 フライフィッシング夜明けのころの釣具業界ウラ話 「六角竿」から「ゲイシャライン」、「ハーディー来日」まで
山田福次郎さん|斉藤英雄さん|佐々野征男さん|山城良介さん
司会:堀内正徳(本誌)
017 スタンダードフライ・タイイング図説(30)/ 写真で見るバスバグ変遷記/ディアヘアーをフレアさせまくるゾ編Vol.2 備前 貢
050 フレッシュ・マルタを狙え! 今年も多摩川はでかいマルタウグイで埋めつくされた 堀内正徳
078 個性派フライショップをたずねて―― (1) ウナギの寝床にゆる~く並んだバンブーロッドたち 堀内正徳
082 ペナとリンダ 浅野眞一郎
025 隣人のフライボックス[特別編] そして時は流れた! 8年目のフライボックス 角 敬裕
032 優しき水辺(53) 斉藤幸夫
034 皇居のお濠のかいぼり作戦」は、ヘンだ 小柳健太郎
038 釣り場時評(37) ブラックバス駆除騒ぎに感じる気味悪さ 水口憲哉
040 発言! なぜブラウントラウトは、北海道から駆除されるのか 三浦幸浩
043 トラウト・フォーラム通信 トラウト・フォーラム事務局
044 アメリカ人のフライフィッシング文化考(16) ニューヨークの五月の釣り 西堂達裕
046 オレゴンの日々(19) 養父の死 谷 昌子
054 望ましい川の姿を取りもどすために「自然再生促進法」をどう利用するか 田中淳志
058 フィールド通信/ 多摩川本流2002年ニジマス秋放流てん末記 編集部
063 九重町界隈通信(6) 私にとっての阿蘇白川 田中典康
066 ネルソン便り(7) ティトーキ・プレイスの隣人たち(三) キョーコ・マーフィー
071 真夜中のフィッシャーマン 碓井昭司
075 現代フライ用語の基礎知識2003 【スカイラインGT-R編】 橋本辰哉
093 『二つの心臓の大きな川』私感 渡辺裕一
098 クーロウのパブ 田中啓一
108 読者通信

内容紹介

フライの雑誌第61号-01
フライの雑誌第61号-02
フライの雑誌第61号-03
フライの雑誌第61号-04
フライの雑誌第61号-05

特別座談会/日本フライフィッシングの軌跡
現在わたしたちが楽しんでいるフライフィッシングは、もとは海外から移入されてきた釣りだ。日本のフライフィッシングの変遷を考えるとき、かつて東京の京橋にあった『つるや釣具店』の存在は重要だ。日本のフライフィッシング用品は敗戦後まもない時期に『つるや釣具店』で扱われ、以降、時間の経過とともに全国へひろがり、現在に至っている。

先日、その京橋『つるや釣具店』で働いていた方々に集まっていただき、お話をうかがう機会があった。集まっていただいた四名の入社時期と退社時期をならべると、ちょうど敗戦後すぐから現在までをもれなく網羅した。

今回は、敗戦直後から高度成長期までの時代に区切ってお話をうかがった。それまで知られていなかった珍しい釣りであり、新しい文化であるフライフィッシングへの驚きと興味に追われ、やがてやって来るフライフィッシングの開花期に至るまでの、熱い日々の記録だ。最初期の国産フライ用品から、誰もフライを投げ入れたことのない処女釣り場まで「その季節」を知らないフライフィッシングを愛する者にとっては、興味津々なエピソードのオンパレードとなった。

スタンダードフライ・タイイング図説(30)A Modern Approach to Classic Bassbugs and Spinning Deerhair Techniques/写真で見るバスバグ変遷記/ディアヘアーをフレアさせまくるゾ編Vol.2 備前 貢
前号でご紹介しましたが、一九〇〇年代初頭のヘンシャル博士による「ヘンシャルバグ」を皮切りに、一九三〇年頃まで、バスバグを使ったバスのフライフィッシングは、文字通り日進月歩の勢いで変化し、また進化していきました。

が、皮肉なことに、その進化がジョー・メッセンジャーやオルリィ・タトルといった優れたバスバグ・タイヤーの手によって、よりフライフィッシングならではのバス釣りへと昇華しようとしていた矢先、バス釣り自体が急激な変化をとげることになります。

それは、三〇年代中頃を境に物凄い勢いで台頭し始めたスピニング・タックルの登場による、釣り人達のルアー釣りへの嗜好の変化がまず挙げられます。それによって、それまでポッパーやバスバグの開発に余念がなかったメーカーや業者も、こぞってルアーの開発製造に専念し始め、フライ・タックルのためのバス・フライは二の次になってしまったのでした。そのため、依然バスバグの類は売られていたものの、旧態然としたそれらよりも、変化と刺激に満ち溢れたルアーに人々の興味が向くのは当然のこと。

巨額の賞金が動くトーナメントから、釣りを始めたその日から苦労なく扱える手軽なスピニング・タックルまでの幅広さを兼ね備えたルアーによるバス釣り。フライ・タックルによるバスバギングは、その影にすっかり隠れてしまったようです。

今回は、このバスバギング暗黒時代と呼ばれた一九六〇年代から、バスバグ革命とまで言われた一九七〇年代のバスバグを見ていくことにします。

フレッシュ・マルタを狙え!
今年も多摩川はでかいマルタウグイで埋めつくされた
堀内正徳(本誌)

日本のウグイ属にはウグイ、ウケクチウグイ、マルタウグイ、エゾウグイの4種がある。名前は違うが、どれも「ウグイっぽい」姿形をしている。その中でもっとも大型に成長するのがマルタウグイだ。本州での渓流や湖でのマス釣りで、外道にかかってくるのはせいぜい尺サイズまでのウグイ、いわゆる蕫本バヤ﨟で、マルタウグイとは異なる。

本誌第57号で東京・多摩川のマルタウグイ釣りを紹介したところ、反響が多かった。平均サイズ50センチ以上の大型天然魚が身近な川で狙って釣れるというのは、いまではすっかりメジャーになった、コイのフライフィッシング以来のニュースだった。もともと多摩川には多くのマルタウグイが自然遡上していた。それが高度成長期の河川汚濁によりマルタウグイも激減し、30年ほど前にすっかり姿を消した。それからしばらくは、多摩川にマルタウグイの姿は見られない時期が続いていた。

個性派フライショップをたずねて―― (1)アンクルサム
群馬県松井田市
ウナギの寝床にゆる~く並んだバンブーロッドたち

本誌前号(第60号)の特集記事『がんばれ、フライショップ!』では全国各地および海外のフライショップの現状にスポットを当てた。暗い世相を生きる釣り人にとって、フライショップは砂漠の中のオアシスだ。身すぎ世すぎに追われる多くの釣り人は、水辺に遊び、日々を釣り暮らして過ごせない。いつまで続く茫漠たる荒野のなかで、フライショップは釣り人が釣り人であることをふと思い出せる唯一の場所であると言ったら言い過ぎか。愛する趣味にまつわるモノと情報に囲まれて、ひと息ついて明日への鋭気を充填できるかけがえのない場所、それがフライショップだ。

フライフィッシング業界も不況のようだが、そんな中でも釣り人たちに支持されているフライショップがある。モノがあふれている現代において、人気を集めるフライショップはショップ自身が意識するしないに関わらず、それぞれ独特の個性を持っているものだ。編集部に入ってくる各地のユニークなフライショップ情報のなかから、世の中のしがらみにおもねることなく釣り人の臭覚と好奇心によって厳選し、東奔西走できるかぎり紹介していきたい。

ペナとリンダ
浅野眞一郎  「アサノ、エワン川に行きたくないか。一緒にキャンプをしながら釣りをしよう」

ぼくは、アルゼンチンのフエゴ島にある世界最南端の町ウスアイアにいた。ちょうど一年におよんだ南米をめぐる長い釣りの旅の途中のことだ。フエゴ島の鱒釣りにとり憑かれたぼくは、ウスアイアをベースにして島中を釣り歩いていた。

そのウスアイアで、タンギートと呼ばれる釣りガイドと知り合った。そのタンギートからの願ってもない釣りの誘いだった。

エワン川の地主とアミーゴ(スペイン語で友だちを指す)の関係にあるタンギートは、国道から釣り場までつづく車道のゲートの鍵を借りることができるという。それは一時間歩くかわりに一五分間車のシートに座っていれば川辺に立てることを意味した。

しかし、くわしい話を聞いたぼくは、ふたつ返事でその誘いを受け入れる気にはなれなかった。

「ブエノス・アイレスから客が二人きて、二泊三日でエワン川で釣りをする。だからおまえも来いよ。もちろんおまえも釣りをしてもいい」

高いガイド料を払って雇った釣りガイドが、友だちの釣り人を連れてくる。お客は決して快く思わないだろう。ぼくの役まわりはガイドが連れてきた友人だ。想像するだけで気が滅入った。

ぼくは自分の気持ちをそのままタンギートに伝え、その厚意をやんわりと断った。だが、タンギートはおまえが余計な気をつかうことはない、と首を横にふった。

「前にもアメリカ人のお客のときに、友だちをひとり連れていったんだ。客は文句を言った。でもおれはこう言い返した。『お客さん、ここはモンタナでもイエローストーンでもない、パタゴニアなんだ。アミーゴ優先の土地なんだ。ここではおれのやり方に従ってくれ』ってな。今度の二人はアルゼンチン人で、以前にも何度かガイドしたことのある人たちだ。とてもいい人たちだから、まったく問題はない」

まったく困ったガイドにはちがいないが、自分の場所で自分の流儀をつらぬこうとする友人と、その言葉が嬉しくもあって、ぼくは覚悟を決めて同行させてもらうことにした。

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