フライの雑誌-第112号(2017年7月31日発行 品切)から、[TOPICS]を公開します。副題は「前号から今号までの間に起きた、釣り人に関係あるかもしれないトピックス」、編集部まとめです。3項目あります。
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TOPICS|編集部まとめ
(フライの雑誌-第112号掲載 2017年7月31日発行)
前号から今号までの間に起きた、釣り人に関係あるかもしれないトピックス
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○水産庁産業管理外来種管理指針パブコメに意見を提出した
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提出意見1)
●記述「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」は水産基本計画及び内水面漁業振興法の理念に反している。 ●ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトは内水面漁業経済の重要水産魚種である。とりわけニジマスは過去130年以上も国策で増養殖がすすめられてきた日本の内水面漁業の最重要魚種のひとつだ。入手のしやすさ、歴史などの点でも他魚種への代替性はない。 ●三魚種の内、少なくともニジマスを生産者、漁業者、遊漁者、地域住民をつなぐ重要な水産資源として今まで以上に利用していくべきことは、水産行政の方向性として自明である。 ●指針に「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」と示すことは、漁業者と地域住民等が連携して行うはずの、あるいは現に行なっている、内水面多面的機能の発揮のための取り組みの妨げとなる。内水面漁業の維持と振興を、明確に阻害するものである。
提出意見2)
●「管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努める」とある。管理釣り場のほとんどは対策をとり得る環境にない。実効性のない指針は無意味だ。
提出意見3)
●記述「第5種共同漁業の新たな免許は、行わないことが望ましい。」は、漁業権の切替(継続)時にもマイナス要因となり、漁業権者数、漁業者数、遊漁者数を減少させ、日本の内水面漁業の崩壊に直結する。 ●河川に放流されたニジマス成魚が生き残って自然繁殖する可能性はほとんどないことを示す研究報告が、複数発表されている(加藤憲司など)。ニジマス放流をこれまで通り継続しても、在来種の生息に影響を与える可能性は低い。
提出意見4)
●日本の内水面漁業は長年、種苗放流を主体とした増殖を軸としてきた。その有り様が生物多様性の観点から問題視されるだろうことを、『フライの雑誌』誌面では1990年代から継続して指摘してきた。単行本『魔魚狩り』(水口憲哉)でも対応を求めている。 ●本来、水産庁はきっちり自分たちの「水産の本分」を明確にし、対策をとっておくべきだった。なにもせぬまま、現在に至っている。 ●生物多様性と水産との関係性を整理しないままに放置してきた結果が、〝産業管理外来種〟という水産的に訳のわからない概念である。水産庁が対応に苦慮するのは当然だ。 ●今からでも水産の本分に立ち戻り、水産庁がなすべきことは何かを重ねて検討してほしい。その上で、法令にもとづく新しい概念であるところの、産業管理外来種を水産的に適切に扱う指針を提示してほしい。
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●と、このような意見を提出した。日本の釣りは漁業の大枠の中にあるから書けるのはこれくらいだ。
●4/26の意見交換会で、「産業管理外来種の指定はニジマスの漁業振興にどんな影響を与えるのか」という堀内の質問に水産庁は「水産庁はこれまで漁業権にもとづいて内水面漁業を振興させてきた。これからも漁業権の範囲でしっかり振興させていく。」と回答した。内水面漁業振興策がうまくいっているのなら、今も内水面漁業は大いに伸びているはずだが、現実はまるで逆である。よく言うよと呆れた。内水面漁業がとっくに危機的状況にあるのは、自分たちが一番分かっているだろうに、現状を認めようとはせず、意見を聞く耳も持たない。意見交換会なのに。
●監督官庁としての水産庁が沈没したって一向にかまわないが、日本の釣りがこのまま水産庁と一緒に衰退、消滅するのでは、釣り人は困る。だから水産庁がんばれ、と言っている。それ以上でもそれ以下でもない。今からでも腹をすえて、理論武装し、仲間を増やし、世論を味方につけるしかないのだ。
●個人の楽しい釣りに、生ぐさい政治や行政のあれこれは関係ないとしても、個人が楽しく釣りをつづけるためには、政治や行政の動きと無関係ではいられない。
●といってこの先、趣味の釣りへ役所に手を突っ込まれるのは個人的には断じて拒否します。悩ましいところです。 (編集部/堀内)
「ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線」