FM桐生『Happy Smile ♫』 2021年6月15日放送 ◎ゲスト:島崎憲司郎さん+アシスタント 山田二郎さん ◎パーソナリティ 宮川麻里さん 斉藤美恵子さん(2)

【公開記事】

〈シマザキフライズ〉はたいへんなことになっていますよ。

FM桐生『Happy Smile ♫』 2021年6月15日放送
◎ゲスト:島崎憲司郎さん+アシスタント 山田二郎さん
◎パーソナリティ 宮川麻里さん 斉藤美恵子さん

FM桐生『Happy Smile ♫』
2021年6月15日の生放送から書き起こし

夢中になってやってるだけです。
努力は夢中にはかないません。
思いついたら、その場ですぐ作る。
上手、下手ではないんです。(島崎)

以下写真は「フライの雑誌」第122号(2021年6月発行):初公開 ホットワックス・マイナーテクニック Hot Wax Minor Technics 島崎憲司郎+山田二郎 より

FM桐生『Happy Smile ♫』 2021年6月15日放送
ゲスト:島崎憲司郎さん+アシスタント 山田二郎さん
(パーソナリティ 宮川麻里さん 斉藤美恵子さん)

(生放送)

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1から続く

─ 楽しいお話がじゃんじゃん出てきます。リスナーの方から質問をいただきました。「島崎さんは毎日どんな過ごし方をしていますか。」。

島崎 私の歳になりますとね、iPhoneのバッテリーの残量が30%くらいになってるようなものなんですよ。すると、何をするかじゃなくて、何を優先するかになります。するとまず、SNSみたいのはやらない。その時間を他のことに回す。ひとことで言うと、何をゲットするかじゃないんです。何を捨てるか。何かを捨てることによって、何かが入ってくるんです。手にいっぱい持っちゃうと、持てなくなりますから。

─ はい。

島崎 桐生動物園におサルさんがいますよね。冬の寒い時期に観ていると、ギンナンみたいのを両腕に抱えちゃって、もうそれ以上持てなくなってる。あれ離せば他のも持てるのに。

─ 握ったままだと幸せも逃げてしまう。(笑)

島崎 私は若い時から身の程を分かってます。人様のできることを自分はやろうと思ってもできない。写真家のソール・​ライターが、〝肝心なことは何を得るかではない。何を捨てるかだ〟と言っています。これは写真でもフライでも同じです。

─ 削ぎ落とされたあとに一番美しいものが残るんですね。人生そのもの。

島崎 文章もそうです。俳人の山田耕司さんも同じことを仰っていますね。山田耕司さんはすごい人ですよ。私は詩を書くときに、「K」っていう名前を使うんです。桃太郎さんのお店に置いてあるノートに私の作った詩が書いてありますよ。印刷されたものもあります。シマケンは毛鉤職人ということになっていますけど、色んなことをやっている中のひとつです。他の人がなんて言おうが、別にいいんです。これから何を作るかが大事で、私の場合は、まだ一番肝心なことはやってないんです。

─ これからの人生のビジョンですね。

島崎 それが〈シマザキフライズ〉と呼んでいるものです。私が作ったフライに限らず、今まで書いた文章とか「K」名義の詩だとか、未発表のものがずいぶんあるんですけど、フライの雑誌社の堀内さんに、みんな預けて保存してあるんです。私もそんなに先が長くないのを分かってますから。

─ そんなことないですよ。

島崎 この間、その堀内さんから「パソコンのパスワードはぜんぶ紙に書いておいてください。わたしもそうしてるんですから。」って言われちゃった。

─ 分からなくなったら大変ですからね。(笑)

島崎 おっかないですよ。一瞬で消えちゃいますから。

島崎 さっきのご質問で、「普段はどんなことをしていますか」と聞かれましたよね。私は若い頃に黄色のNAロードスターに乗っていたんです。今は四世代目のND​ロードスター。小林隆子さんの番組で、昔は黄色いの乗ってたから今度は赤いの買おうかな、って言って、その勢いで今日乗ってきた赤いブーブーを買っちゃった。

─ カッコいいですね、あの赤いお車。

島崎 私はヤオコーへ買い物に行くとき、一週間分くらいまとめ買いするんですが、オープンカーなら荷物を上から積めます。前のフォレスターだとわざわざドアを開けて荷物を積むので、なんか所帯染みてるんですよね。いまの赤いのは、だから下駄です下駄。

 下駄!(笑)

島崎 私の年代だともっと高価な車に乗る方が多いんでしょうけれど、そういうのには乗りたくないんです。ND​ロードスターはバランスよくできていますよ。コンパクトで走りがいいです。

─ エンジンの音もいいですね。

島崎 音楽をやっているんで、エンジンの音は気になります。吊るしであれだけ音がいいのはいいですね。ロードスターは2016年に「ワールド・カー・オブ​・ザ・イヤー」「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を二つともとってます。日本車ではほかにはない。スポーツカーというと、日本人はつい「人と競争する車」のように思う傾向があるんですが、スポーツの語源は「戯れ」「遊び」「気晴らし」です。意味が違う。だからスポーツカーは我々みたいな高齢者が乗るのにちょうどいい。でも普通は、おじいちゃんはもういい歳なんだからそんな車に乗るのはやめなさい、ってご家族に言われちゃうんですって。

─ マニュアルカーは足を二本使いますよね。

島崎 そう。ボケ防止にもなる。失敗したらエンストしてくれるので安全ですし。女性はマニュアル車に乗ると足がきれいになるらしいです。桐生の梅田の方へ行く途中で、木漏れ日があふれている道がありますでしょ。あそこを走るのは気持ちいいですね。車高が低いんで、お風呂の椅子に座っているようになります。

─ お風呂。あら(笑)

島崎 オープンカーに一番似合う季節は真冬ですね。シートヒーターをかけて走ると、露天風呂に入っているみたい。夜でも昼でも気持ちいい。コロナの関係もあるんでしょう、アメリカとユーロでロードスターはすごく売れているんですって。でも来年から法律が変わって、あのタイプの車は売るのも作るのも難しくなるらしいです。むかし桐生のナガオカ洋服店の旦那が、トヨタのスポーツ800に乗っていましたでしょ。ヨタハチ。あれいま完全レストアしてあると、一千万円以上します。ホンダのS800は四、五百万とか八百万もするんですって。だからああいう車を買っておくと銀行に預けるよりいいかもしれないですよ。

─ じゃあいま、島崎さんが一番興味あるのは、その赤くて楽しいロードスターですね。

島崎 だから下駄なんで。釣りに行く時も乗ってます。

─ では次の質問です。「島崎さんにとって、フライフィッシングとは」。

島崎 業(ごう)みたいなものです。好きとか嫌いとかじゃない。夢中になってやってるだけです。よく一生懸命やってますとか、努力しています、って言いますでしょ。努力は夢中にはかなわないです。今の季節は早く起きて、朝からフライを作ります。家の中でいつでもどこでもすぐ作業できる状態になっています。

─ 島崎さんのお宅へ行ったことがないと分からないと思いますが、本当に、家の中じゅう、どこでも作業できる環境ですよね。

島崎 むしろ作業スペースにどうにか住めるようになっている感じですね。もともと料理人だから、キッチンに鍋だとかなんだとか必要以上にありすぎるんですよね。

─ 島崎さんの作るお料理は本当においしいですねえ。

島崎 仕事で作るんじゃない料理は面白いですよ。

─ また食べさせてください。

島崎 今の私の料理はサバイバル料理で、生き残るために作ってる。俺だけ生き残るんだ、みたいな。といってもほら、バッテリーの残りは30%だから。

─ (笑)大丈夫です、またすぐ充電できます。

島崎 私がなんでSNSをやらないかは、こうやってラジオの生放送で喋っているとわかりますでしょ。何言い出すか分からない。すぐ炎上しちゃいますよ。危なくて仕方ない。

─ だから楽しいです。(笑)

─ 釣りの話に戻りますね。「フライの雑誌」にシマザキ・ホットワックスの解説記事が出ていますが、YouTubeにも動画がのっていますね。私拝見しましたよ。

島崎 あれは5月に出たばかりの新製品です。動画は今のところ全部で7本出ていますね。うちでフライを作りながら、iPhoneで適当に撮ってざっと編集しただけです。だから上の方の画が切れてたりする。

─ たしかに切れてました。(笑)

島崎 フライを作るスキルやアイデアを紹介してるわけですけど、あの動画はほんのプレビューみたいなものです。本当はもっともっとすごい、面白いのがいっぱいあるんですよ。それが「シマザキフライズ(SHIMAZAKI FLIES)」なんです。私は自分のスタジオに10年近く籠城しています。世間様との関わりは最低限にしてね、実務は山田にやらせてる。どんなアホでも10年間家の中でコツコツやっていたら、なんか出てきますよ。

─ 大好きですものね。

島崎 夢中でやってるだけですけどね。ここにきて、自分でもびっくりしちゃうことがたくさん出てきました。たとえば釣りでも、なんであそこで魚がUターンしちゃうんだろうとか、なんであそこで釣れないんだろう、っていう疑問が長年ありますよね。それらが今頃になって「あ、そうだったんだ。」って分かってきた。ひとつわかると、芋づる式に疑問が解けてきたんです。それで、気づいたことを現場で実践してみるでしょ。するとまったくその通り。びっくりしちゃいます。ある日突然、「もしかしたらこうなんじゃないか。」って思う時があるんです。そうしたら、そのアイデアをすぐフライに作ることですね。明日作ろうじゃだめ。くたびれていても、その場ですぐ作ることです。上手、下手ではないんです。

─ なるほど。

島崎 これから発表する「シマザキフライズ」はたいへんなことになっていますよ。桐生という街は渡良瀬川があって、日光も近い。自然環境が良いんですね。桐生だからすぐに試せる。私は若い頃に漁業協同組合に入っていたんです。三年ばかり理事の下っ端をやっていました。漁協の仕事は、水の入ったバケツを運んだり、ロープを川の向こう側へ渡したりとか、力仕事が多いんです。

─ 大変ですね。

島崎 川って、ものすごく流れが複雑なんですよ。渡ってみないと分からない。流れの強いところがあれば、弱いところもあって、浅いところ深いところ、石もある。気をつけていても作業の途中で流されそうになるわけです。実際に流されたこともあります。潜るのもいいですが、川で流されてみて、初めて分かることがたくさんある。そういうことはネットでは分かりません。

─ その複雑な川の流れを知った上で、フライをどういう風に流すか、魚はどうみてくれるのか、と考えるわけですね。

島崎 フライフィッシングでは、先端のフライだけを見ても意味がないんです。フライラインってあるでしょ。あのスパゲティみたいな太い糸。あれは先端に向けてだんだん細くなっています。先端は透明になって、しまいには髪の毛くらいに細くなって、その先にフライを結ぶんです。川でフライを泳がせるのにも、いろんなやり方があります。道路に吹き流しがありますよね。あれは英語でストリーマーっていうんですが、フライにもストリーマーっていう種類があるんです。日本でストリーマーフライというと、小魚を模したフライと言われることが多いようですが、本来のイメージは吹き流しです。風の中を泳ぐこいのぼりみたいに、フライの中を水が通り抜ける時に動いて、魚を誘うんですね。こういったことは、自分が川の中に入って、体験していないと分からないんです。だから両毛漁協の三年間は、私にとってとても役に立ちました。

─ 現場は違うんですね。

島崎 はい、本にもネットにも出ていないことが現場にはたくさんあります。えー、私の言いたいことはこれで十分の一です。

─ (笑) 全然時間が足りなくて申し訳ないです。そろそろお時間となってまいりました。

島崎 これ以上やると余計なことを言っちゃうんでね、これくらいでやめておきます。放送時間はあとどれくらいですか。

─ 1分ですね。

島崎 じゃあ1分で、山田二郎について補足しておきましょうかね。Mr.マリックさんは松尾幻燈斎の名前でYouTubeをやってるでしょ。所ジョージさんは世田谷一郎、「フライの雑誌」の堀内さんはあさ川二郎って名前でブログやってるんです。みんなやってんじゃねえか、人のこと言うんじゃねえ、って感じですね。

─ (笑) それでは名残惜しいんですが、またぜひお越しください。

島崎 ありがとうございました。

─ 本日は毛鉤職人の島崎憲司郎さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

島崎 失礼しました。


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〈フライの雑誌〉第122号を発行しました!

特集は、〈フライの雑誌〉初の入門編「はじめてのフライフィッシング1」。島崎憲司郎さん + 山田二郎さんの「初公開 ホットワックス・マイナーテクニック」です。

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取り扱い店舗様には2021年6月5日以降に並びます。
※少部数です。ご予約注文をおすすめします。
※Amazonなど各書店・ネット書店でも扱われます。ネット書店経由での発送は6月中旬からになります。

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『黄色いやづ 真柄慎一短編集』
真柄慎一 =著

装画 いましろたかし
解説 荻原魚雷

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