樋口明雄さんの新刊『田舎暮らし毒本』を読んでいて思いだした。
今を時めく古本ライターの荻原魚雷さんと、高円寺のペリカン時代さんで飲んでいて、人間としての生存能力の話題になった。
といっても、大層なものではなく、かんたんな日曜大工にもならないレベルのDIYができるかできないかの話だ。
わたしの場合、釘を打てば指を打ち、針を持てば爪を縫うくらいで、その方面は昔からまったくダメだ。魚雷さんは本人に確かめるまでもなく、おそらくわたしと同等かそれ以上に残念なはずである。
たとえば住まいにトラブルが起きたとき、今はたまたま都内に暮らしているから専門の業者さんに頼める。けれど田舎暮らしをしようと思ったら、そこそこ自分で身の回りのことをできないと困りますよね、そうそう、と一致した。
中年親父二人が背中を丸めてバーのカウンターに並んで座り、生まれてこのかた抱えこんできた不器用のレッテルの、来し方行く末をぼやいていたわけです。
わたしが言った。
「屋根の修理とかとんでもない。ぜったい秒で落ちますね。困っている人がいても、助けてあげられない。ほんと役立たず。」
と言い終えて、あまりにも情けない感じだったので、このように付け加えた。
「雨漏りしている状況で、釣りの本を作れますって言ったって意味ないです。」
そうしたら魚雷さんが言うには、
「おれなんか古本ですよ。」
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