むかし、と言ってもそんなに前じゃない頃、カブラー斉藤さんから届いた原稿に、いくつかの不備があった。というよりも内容に書き手側に理由のある明らかな瑕疵があった。わたしは言った。
「これじゃ載せられないですねえ。」
「……。」
「ちょっと雑駁すぎる物言いだと思うし。」
「……。」
「なんで黙ってんすか。」
「…じゃあ、お前が書いてみろ。」
「は?」
「文句言うなら、お前が書けばいい。」
締め切りを二週間も遅れて、文字数を指定の二倍も書いてきて、しかもこのただ社会への呪詛を並べて放り出したような原稿で、その言い草かい! とわたしは思った。
これとちょっと関係のあることで、むかし、と言ってもそんなに前じゃない頃、某アイドル、×××さんの武道館公演へ行こうかな、行かないでいようかな、と迷っている女子がいた。若かったわたしは、つい余計なことを言った。
「×××のどこがいいのか俺にはわかんない。」
ピクッとして、女子は言った。
「…じゃあ、あんたは武道館満員にできるのか。」
じつは「お前が書いてみろ」のときも「武道館満員にできるのか」のときも、わたしは有効な反駁ができなかった。不意打ちで言われっぱなしで、ずっと心に引っかかったままだった。今思うと、あの時こういう風に言い返したらどうだったろうか。
「畑にキュウリが植わってるとするでしょ。キュウリに、お前はなんでトマトじゃないんだ、って言っても仕方ないじゃん。」
あるいは、
「犬になんでお前は猫じゃないんだって言っても、だってあたしは犬だから、って言うと思うけどな。」
カブラーはともかく女子には絶対に通用しない。事態をさらに悪化させるに決まっている。
そういえば次号の原稿が、カブラー斉藤さんからまだ届かない。
127号が3月解禁に間に合わないのが確定したので、
出るまで、去年の春特集を楽しんでいただければ
幸いです。高評価のいい号です。
第124号 特集◎ 3、4、5月は春祭り 全国の春の釣りとその時使うフライ|ずっと春だったらいいのに!
動画の中で『フライの雑誌』122号が紹介されています。
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