産經新聞ごめんなさい
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「自分は文章がうまい」と意識して書かれている文章は一読で分かる。
たとえ本人がどんな言い訳をしようとも分かる。そしてそれはとても気持ち悪い。驚愕の語彙も意外な比喩も華麗なレトリックも、小鼻がふくらんだ書き手の顔が想像できた時点で完全アウトだ。
最近になって近藤紘一氏の著書を立て続けに読み、その文章の清潔さに感動している。産經新聞の記者だった近藤紘一氏のすごさは、文章がうまいと読み手に意識させないうまさだ。
さらっと書いているようにみえる。しかしその実はおそろしく緻密でしつこい推敲が重ねられた末に、一語一語が書きとめられていったのだろう。ひどい胃潰瘍だったというのにも納得がいく。早世されたのはまったく惜しい。こんな面白い作品をこれまで読んでいなかったこと、彼の新しい文章を読めないことが悔しい。
ブラックバス害魚論が流行っていた頃、産經新聞東京本社の若い記者から、『フライの雑誌』の記事へ電話でくだらない難癖をつけられたことがある。マスコミの権力をかさに着て、こっちを完全になめきった、ごう慢な若者だった。受話器の向こうでそいつの小鼻が膨らんでいるのが見えた。産經のくせに。
それとは別に、わたしは二〇代のおわり頃、ほんのちょっとしたことで警官五人に路上で取り押えられ、サイレンを鳴らしたパトカーで杉並警察署へ連行されたことがある。深夜の午前二時をすぎていた。制服警官に両脇を抱えられたまま、窓のない小部屋へ連れ込まれた。あれを取調室というのでしょうか。
しばらくすると長身やせ形で眼鏡の、麻生太郎のように口元の歪んだ若者が現れた。おそらくは署に派遣されて現場の経験を積んでいるキャリア様だろう。年上の制服警官へえらそうな態度だったのが、部外者のわたしにもとても不快だった。一通り説明を受けた若者は、取調室の反対側で仁王立ちになるなり、
「おい、堀内!」
と、いきなりわたしのことを呼び捨てにしてきた。
初対面なのになんて失礼なやつだろう。おまえとは絶対に口きいてやらないからな。そう心に決めて反抗的な態度をとっていたら、そのまま明け方まで帰らせてもらえなかった。
思い出して腹が立ってきたぞ。
なぜそんなことを思い出したかというと、そのときのキャリア若者の声のトーンと「おたくの雑誌は反社会的ですね!」と電話の向こうで指弾してきた産經の若者のトーンが、まるでいっしょだったのだ。
みがいた鉄板をむりに鉄筆で引っ掻くようなキィキィ音だ。小心の裏返しである。こういう男が戦争が起きたら真っ先に占領先の婦女子を強姦するんだろう。ニヤニヤ笑いながら。弱いくせに。
話がそれた。そんなわけで、産経は頭が悪い新聞だとの偏見があったが、近藤紘一氏を読んで人それぞれだと認識を改めたということです。
産経新聞ごめんなさい。
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(『葛西善蔵と釣りがしたい』より)
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