アユなど川魚の遡上そじょうを助け、河川の生態系を復活させるため、西日本工業大(苅田町)が開発した塩化ビニール管の「パイプ魚道」が、築上町の城井きい川で効果を上げている。一般的なコンクリート製の魚道に比べて費用が安く、設置も簡単という。西工大は「この技術を広く活用してほしい」と呼びかけている。
パイプ魚道は、西工大客員研究員の太田有生夫ゆきおさん(55)が2006年、国際協力機構(JICA)からの派遣でインドネシア・スマトラ島で活動していた際、現地の市民でも設置できる安価な手法として発案。塩ビ管を組み合わせ、堰せきで仕切られた川の水中をつなぎ、魚を遡上させる仕組みだ。
塩ビ管の内部に、魚が通りやすくするための流速制御装置を付けており、太田さんらを発明者として「北九州産業学術推進機構」が昨年4月に特許を取得した。営利目的でない市民団体や研究者がパイプ魚道を設置する場合、同機構が許可すれば特許使用料は求めず、技術も提供するという。…
部品はすべて既製品を使用しており、費用は約3万円。パイプが水面より高いところを通っていても圧力差で下に水が流れる「サイホンの原理」を利用した構造だ。このままでは流速が毎秒約6メートルと速いため魚が上れないが、流速制御装置として内部に複数のロート状の器具を付けることで、毎秒0・3メートルまでに水流を弱めている。
昨年9月に城井川で調査したところ、堰の上流でオイカワなど約100匹が遡上しているのを確認したという。
(読売|2015年05月22日)
河川に生息する魚には、成長に伴って河川の上流と下流を行き来し、生活領域を移すものが多く存在する。そして、これらの魚は、河川の途中に堰があると、堰によって設けられた高低差により、上流への移動ができなくなり、繁殖等に影響を受ける場合があり、堰が配置された場所には、魚が遡行できるように、人工的に魚道を設けることがある。 人工的な魚道には、例えば、開口部を有する仕切り板で仕切って、流れの緩やかなプール領域を階段状に連ねて設けたプールタイプや、傾斜水路の底部にいくつもの突起等を設けて流れの速い領域及び遅い領域をモザイク状に分布させ、魚の遡上可能な経路を設けるストリームタイプがある。
しかし、プールタイプ及びストリームタイプは、魚道の上流側出口(入水口)と下流側入口(出水口)の位置を決定する際に、河川水位の変動を考慮する必要があり、特に、上流側出口については、水位の低下によって、魚道に水が流れなくなり、魚道が機能しなくなるのを回避しなければならないため、上流側出口の形状及び設置位置の決定には、入念な検討を要する。 また、上流側出口の形状及び設置位置が適切であったとしても、河川の水位変動により、魚道を流れる水の速度変化を避けることはできず、渇水時と増水時の両方で、魚が遡行可能な安定した経路を確保する魚道の設計は困難である。 そこで、上流側出口と下流側入口とを堰の上流側及び下流側の水中にそれぞれ浸漬し、河川の水位変動によって、流速に影響を受けないサイフォンの原理を用いた魚道が提案されている
(astamuse|特許5526404号)