『フライの雑誌』第94号「編集後記」

●先日、週刊誌の記者さんから、森や川の放射能汚染について、「釣りへ行くときに釣り人が気をつけることはありますか」と聞かれた。「どうにも気をつけようがありません」と答えた。今号52頁からの「日本釣り場論」にあるように、いま日本で暮らしている釣り人は、原発がまき散らしている放射能と多かれ少なかれ、向き合わざるを得ない。

●釣り人にとって釣りは人生そのものだ。だからどこに行ってどんな思いで釣りをするかは、釣り人それぞれの哲学による。こころの中はそれぞれが決めていくことだ。私の場合は、自分が行きたい釣り場にはこれまでと同じように行く。だって釣りしたくていろいろがんばっているわけだから。

●ちいさな沼がある。リリーパッドになっていてバスがいる。通い始めて3年目、今年は情報がバレてきびしくなった。でもしつこく通っている。あさ川のヤマベ釣りも奥が深いし、身近な釣りもいそがしい。しかも今年は山梨の県内共通遊漁券を買ってあるので、これから年末へ向けて釣りまくるつもり。

●どんな世の中でも釣りをしてれば楽しくすごせます。

東京電力福島第一原発がまき散らした放射能汚染の実態は、最悪の想像をこえる。いくら隠そうとしても、数字として次々に明らかになってきた。

除染すれば大丈夫とか、風評被害だとかを口にする人を信用しないこと。といって日本にいるかぎり放射能からは逃げられない。

人によって放射能への感受性が違うとのことなので、自分と自分の大事な人が、逆宝くじに当たらないことを祈るばかり。宗教にでも入ろうかと思う人増えるだろうな。

あとは、釣りでもするしかない。釣り人でよかった。(堀内)

『フライの雑誌』第94号〈特集1◎あなたのフライボックスはなんですか/特集2◎〝放射能汚染時代〟の魚の選び方 水口憲哉〉