小社編集人・堀内が寄稿させていただいた『Backcasts: A Global History of Fly Fishing and Conservation』(シカゴ大学出版局刊)について、Amazonでの発売日が7.11に決まったとのことです。
シカゴ大学出版局の用意したレビュー(オススメ)記事を見ると、Todd E. A. Larson博士(Xavier大学教授)のお名前がありました。
Toddさんは、本誌読者ならご存じの通り、『フライの雑誌』へ「Radical Bamboo Rod Builders ラジカル・バンブーロッド・ビルダーズ」と、「グラスロッドの巨匠たち Masters of Glass」(共に永野竜樹さん訳)を寄稿してくださった、アメリカのウルトラ・マニアックなフライフィッシャーです。
Toddさんが代表を務めるThe Whitefish Pressとフライの雑誌社とは、単行本企画『バンブーロッド教書 Understanding & Fishing the Bamboo Fly Rod[The Cracker Barrel]』での、よきパートナーでもあります。
『Backcasts』は、〈世界各国のフライフィッシング愛好者たちが河川の環境保全に果たした役割を、地域ごとの歴史軸でまとめる〉という一風変わったテーマの書籍です。南アフリカ、ニュージーランド、日本、ヨーロッパ、米国とグローバルな寄稿者が集まりました。
『Backcasts』のレビュー記事を書いているよ、とToddさんからは聞いていなかったので、びっくりしています。
英文なんであんまり分からないですけど、Toddさんはおそらく、
「環境保全のために働いてきた世界各国のフライフィッシャーたちのエッセイと論文をまとめた一冊だよ。釣りと環境保全の歴史がしっかりまとめてあるよ。この本買うと学生さんの奨学金の助けになるよ。編集者も著者もよくがんばったね。」
というようなことを書いてくださっているのだと思います。
堀内の書いたエッセイは、「A History of Angling, Fisheries Management, and Conservation in Japan」というタイトルです。
まず日本の渓流の様子とそこに棲む愛すべきトラウトたちを紹介します。
そして釣り人と環境保全との関連で、昭和初期の職漁師時代から始まって奥只見の魚を守る会、長良川河口堰反対運動、トラウト・フォーラム、生物多様性とブラックバス問題、水産庁連続勉強会、渓流魚の新しい増殖法、福島原発事故を、時間軸に沿って概観します。最後には今後の日本のマス釣りのありようを予測し、こんなになったらいいねと、提案しています。
この本を手にとってくださる世界各地域の釣り人が、アジアの島国の事情をどのように捉えてくれるのか不安ですが、できるだけ客観的事実に基づいた記録を残しました。さらにそれだけじゃアレなんで、こういう本にはちょっと不釣合いのようでしたが、個人的な意見もエビデンスを押えつつ、きっちり盛り込みました。編集者のサムさんとは、かなりやり合ったように思います。
出版に至るまでの経緯はこちらをご覧ください。
北海道大学の白岩孝行さんには、すばらしい翻訳をしていただきました。白岩さんは、学術系の仕事が未経験のわたしと、その筋の専門家のサムさんとの間に立って、適確に調整してくださいました。
じつは、生物多様性と釣りに関して堀内とサムさんの立場が根本的に食い違っているのではないかという疑惑が後から判明するという、わりとデンジャラスな状況でしたが、白岩さんの冷静なご指導のおかげで、本にまとめることができました。
お世話になりっぱなしの白岩さんに、あらためて感謝申し上げます。
『Backcasts: A Global History of Fly Fishing and Conservation』へご興味を持たれた方はぜひお手にとってみてください。