ゴルジュの底で蛇フライ

片方の主張について正当だよねと思っていたら、あまりにもヤバ系になってきた。外野なわたしは雑誌だけ買って見守ることにする。編集者って苦労多くしてあんまりいいことないな。

いま問題になっている連載を、柳さんが『創』へ開始したときの自分の感想が残してあった。2007年のメモだ。敬称あったりなかったりだが原文まま。

8月号の『創』を買い、仙川ドトールで読む。柳美里の新連載が始まっていた。どうということのない身辺雑記なのに、この人が書くと妙にこわい。顔もこわいが文体はもっとこわい。ダイヤの刃が仕込んである笹の葉のようである。うかつに握るとシャッと皮膚を裂く。やってしまったが最後、なかなか治癒しない。

毎日新聞でコラム連載していたCoccoの文体のこわさと近い。もっともCoccoが書くものの下地にはたしかな体温があった(私はあれを読んで泣いたこともある)。柳さんのは-20℃くらいだ。Coccoが沖縄で海フライをやったら最高に似合いそうだが、柳美里がフライフィッシングに興じる姿は想像しただけでやばい。昼なお暗いゴルジュの底で、蛇フライを操っている柳美里と出くわしたと考えてごらん。

ただ、柳さんはタイイングは上手いと思う。ものすごく独創的なフライを巻きそうだ。やはり蛇かな。

> 2007年 8月 3日

7年後の現在の情況を照らして、わたしにしては、そこそこ勘どころを突いた感想だった気がする。