今から10年前、『フライの雑誌』第68号(2005年2月20日発行)掲載の記事。
日本釣り場論 フライ業界、もっと明るく楽しくなりませんか?
座談会 牧浩之 × 神原秀 × 杉浦雄三
閉鎖的ムラ社会の薫り高い(?)フライフィッシング業界にも、若く新しい風が吹き始めています。巷の釣り雑誌を見て一度でも「また今号も同じ人が出てるじゃん」と思ったことがある方は、この企画に賛同していただけるのではないでしょうか。明るく楽しい釣り人人生を歩む上で、釣り業界にも健全でいてもらわなくては実際困るのです。…
(33P)
–牧さんはニュージーランドへ留学していたそうですが、なぜNZなんですか。
牧 音楽で一旗あげたかった。NZなら釣りもできるし一石二鳥だ、という理由でした。
–音楽のジャンルは。
牧 ヘビメタです。歌じゃなくてギター弾きまくり。
神原 ぼくもメタル好きです。話が合いますねえ。
牧 NZで仲間を集めてバンドを組んだんだけど、羊がいるところではヘビメタできないです。カントリーになっちゃう。バンドのメンバーにヘビメタは体に悪い、脳の細胞が死ぬって言われました。
神原 メタルは受ける国と受けない国がありますよね。基本的に陽気な国はだめじゃないですか。メタルのカテゴリーでも例えばネオクラシックとか・・・(しばらくメタル談義が続く)
–NZでは結局ヘビメタバンドはできなかったと。
牧 ガイド業で永住したかったけどビザがおりないんで・・・
このときは、この座談会の収録のためだけに、当時住んでいた川崎から岐阜県の管理釣り場まで、牧さんを引っ張り出した。二人でいっしょに「こだま」で並んで座って行った。どんな会話をしたのかおぼえていない。牧さんはヘビメタ野郎らしく(?)、ハットにロングコートという出で立ちだった。
釣り場に着くと、牧さんはその姿のまま、釣り場の桟橋でゴロリと寝転んでしまった(しゃがみこんでいる写真が誌面に載っている)。ほとんどフライロッドを振らなかった。きっとなにかが気にいらなかったのだろう。
せっかくわたしが釣り券買ったのに。
10年後、牧さんがまさか宮崎県で「職業猟師+毛鉤釣り職人」をやっていて、その汗と涙の暮らしぶりを底抜けに明るく楽しい書いた本を出すことになるとは、もちろんわたしはまったく想像もしていなかった。本人がいちばん信じられないだろうけど。
ただ、いまこうして読み返してみると、10年前から牧浩之氏は牧浩之氏である。