朝日新聞の昨日夕刊初掲の「魚のセシウムなぜ下がらない? 国、汚染源や経路調査へ」の記事には崩れおちそうになった。
後半の〝1年で一生を終えるアユは今春以降は劇的に汚染が低くなった〟、〝魚は世代が代われば汚染度が低下する仮説〟云々の記述は、明らかに事実と反している。水口憲哉氏の『淡水魚の放射能』を読んでいないか、孫引きの誤読か。そういえばこれと似た表現の『淡水魚の放射能』からの誤った引用記事が、ネットのどこかに転がっていた。あれか。残念無念。
あるいは、事実を故意に無視して政府の安全宣言の旗振りをしているか、記者の個人的願望かのいずれかかもしれない。魚の世代がかわれば放射能が減るなら、本当にうれしい。でもチェルノブイリ原発事故での哀しい先例が『淡水魚の放射能』にはいくつも載っているじゃないですかと、この科学部記者さんが寝ぼけている耳元でささやいてあげたい。
朝日新聞は「プロメテウスの罠」や連載「原発とメディア」など、すばらしい記事を多く手がけている。対してこちらは、大本営発表の垂れ流し記事。いろいろなレベルの記者さんがいるようだ。
魚は腐ったところから腐る。この記事の掲載を許可したデスクの力量の問題でもある。
厚労省発表データを元にした「淡水魚の放射能汚染まとめ」から「アユ」を文字検索してみてほしい。「伊達市 阿武隈川(阿武隈川水系) アユ 280ベクレル/kg 9/19」はじめ、今年になってからも東日本のアユは汚染されたままだ。むしろ1年で一生を終えるアユが、なぜ今年になっても放射能で汚染されているのか、その理由を追求するのが朝日新聞科学部の仕事ではないのか。